スクリーンリーダー

 見えない・見えづらい方が、パソコンやスマホを利用する際に、画面の情報を音声で読み上げるシステムを利用します。これをスクリーンリーダーと言います。
 OSにより標準で搭載されているスクリーンリーダーを使う場合と、OSメーカー以外の団体が作成したアプリケーションを使う場合があります。今回は、それらを解説します。


スクリーンリーダーとは

 画面上で選択された部品(オブジェクト)の情報を音声で読み上げるシステムのことをスクリーンリーダーと言います。主に視覚障がい者向けのユーザー支援機能です。
 実際にどのように読み上げるかは、ナレーターの項目のデモで確認してください。

Windowsのスクリーンリーダー

 仕事や趣味で使うパソコンOSと言えばWindowsです。MacやChromeBookも増えていますが、いまだにパソコンと言えばWindowsという風潮は衰えていません。まずはWindows用のスクリーンリーダーについて解説していきます。

ナレーター

 前回の解説の中も少し触れましたが、Windowsに標準で搭載されているスクリーンリーダーが「ナレーター」です。
 他のスクリーンリーダーに比べると機能的には落ちますが。OS標準機能なので追加のアプリケーションを組み込む必要もなく、簡単なショートカットキーでオンオフできることが利点です。
 職場でパソコンで使っていて、「画面が見えづらくなったことで仕事が続けられない」ことを防ぐためには、職場と話し合いスクリーンリーダーの導入を検討してもらう必要があります。しかし指定されたアプリケーション以外の組込みが許可されない等の理由で、スクリーンリーダーを導入できない場合には、Windowsの標準機能のナレーターを使うことができます。
 完成されたスクリーンリーダーはないと言われています。スクリーンリーダーが1種類だけでは、どうしても確認できない部分が出てきていしまうので、サブのスクリーンリーダーとしてナレーターを活用するのも1つの方法です。
 以下はYouTubeに投降したナレーターのデモンストレーションです。

 ナレーターの起動と終了は、前回のPC設定でもできますが、ショートカットでも行えます。
  Ctrl + Win + Enter
 起動も終了も同じショートカットです。起動のたびにナレーターウィンドウが表示されますが、次回から表示しないにチェックを入れると表示されなくなります。

PC-Talker Neo

 PC-Talkerは、国内で最も利用されているスクリーンリーダーです。しかし、仕事で利用するには使いづらい面があります。それはPC-Talkerが、開発会社である高知システム開発のKSDアプリケーションシリーズを使うために作られているからです。
 KSDシリーズには、メーラー、ブラウザ、点字録音テキスト図書閲覧、OCR、ニュース閲覧、ネット辞書検索、宛名書き、ルート検索などのアプリケーションがそろっており、日常のパソコン利用に十分な機能を提供してくれます。日常生活用具給付の対象にもなっており、手帳等級1~2級であれば10万円までの購入に給付を受けることができます。

https://www.aok-net.com/

 PC-Talkerが好まれる理由は、とても簡単な操作でKSDシリーズを利用できるからです。パソコンを全く使ったことがない80代の女性が、使い方を憶えて、日常的にメールや録音図書の利用をされている例があります。また、搭載されている音声合成システムに、ReadSpeakerを使用していることころです。テキストや点字を読み上げる音声がとてもなめらかです。
 このような理由からPC-Talkerは、個人での利用に適していると言えます。

JAWS(Job Access With Speech)

 米国で開発されたスクリーンリーダーで、日本語版を視覚障がい者向けの福祉機器を販売しているエクストラが開発販売しています。PC-Talkerとは異なり、Windwsアプリケーションの操作を目的としたスクリーンリーダーですので、業務で使用するアプリケーションには向いていると思われます。
 残念ながら、私自身は使用したことがありません。日常生活用具給付の対象でもあるようですが、価格が非常に高価で個人では手が出しにくいのが難点です。
 以下は、エクストラのJAWSのページです。

https://www.extra.co.jp/jaws/

NVDA(NonVisual Desktop Access)

 NVDAは、オーストラリアの非営利法人 NV Access を中心とするコミュニティが開発を行っているスクリーンリーダーで、無料で利用することができます。日本語版はNVDA日本語チームが日本語対応を行って提供されています。無料ではありますが、年4回のアップデートの際には、寄付を募るメッセージが表示されます。以下は、NVDAのダウンロードページです。

https://www.nvda.jp/

 PC-Talkerとは異なり、高音質な音声合成システムは搭載されておらず、Windows標準の音声合成システムを使うか、WindowsのSAPI(Speech Application Interface サピと読みます)に対応した音声合成システムを購入して使いしかありません。私は、MicrosoftのHarukaを使っています。以下は、NVDA用のKCトーカーというPC-Talkerと同じ音声合成システムの販売ページです。

https://www.knowlec.com/?page_id=2700

 NVDAはJAWSと同じく、Windowsアプリケーションを操作するために開発されているスクリーンリーダーです。専用のアプリケーションを必要とせず、無料でありながら業務用アプリケーションの利用にも十分使えます。

iPhoneのスクリーンリーダー

 iOSはiPhoneとiPadのOSですが、iOS用のスクリーンリーダーはAppleの提供するVoiceOverしかありません。VoiceOverを使うと操作方法が見て使うやり方と完全に変わってしまいます。
 通常はスワイプ(画面をタッチしたまま動かす)操作だけでなく、フリック(画面上でタッチのように指を止めずに、振り抜く)でカーソルを操作し、ダブルタップ(素早く2回タップする)で実行します。画面の状態や選択されている項目は音声読み上げから判断し、操作していきます。
 画面がある程度見えていれば、画面や文字の拡大、色の反転などを使ってiPhoneを利用することもできます。選択したところだけ読み上げさせる、読み上げコンテンツという機能もあります。
 以下はAppleのユーザーガイドのVoiceOverページです。

https://support.apple.com/ja-jp/guide/iphone/iph732dc028d/ios

 カメラに映る文字の認識、写真の説明、紙幣の判別、録音図書のダウンロードと再生などの視覚障がい者向けのアプリも多数あります。

Androidのスクリーンリーダー

 iPhoneと同様にAndroidにもTalkBackというスクリーンリーダーがあります。以前は最初から含まれていましたが、最近のバージョンではストアからダウンロードする必要があります。
 基本的にiPhoneと同じでフリックして選択しダブルタップで実行する操作体系になりますが、ホーム画面に戻る操作などは異なります。
 iPhoneに比べ機種代金が安いのが魅力ですが、視覚障がい者向けのアプリが少なく、利用者が少ないので使い方を人に聞くことが難しいのが難点です。

 次回は、Windowsパソコンでスクリーンリーダを使う際に、必要となるキーボード配列について解説します。

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