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青天の霹靂23(事件)

会場に行くと、
「冬眞先輩」
そう言って、嬉しそうにリルカが駆け寄って来る。
「今まで挨拶を? ご苦労様です」
そう言って冬眞はリルカは、労う。リルカは顔を赤くする。
「いえ、お恥ずかしい話ですが、実は挨拶に私、飽きて先程まで、ずっと抜け出してました」
「そうですか?」
それを聞いて、冬眞はリルカには、アリバイがないんだと思い、それを聞いた簾は驚く。
「その可愛らしい姿を見せてあげなきゃ、今日来てる人達が可愛そうですよ」
そう笑って言った。
簾にそう言われ、顔を真っ赤にしながらリルカは挨拶回りに戻って行く。
「リルカの線は消えたな」
そう廉は言った。
「えっ?」
「あの子が穂香さんに廉夏をやってもらうとしても、その間にアリバイを作らなきゃ、何の意味もない」
「そうですね。確かに」
冬眞もそれに頷く。
「でも、これは犯人にとっては、計画がご破算だったな。まさか、リルカが抜け出すとは、計画のうちに入ってなかったんだ。さて、犯人はこれにどうするかね?」
簾は面白そうに笑う。
「だから、なぜ笑うんですか?」
キョトンとして冬眞は廉に聞く。
「可笑しいか?」
「可笑しいです」
「だって、可笑しいだろう? 犯人はどうやってここから、計画を建て直すのかね。そう、考えるだけで実に面白い」
廉は本当に面白そうに言う。
会場で廉夏たちの姿を見つけた富山は駆け寄って来る。
「もう、大丈夫ですか?」
「ええ、お腹が空いた位ですね」
「ああ、それは良かった。是非、食べていって下さい」
「はい」
廉花は、元気良く返事をすると、早速ケーキ皿に手を伸ばす。
それを邪魔するように、声がかけられる。
「廉夏さん」
『何?』と睨むと、そこには、廉夏が待っていたリルカがグラスを持って立っていた。
「何か用?」
でも、待っていたはずなのに、そんなこと、廉夏は忘れてしまうほどに、それほど腹を透かせていた。
「遅くなりましたが、御祝いさせてくれませんか?」
「祝いなんていいと言いたい所だけど、それを受けるわ。ありがとう」
「では、どちらのグラスが宜しいですか?」
「別にどちらでもいいわ。あなたが好きな方を選びなさいよ」
ちょっと、拍子抜けしたように、リルカは言う。
「では、こちらを」
渡されたグラスを受け取ると、冬眞は廉夏の耳元で言う。
「飲まない方が宜しいですよ」
それに、ゆっくり首を振る。
「大丈夫よ。学生が手に入れられる毒なら、もう免疫があるわ」
そして、二人で乾杯と言って飲む。
それを飲んで廉夏は首を捻る。
『可笑しい。毒が入ってないわ』
ごくごくと廉夏は飲む。
異変が起きたのは、リルカの方だった。
喉を苦しそうに抑え、リルカが倒れた。
リルカも愕然としている。
それに気づいた富山は駆け付ける。
何かリルカの耳元で口を動かすが、穂波の叫びに皆の注目はそちらに行った。
そして、叫ぶ。
「お姉様」「ルリカ様」
穂波と富山がほぼ同時に叫ぶ。
富山が抱き起こすが、こと切れた。
「ナゼじゃ?」
党首が驚いたように言った。
「富山すぐに出入口を封鎖しろ」
「畏まりました」
「誰であろうと、リルカを殺した者が、生きてここを出られると思うなよ」

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