無人島生活福袋〜最後と最初をつなぐもの〜
島に残されたのは、私一人。
少子化、環境破壊、天災、戦争、国外流出…
人は、徐々に、そして、一度に、失われた。
我が国のかつての繁栄が嘘のようだ。
もう、残りの人生を、たった一人で過ごすしかなかった。
私が死んだら、この島はしばらく無人島となるだろう。
だが、私はこの島を愛していた。
もし、その後に誰かが訪れたら…何か、残しておけないだろうか。
食料?
だめだ、来る前にいずれ腐ってしまう。
文章?
だめだ、言語が通じるとは限らない。
武器?
また戦争してどうする。
これしかない。
私は、動物の屍から角を切り取り、削って穴を開け、麻袋に入れた。
ここが、私の…
目が、覚めた。
ここは…どこだ?
俺は、死んだのか…?
どうやら、船が難破し、たった一人で漂着してしまったらしい。
どこの土地だろう?
緑が生い茂り、人の住んでいる気配はなかった。
無人島か…?
そう思ったとき、海辺の松の木に麻袋が括り付けられているのに気づいた。
手頃な棒で麻袋を落とし、中を開くと、一つの角があった。
中は空洞で、幾つかの穴が空いていた。
これは…角で作った、笛だ。
一番大きい穴に口をつけ、小さい穴を順番に押さえると、
一つのメロディとなった。
優しく、それでいて、高らかに、空いっぱいに鳴り響いた。
俺は、そのメロディを初めて聞いた。
だが、どこか懐かしく、実は知っているような気がした。
全く知らない言語なのに、歌が、自然と口をついて出た。
ここが、これを作った、あの人の。
そして、俺の…
砂からヤドカリが顔を出した。
(了)
田原にかさんの「 #毎週ショートショート 」に参加しています。
お題は、「 #無人島生活福袋 」でした。
「ふるさと」、歌って載せようと思ったけど恥ずかしかったからやめる。Youtubeを貼り付けます。
「福」袋じゃなくね?
っていうツッコミも歓迎です。
「なんのはなしですか?」
無人島のはなしです。