ダークスレイヤーの帰還を少し読んだよという話


ざっくりとした感想

 ざっくりとした印象を表すと、「美少女がたくさん出てくる、ダークファンタジー志したRPGの初見プレイの記録を小説としてまとめたような作品」

ストーリー

 小説家になろうでよく見るようなストーリーライン。いうほど面白いわけでもつまらないわけでもない感じ。
 主人公は異世界から流れてきた存在というのもよくみるし、序盤から美少女が沢山出てきて、すぐに主人公に好意を寄せているのもよくみる。
 さらに、そいつらが主人公に数多の美少女に好意寄せられるけど主人公それをあまり受け取りたがらないってのも、例えば『盾の勇者の成り上がり』とかで見る構造。

 普通、行動の主導権がこっちにない媒体で、課題を何個もスタックさせないと思う。一部のゲーム(ウィッチャー3や原神など)なら課題を何個もスタックさせても、課題の名前とか条件確認する方法があるので問題にはならないけれども、それがなければどれが何のフラグなのかわかりづらくなる。

 ここら辺はフラグ管理の説明があまり無いダークソウルやSEKIROなどの影響っぽい?

 ダークソウル等のフロムソフトウェアの作品はOPで舞台の成り立ちとやるべきことの指針をある程度掲示してくれるけれど、この作品はど初っ端にリリンに関する説明を提示しただけで、舞台についての情報は全くなかったような。

 神が実在していてもおかしくないいる世界観の割に、種族のルーツにまつわる神格に由来する教義を迷信だと貶し、種族自体を、ましてや国防の要になる人々、人種を特徴をあげつらう形で罵倒するのは問題なんでは。
 現実でも自衛隊に対するえげつない批判あるよねと言われたらまあ嫌なリアリティがあるなと思うけど、主人公がそれに乗っかるのは共感生まないんじゃ無い?
 もっといえば、結構続いていたであろうその慣習を、ぽっと出の男にボコボコにされただけで、あっさりと辞めることを約束してしまうのはどうなの?
 その程度でやめてしまう伝統なら、多民族国家に組み込まれた時点で辞めてると思うけど。
 2020年当時でもイスラム教のハラールとかが話題になってたと思うけど、そういったものに従う人をボコボコにして、慣習を辞めさせて良いもんなん?とは思った。

世界観

 古めな作品から今の作品、それぞれでよく見る設定の合成物みたいな世界観。
 独自の世界観を謳う割には、そこまで独自性がないようにみえる。例えば、夢魔、魔族、ドラゴン、オークにエルフとファンタジー頻出の種族が目立つ点とか。

 子供を攫って食べる怪物と不貞の言い訳みたいな悪魔を夢魔で括るのも、西洋竜が独自言語使うのもありきたりではある。
 巨乳等の形質を持つ愛玩用エルフの設定は新鮮味があるけど、それ自体貧乳のエルフという人口に膾炙したイメージにフリーライドしたものなので微妙。そもそも大元の種族を一切説明せずに、亜種の話をしてるのもおかしいと思う、本格派を歌うならちゃんと大元の種から説明すべきでは?
 渡来人の鬼とドワーフを組み合わせたような種族は新鮮みはある。ほかは他でよく見るドワーフの設定だけど。
 不浄な種族という設定がなされることの多いオークを戒律的に風呂入らないから不浄とするのはまあまあ新鮮、設定開示されてすぐに辞めさせられるけど。そもそも、オークが魔王(冥王)の勢力の一兵卒かつ不浄な種族ってこと自体は指輪物語まんまだけどね。
 影界はダンジョンズ&ドラゴンズやそれを元にしたゲーム、パスファインダーRPGに出てくる次元界の一種だし、敵対勢力が混沌という名前なのは、『ウォーハンマーシリーズ』や『ファイティング・ファンタジー』においてみる設定。
 リリスが人類の祖の系譜ってのは『ベン・シラのアルファベット』が初出で、めっちゃ便利だから『エヴァンゲリオン』や『現代的なフェミニズム運動』、ほか雑多なライトノベルで死ぬほど擦られていて、魔王が魔族全体を治める王という設定は、今風のハイファンタジー作品ならよくみる。それこそ小説家になろうにある作品では普及してる共有設定。
 ジェンダーの価値観は、ギリシア神話か何か?ってレベルで女性の立場がモノ寄りになってる気はする。人によっては忌避感出るとは思う。
 人によっては忌避感出るものを書いてる割にその忌避感を表明した人非難するのはどうなんとはおもう。

 自分の限定的な知識だとこんなもんだけど、より
ファンタジー作品が好きな人は他にも気づく点がありそう。オブシダンソードとか。
 オブシダンソードはロマンシング サガ-ミンストレルソングにでる秘宝の名前見たいね。

文章

 地の分もセリフも目が滑って読みづらい。
 そこらへんの料理と種族ルーツの説明が大体同程度の情報量なのでどれが重要なのかわかり辛いし、ルーツの話に関しては登場人物がセリフの途中で逐一説明してくれるので話の流れが裁断されてるような感じ。
 さらに文末にオリジナル文献の話を入れてるしで余計に情報が入って来るので整理の阻害になる。
 これを読みやすいと評価できる人物は文章全体を読まず、要点だけ上手く抜き出せる人だと思う。

 文章の重厚さを誇る割に、ワードチョイスがちょくちょく陳腐な気がする。個人的に引っかかったのは「人類の先輩」「西の櫓」「混沌戦争(カオスバトル)」のみっつ。
 人類の先輩というワードチョイスは普通にダサい、人類の祖とか旧支配者とか他に色々あるでしょ。
 西にある櫓を西の櫓というのは普通なので、地名に絡めて『カタカナ名』櫓みたいな表現をすべきでは。
 混沌戦争については、混沌をカオスと読むのはどうでも良いけど、カオスにバトルくっつけているのが個人的にダサい。言葉に力があるからそうしてるとかしらね。オウガバトルが元ネタだという理由はなっとくできるけれど、ゲーム的ファンタジー貶してる分際でそれをやるの?という感じはある。

あとがき

 著者曰く、「読解力の問題」らしいね。
 この作品がやたら酷評される理由、自分の作品を持ち上げるのにほかを下げて、絶賛意見を返さない人を見下したがる著者の言動が全ての根源だと思う。

追記

 序章、本来18話あったらしいけど、ノベリズム版は何故か9話しかない。序章最後のキャラ紹介に謎の人物がずらっと並んでいるなと思っていたらそもそもその人らが出てくる話が消えているっぽい。
 読解力云々の話ではないのでは、コレ。

もっと追記

 先の話の設定資料と他を読んでみた。
 出だしが状況説明から入ってるものはたくさんあるのに、序章の初っ端が夢魔の蘊蓄なのはほんとに理解に苦しむ。また、後の方は厨二臭さは据え置きだけど文章は読みやすい気がする。説明口調が読みづらさの原因になってるという感覚は間違いなさげ?

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