映画 ミッドナイトスワン感想(1)

■RAKUTEN配信の書き起こしです。

https://live.rakuten.co.jp/webview/stream/lovetonylovejp/10138026

■めっちゃネタバレあり。
まだ観てない人は要注意!!

■漫画、テレプシコーラのネタバレも致命的なこと話してるので、
それも含めて読んでない人も要注意!

ミッドナイトスワン感想(1)

映画ミッドナイトスワンをちょっと見ていただきたいなと思って。

お話的には結構なんか今予告編とか出てるし(2020年10月時点)、
母親ものみたいな感じで、故郷を離れて新宿のショーパブのステージに
立ってひたむきに生きるトランスジェンダー凪沙さん 

草彅剛がその役をやってるんだけども
ある日養育費を目当てに、育児放棄に会っていた少女一果を預かることにした。
一果を預かってくれるんだったら一果っていうのはいとこの子供なんだけどあんたにお金あげるからって言われた。
ちょっとお金が欲しかった、トランスジェンダーだから
その身体をメンテナンスとかをこうし続けるためにもお金が必要だったということで一果を預かった。
凪沙と一果、この二人が出会った時に、凪の中に母性が生まれていくっていう話なんですけども


そこにこの一果ちゃんがその東京に来て、ダンス、バレエ教室に出会ってそこでそのバレエの才能を開花させるっていうところがあるんですけれどもね。


見所たくさんですけどまぁ内田英治監督っていうのは Netflix 全裸監督を撮った監督さんですよね。
その人が満を持して撮ったんですけども、内田英治監督はすんげーものを作ったなーという感じです。
Netflix だからねみんな観れているかどうか分かんないんだけども、あの人は、底辺の人たちのエグさとか心理を描かせると非常にうまいんですよ。
その内田英治監督が、またここで、オリジナル脚本で、やったなっていう感じなんですけど。


あーもうどんなサイトみてもミッドナイトスワンというのは面白いんだろうなと。どんなサイトみても、星5つのところ、4.2とかだし。

草彅剛が、オールアバウトマイマザーやってる

その中で、私の解釈的に見所っつーのをちょっとお伝えしたいんですけれども。
これを見て、あっと思ったのは、

草彅剛が、オールアバウトマイマザーやってる

っていうね。

皆さんがご存知かどうかはわかんないですけど、

ペドロ・アルモドバルの撮った映画で、トランスジェンダーが出てくる映画。
明言はどこにもされてないですけど、やりたかったことはオールアバウトマイマザーの世界だったんじゃないかなと思うんですよね。 あの、露悪的にトランスジェンダー見せる中に、暖かみを混ぜたかったと思うんですけども。 なんかもう草彅剛が凄すぎてオールアバウトマイマザーはすごい映画だっただけど(向こうを)張ってるよ!

ここで言いたいことはですね、凪沙さんのちょっとねこういう感じ
(写真を見せる)がね、

この感じっていうのは多分内田監督と自分の見てきた作品、すごい自分とあってると思うんですけど、これってジョン・カサヴェテスのグロリアも入ってると思うわけですよ。

グロリアやってるジーナ・ローランズってジョン・カサヴェテスの奥さんだけど、それっぽくしたかったんだろうなっていうのと。


あとこれは明言されてなかったけど、オールアバウトマイマザーで主人公の娘かな?その娘の元夫がトランスジェンダーになってたんですね。
娘役がペネロペ・クルスで。
で、この人ももう先が短いトランスジェンダーで、別に誰かを愛してるとかじゃなくて、あの、女になった方がお金稼げるからって言うので貧乏の中で性転換したんだけど、やっぱり手術がうまくいってなくて死んでいくっていう。
やったんですけど、このロラ、ロラっぽいわと思いました。
貧乏とトランスジェンダーの悲しみの中で心温まるところっていうところがね。
絶対これ入ってるみたいなんじゃないかなと思います、要素が。

テレプシコーラ

まずは、ペドロ・アルモドバルがやりたかったんだろうなと。
それともう一つやりたかったことがあるんだろうなっていうのは、
これは気づいた人がいっぱいいるみたいですね。
私も見ながらずっと思ってましたけど、はい。

テレプシコーラ

テレプシコーラは、山岸涼子さんのバレエ漫画なんですよ。
ものすごいヒットのベストセラーなんですけど
なのにこれなかなかですね、あの表に出ないと。
なぜなかなか表に出ないのかって言いますと、この作品、あの、幼児ポルノを扱っております。
テレプシコーラは主人公の六花ちゃんと千花ちゃんとがいて、
六花ちゃんは、あのコレオグラファー、振り付けとかの方の才能がすごくあるんだけど、
お姉ちゃんの千花ちゃんは、
(踊りで)とても将来を有望視されたんだけど、足故障しちゃって、
手術に失敗しちゃったって言う人で。
で、も一人空美ちゃんっていう人がいて。
空美ちゃんはおばあちゃんの時代までは有名なバレエ教室をやっていたんだけど、
そこが没落しちゃって、だけどおばあちゃんとかはもうそういう贅沢な生活が変えられないから、生活保護打ち切られて、
もうどうしようもないから空美ちゃんのお父さんとお母さんは、
空美ちゃんに幼児ポルノの写真を撮らせてそれで生活費を稼いでるって言う、
すさまじい。
ただ、空美ちゃん、そういうあのおばあちゃんがバレエの大御所だったから、
あのとにかくバレエはうまい、と。
とにかくバレエは天性のものを持っている、と。
で、これだから、主人公の名前も似てるんじゃんね。
一果ちゃんとあの六花ちゃんと千花ちゃんは
千花ちゃんは、(映画ではね)凛ちゃんていう 複雑なね、
演じた上野鈴花ちゃんはものすごく演技が上手い子だけども、
あの金持ちの家に生まれたけど、なかなかこう空虚感を抱えたみたいな感じの子なんだけども、その子はバレエだけを愛してて、バレエ大好きだったのに、足壊しちゃって
最後にこれネタバレになっちゃいますけど、ビルから飛び降りちゃう。
それってもう、あのテレプシコーラの主人公の千花ちゃんと一緒なんですよ。
千花ちゃんも結局自殺しちゃうんですけど、その自殺の仕方とかも、すごい似てる。
今見たら、内田英治監督はテレプシコーラの影響は受けてるって言うことは、
明言してたんで、
で、こういう子いろんな要素が入っている中で、

