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山田君 不動産で世を渡る(プロになる)


山田君は調査票に基づき、水道課、下水道課、教育委員会に向かった。

水道課では住宅地図にて所在を告げ、管網図を請求した。水道の地中埋設管のことだ。前面道路に50mmの公設管が埋設されていて、そのから当該物件まで20mmで引き込みされて、13mmのメーターが設置されている。

※水道管調査
 水道管には私設のものと公設のものがある。公設管は50mm以上が求められている。水道管が方送り(本管が途中でどんずまり)だと水圧の関係で取り出しの戸数に制限がかかる場合がある。新たにアパートを建築するなどの場合、幹線道路から引っ張りなおしてこなければならないなど、建築開発条件が付されることがある。水道管を新たに埋設する場合は掘削したり、通行を一時的にとめたり、掘削後は山砂で埋め戻しし、道路仮復旧や本復旧などの舗装代がかかり、かなり高額な費用が発生する。
また、私設管の場合は私設管所有者の接続同意が必要で、こちらも水圧の問題やメンテナンスの問題が発生する。


 山田君は下水道課の窓口にいった。「すみません。下水道の埋設管の状況を教えていただきたいんですが」と係員に言った。
係り員は住所を尋ねたため、手持ちの住宅地図を係り員に渡した。
係り員は分厚い青焼きの図面を持ってきた。住所を確認し、
「150mmですね。」と言った。すみませんが図面をいただけますか?
山田君は下水道図面を入手した。

※下水道調査
 下水道が整備された地区と整備されていない地区がある。下水道管調査では埋設管の深さの調査が重要である。住宅地の団地ではあまり問題ないと思われるが、人生まさかの坂がある。ごく稀に地中深くに下水管が埋設されていて普通の工事ではつなげない場合や、農業用の送水管が下水管のすぐ近くに埋設されていて危険な場合もある。この場合は推進工事といって、道路の路盤を掘削する工事はできないので、横からドッキングさせる特殊工事となる。旧中山道などの物件を取り扱う場合は要チェック。

※豆知識 下水道の人孔(マンホール)の蓋が標高の基準になっているらしい。ここから読み取れることは、その土地がどちらに傾斜しているのか地勢がわかる。また測量などの基準点(トラバー)に用いられる。

上下水道の調査を終えた山田君。あと少しで役所の調査が終了である。
山田君は教育委員会にの窓口に行った。教育委員会には遺跡包蔵地の調査を行うことが目的である。
係りの者に不動産売買に伴う遺跡包蔵地の確認にきましたと告げる。
書類を渡され、調査場所、日時、調査担当者を記入して係りの人に渡した。
なにやら役所所有の住宅地図をのぞき込む係り員。その地図には色鉛筆で丸い囲みや緑の囲みが塗られ、日にちが記載されていた。
「ああ、この土地は遺跡包蔵地じゃありませんよ」
ありがとうございました。山田君は教育委員会を後にした。

※遺跡包蔵地
 埼玉県が指定した遺跡があるだろうと思われるエリア。○○遺跡と記載され時代がわかるようになっている。江戸時代は遺跡にあたらない。
遺跡包蔵地の中に物件がある場合、重要事項説明書の文化財保護法の法令が適用される旨を記入する。

※ 遺跡包蔵地に建物を建築する場合の実務
役所指定の試掘申請書に必要事項を記入する。添付書類として地図と公図と予定建築物の矩計(かなばかり)など役所が要求してくる書類を用意し、教育委員会の遺跡窓口にて申請する。
後日試掘の予定日時が決定される。立ち合いは不要であるが、立ち会ったほうがいい。試掘当日は役所から指定された土建屋さんの小型重機が待機していて、筋掘りにて掘削がはじまる。薄皮をはぐように慎重に掘っていく。
水や柱の跡などが出てくると、教育委員会の立ち会い者が都度確認。掘削の深さは決まりは定かではないが、地山(じやま)までが基準だと思う。
 埴輪や勾玉や土器が出てきたらかなりやばい。この時点で本発掘が確定してしまう。
なにも出てこなかったらこれで終了。後日役所からなんにも出てこなかったから、工事してもいいよ。ただ慎重に工事して万一遺跡がでてきたら教えてください書類が届く。「遺跡がでてきたら重機でかき回してわからくするから安心して下さい」なるべく面倒なことは避けたい。

役所を出た山田君はコンビニで缶コーヒーを買い、灰皿の前でいっぷく。

山田君の物件調査はまだまだ終わらない。
役所から入手したエビデンスと現地が合っているか、営業所に戻ってから現地の覆面調査を行うこととなる。







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