「蹂躙するは我が手にて」後日談ss

これは、身内卓で行った「蹂躙するは我が手にて」の後日談ssです。

ネタバレになるかもしれないので未通過の方は読まないようお願いします。

自分のpc目線で進みます。























平和が宣言された日。世界が恐れ、恐怖に覆われた。しかし、4人の英雄によってその脅威は追い払われた。

その4人は第四次世界大戦の首脳者として処刑されるはずだった者たちである。その処刑を見に来た者たちは恐怖と希望の前に、手のひらを返ヴィクトリア・コリンズし彼らを賛美した。死刑から減刑され禁固50年となった彼らはあきれるほど何もないところで過ごしている。

「なんて、、、私が書くのは柄ではないか、、」

最強の軍人として恐れられた私、「イル・ヴァイナー」は先に言った四人のうちの一人である。一応、罪人ということもあり誰かに会うこともできず。正直に言って、、、

「暇、、、」

三食食べて、寝て、あとは外を見るぐらいしかやることがない。まぁ、でも今日は少し楽しみではある。あの三人に会うことができるから。監視付きだけれど、、。

真っ白い制服を着た男に付いていき、車に乗る。しばらく乗っていればある場所につく。扉に向かい、ノックをする。返事のないことを確認すると何も言わずに部屋へと入る。

そこにいるのは何もしゃべらない、どこを見ているかわからない「彼女」だけだ。目の光はない。ただ息をしているだけの人形のような人間。彼女は「神谷いぶき」。D国の技術研究所長である。いや、であったのほうが正しいか。今は私と同じ禁固50年の刑を受けた罪人である。

あの日、あの恐ろしい「大いなるクトゥルフ」を退けた日から彼女は彼女でなくなった。何をしても反応がほとんどなく、人形のようになってしまった。

治す手立てはなく、一人では生きれない彼女はこの白い部屋で生きている。

そんなことを考えていると後ろのドアが開く音がする。

「あら、私たちが最後ですかね?」

「そうみたいですね」

A国の政治的支配者であった「ヴィクトリア・コリンズ」C国の参謀長官であった「ルイス・ライアン」の二人である。

「いや、私が速かっただけだよ」

そういって二人のほうを見る。彼らは軍服ではなく私服のようだ。ふんわりとしたワンピースをきているコリンズさん、動きやすそうなスウェットを着ているルイスさん。正直見慣れない、、、

「そんなに変ですか」

「え、声だしてた?」

「いえ、視線でわかります」

「それは、、、いや、うーん、、見慣れないなぁって」

「まぁ、お互い敵でしたしね」

コリンズさんがそう言ってふんわり笑う。直視するとやばそうなので視線をずらす。

「まぁ、皆さん集まりましたしお茶でも飲みましょう」

ルイスさんの一言でお茶会(?)が始まった。

お茶会と言ってもお互い監視されてる身ではあるので話すことはすぐに尽きる。それでも誰かと一緒にいるというのは安心するものだ。ルイスさんが隙あらばこちらの上げ足を取ってくることはむかつくが、、

「あー!!もう!何でそんなに上げ足とってくるの!」

「いやぁ、ヴァイナーさん面白い反応してくれますし、、、、ね?」

くすくすと笑いながら覗き込んでくるその姿に怒りがわいてくる。

「まあまあ、二人とも落ち着きましょう。せっかくのお茶が台無しですよ。ほら、イルさんこちらのマカロンおいしいですよ」

コリンズさんがこちらにピンクのマカロンを差し出してくる。怒っていってもしょうがないし、コリンズさんが言っている通りなので黙って食べる。

「、、、、おいしい」

「でしょう?」

「単純だなぁ」

「、、、、、、」

特段不思議なことも、特別なことも起こらない、ただ白い空間に4人が集まる。最初は反乱するのではと危惧されていたがトリクフ・エルゲンが一声かけてくれたらしく、3か月に一度このお茶会が開かれている。

かつて殺しあっていた敵は今や、友とも呼べる仲になっていた。いつかいぶきさんもこの会話に入ってきてくれることを柄にもなく願ってみる。まぁ、50年あるのだ。時間はたっぷりある。

「あ、ルイスさんそれ食べないならもらっちゃいますよ?」

「え、まぁ、いいですけど」

「ほんとイルさんは、甘いもの好きですよね」

「ひゃんかひひまひた?(何か言いました?)」

「ふふふ、いえなんにも」

「食べ終わってから話してください、、はぁ、、」

「、、、、、、」

平和だ。けれどこれがつかの間の平和だということはここにいる4人はわかっている。わかっているからこそこの時間を楽しむのだ。

世界が恐怖に包まれかけたあの日。英雄が誕生したあの日。人生の中で数えたら一瞬の時間はきっと忘れることはないだろう。いろいろあったがかけがえのない時間だったのだから。

願わくば、今度は、、

「4人で楽しいことをしてみたいね」

「は?」

「え?」

そんなことを考えていたら声に出ていたみたいで二人が動きを止める。そして……笑い出した。

「そうですね。ふふ、それもいいですね」

「何を言うかと思えば、似合わないこと言いますね」

「な!「でも」ん?」

「僕もいいと思いますよ」

二人は笑い続ける。むかつくが、ふとこんな時間もありかと思った。一緒になって笑おう。こんどは「4人」で笑おう。誰かが決めたことに従うのは性に合わない。

まだ、物語は終わっていない。ここから始まるのだ。さぁ、声高々に!

「せーの!」

「「「蹂躙するは我が手にて」」」





















「………………ふふ」

くすりと、いぶきさんが笑った気がした。

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