草彅剛ですよ

草彅剛

良くぞそこまで行っちゃったっていうことですね。

映画のキホンのキをやった。

はい、あのキホンのキをやったってことですね。
これはちょっと解説が必要なんですけども、
日本にサッチモ、ルイアームストロングが来た時に、美空ひばりに会えなかったんですね。で、会えなかったサッチモが美空ひばりに手紙を書いたんですね。
その手紙の内容なんですけど、
「美空ひばりさん、あなたも貧しい環境の中で歌って来たそうですね。戦後の焼け野原の上で」
「僕も黒人として生まれて、スラムで、貧しいところで歌ってきた人間だ」と。
「だけども僕はいつも思うんだけども、音楽って言うのはそんなところ、そんな場所でしか、育たないものですよね。」
と言うメッセージを書いたんですけども。
それが、真髄だなと。それしかないなって。

この作品はもう、光と影を描く作品ですよ。
最後に一果ちゃんは、バレエのスカラシップをとって外国に行くんだけども、
凪沙さんは、トランスジェンダー(手術が原因となった)病で死んでいくっていう。
この、光と闇なんですね。


それとあとライバルだった凛ちゃんも(自殺していく)
そういう闇の中から出た光っていう、


この構造を描く時に、闇の部分を照らすのが、やっぱり映画なんですよね。
日常生活ではね、もう本当にそんな暗いところは見ないし、
でこれ(この映画)賛否両論分かれてるんですけど、
この映画の最後ね、もう手術がうまくいかなくて、酷い状態で草彅剛が寝てるってう。
酷い状態っていうのは映画で観て頂きたいんですけれども、
でもその時の草彅剛が、とても、とても、立派。立派としか言いようがない。


そんなんねもう、股の間から血を流しながら、瀕死で、その姿で、
久しぶりに一果に会う時に、
ごめんなさい、なんかサボってたら、こんなになっちゃって、おかしいでしょ
みたいな感じでいるわけですよ。
助けてよ、じゃ無くて。
なんかサボってたら、こんなんなっちゃったのよっていう、
そういうプライドを見せる。
一番この底辺のところでプライドを見せるって言う演技が、もう!


今日、仕事終わった後でも、観に行って下さい。

(2021年1月まだ全国で上映されてます。)

もう、どれくらいの事を草彅剛がやり遂げたかという話をしてるんですけども。
もうその闇に落ちる方ですよね。
光は自分が預かった女の子なんだから。
闇に落ちる方なんだけど、その堕ちながら本当、ミッドナイトスワンなんですよ。
スワンソングですよ。
その最後の瀕死のところですごく美しく輝くっていうことを、草彅剛はやってるですよ。


見た目はもう、オムツとかしてるんですよ、最後。
本当にそういうところなんだけど、人間の最後のプライドと、この人にこう一果にすべて与えて死んでいくっていう、その美しさが、もう、本当に。

映画ってこういうことを人に見せるために作られてるよねっていうですね、
あの映画のキホンのキをやり遂げやがったんです。
絶対絶対見てください。
映画の基本に立ち返るような作品でしたよ。
もう話しながらウルウルして来ちゃう位ですね。

キホンのキって言ってるのは他に(どんな作品があるかっていうと)「そしてひと粒のひかり」とか、あるんですけれども。
ブラジル(間違い。コロンビア)で、その女の子が生きていくために、
麻薬を口から飲み込んで(密輸しようとしているんだけど)
それを逃がしてくれるのが、ギャング?もう本当悪い、人殺しまくってるギャンングのうちの一人の男の子が、この子は助けなきゃ、と思って助けるんですけども。

本当に麻薬運び人なんか、絶対応援なんかしないけども、
でも、応援しちゃうんですよね。映画ですよね。
で、男の子は結局裏切ったから、ギャングに虐殺されちゃうんですけど、
女の子を逃して、これからリンチされていく男の子の後ろ姿が、ものすごい美しい訳じゃないですか。

そういうものを見せちゃった。すごいね。
これはでもやっぱり、草彅剛がトランスジェンダーでやってなかったら、
ここの強さ、美しさ、は出なかったところかと思います。


これもう(凄さが)どれくらいかって言うと、砂の器って知ってますかね。
松本清張の。
砂の器でその息子のために犠牲になっていくお父さん役(加藤嘉)
あの人も凄かったんですけど
後、赤線地帯、あの溝口健二の映画なんですけど、これ1番思い出しましたね。
あの、母性という意味では。
で、この赤線地帯のゆめこさんっていうのは三益愛子さん。
草彅剛は赤線地帯の三益愛子やりましたってことですね、はい。
あの息子を大学にやって、その代わりに身を沈めたわけですよ、赤線地帯に。
そうですね溝口健二の赤線地帯、京マチ子と若尾文子がすごいんですけど。
その三益愛子が息子に会いに行こうとすると、そんな汚らわしい仕事してる母親とは会えないって言われて、最後は狂っちゃうって訳なんですけど、はい。(続く)

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