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革命前夜

随分と開いてしまったけど、ブックレビューを再開

コロナ禍の間、随分読んだ中でこれは最近読んだものだけど面白かったので。

蜂蜜と遠雷を読んだ後、また、音楽物が読みたくて手に取った。

バブル真っ只中の東京から、わざわざ共産国家、東ドイツにバッハに憧れ

ピアノ留学した青年の話。

自分だけの音を模索しスランプに陥りながら東西統合前のドイツで個性豊かな仲間

と出会い、混乱に巻き込まれながらピアニストとしても、人としても成長して行く

様を描いている。

よく取材されて書かれていて共産国家末期の抑圧された社会や雰囲気がそこにいる

かの様に、うまく描写されていて圧巻でした。

石の町、煤で汚れた灰色の建物、品物がない商店、信用ができない人々、今では

ファンタジー小説の様に感じる設定だけど大昔じゃなく割と最近まで実際にあった

世界なんだなー。

ベルリンの壁が壊れた時、テレビニュースで大人達が興奮して喋っているのを覚えている、

壁の東西で分かれた恋人との再会とか、西に逃げようとして壁の途中で撃たれた若

者とかずっとテレビで特集してたっけ。

第二次大戦後の日本だと焼け野原だけどドイツだと焼けた瓦礫の中を何とか

生きてきた先代たちと出会い、西側では失われた、熱や温かさを感じながらも

西側に自由を求める若者達と親しくなるほど自分の音を見失う主人公。

作中では細かな当時の日常なんかも描かれていて面白い。

東側のテレビはプロパガンダ放送ばかりで、みんなウンザリして見ていたようだけ

ど多くの地域では西側の放送を受信できてたようで若者は隠れてヘビメタを聴いて

いたり、西側の情報を見て国内情勢を読んでいたそう。

西側の放送が入らない地域の事は無知の谷と呼んでいたそうだ。

逆に今や西側のメディアはより強力になり狡猾になった。

テレビ、新聞、雑誌、インターネット、コマーシャル、街を歩くだけで情報過多だ。

たまに、得た情報をつなぎ合わすと同じ方向を向いてたりしてヒヤッとする事もあ

れば、探している商品の検索をかける前に、画面に商品広告が出たりすることに

便利ではあるけど不自由を感じたりする。

ちょうど読んでいる間、アメリカ大統領選の最中で感慨深いなーと。

世界はグローバル的な社会主義に進むのか、それとも自国主義的な競争社会に

帰るのか?

まだ大統領は決まってないけど世界は益々グローバル化して行きそうな気配

テクノロジーによって、より自由になれるのか? 不自由になるのか?

音楽をベースにしたあっさり塩味と思いきや、恋、歴史、ミステリー、音楽と結構

お腹いっぱいガッツリ系な小説でした。

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