青天の霹靂63(ハイジャック)

ここは、県一番の私立高。
だから、勉強の邪魔になる修学旅行を1年でやる。
廉夏の高校は中高一貫学校だ。
途中で入ってくる子もいるから、ある意味、親睦会も兼ねているのだろう。
ズルすぎる。
まぁ、京都と言えば、八ツ橋だ。
「つまり、私は色気より食い気ってこと?」
それに、冬眞は笑う。
鼻歌混じりに自分の部屋へと帰る廉夏。
「ご苦労様です」
冬眞は、廉に笑う。
その飛行機の機内で、廉夏たちは一人一人コックピットにいれてもらう。
廉夏の番になった時、それは起こった。
急に後ろから押されたのだ。
「キャー。何すんのよ」
「ごめんな。お嬢さん。ちょっと俺らに付き合ってもらおうか」
「目的は何?」
拳銃を突き付けられても、廉夏は変わらない。
「金だよ。金。ここには、金持ちの親を持つ子が沢山いるからな」
「つまり、今日に的を絞ってきたというわけね」
「ああ、そうだ。何もするなよ。下手な動きすれば飛行機内にいる俺らの仲間が何するか分からないぜ。ほら、お前もコックピットに入れ」
と行って、コックピット内に入れられる。
廉夏は、ごくりと唾を飲む。
「運転手、司令官に連絡しろ。身代金は、一人100万。それが用意出来るまで、この飛行機は飛び続ける」
「はい」
そう言って、操縦士は、司令官に連絡すると、向こう側で焦るのが分かる。
どうやら、犯人はそれを聞き、喜んでいるようだ。
「安い。たかだか100万円。バカにしているのも、程があるわ」
廉夏は、冬眞にメールで今の状況を教えネットで何か流れていないかをを調べるよう指示を出す。
それをポケットの中でやっているため、字が正しいか分からない。
それでも、調べてくれるよう願いを託す。
そして、携帯を通話中にする。
冬眞が、これを取ってくれたか不明だが、岬は今自分が出来ることをする。
「お金が目的なの?」
「ああ、そうだ。お前たちみたいなガキには分らねぇ。内定もらってた会社から突然切られる苦しみ」
「こんな事やる人、切った会社良い目があるわ」
「なんだとクソガキ」
思いっきり殴られ、廉夏の唇から血が出る。
それを拭いながら、ニヤリと岬は笑う。
「本当の事言われてムカついたかしら、でも私たちは貴方の身代金要求の駒に使われる気は無いわ」
犯人達は、廉夏を殴る蹴るの暴行を加える。
それに、教師達は慌てて止めに来る。
「辞めて下さい。私たちの生徒に乱暴な事はしないで下さい」
何だと貴様。手を振り上げる犯人に廉夏は、
「辞めて下さい。大丈夫だから、先生達は生徒のケアに努めて」
血を吐きながら、廉夏は言った。
「しかし・・・」
「生徒達の中に怯えている子がいますよ」
廉夏は笑いながら言った。
廉夏は全然、大丈夫そうに笑う。
廉夏はツバを吐き、血を地面に吐く。
「ああ、口の中がイガイガよ。最悪だわ」
「このガキ、舐めやがって」
手を振り上げ、また殴ろうとする。
その手が廉夏に届く前に、中川が止める。
「私の生徒に手を出すな」
「先生、止めないで」
それに、驚いたように、聞く。
「何故?」
「彼等の怒りを私は受ける覚悟がある。だって、たぶん彼等の切られた会社って家の子会社だもん」
「そうなのか?」
「たぶんね。うちの子会社だったところを、この前切ったから。たぶんそのせいよ。ニュースでもやってたし。新規採用者を採用しないって。だから、人質になるのは、私だけでイイ。他のものを解放しろ」
廉夏は言う。
「身代金全額うちで払おう」
廉夏の提案に、犯人達はうすら寒い笑みを浮かべ。
「あんたのとこからも、取るがココにいるガキどもからも取るぜ」
「チッ。欲張りな。辞めておけば良いものを」
「何か言ったか」
と、また殴る。
その頃メールを貰った冬眞は動いていた。
ネットで反抗声明が出ていた。
「これか」
携帯からは殴られる音がする。
それを中川が止めるが、止めるのを岬が止める。
廉夏の話からすると、廉に聞くのが早そうだ。何かを知ってそうだ。
早速確認を取るための電話を掛ける。
携帯にしたのは、繋いでもらう時間をロスしたくないため。
携帯にかけると廉が直ぐ出る。
「仕事中にかけてしまってすいません」
「別にかまわん。どうした?」
「廉夏の乗った飛行機がハイジャックされました」
それに、廉は黙る。
「廉夏は、犯人とのやり取りが分かるよう、携帯を通話中にしています。ただ、それがいつまで持つか分かりません。つまり、携帯の電池が持つ間に解決しろという意味だと思います」
「廉夏の我慢の限界という事か」
「そういうことですね。そこまでに何か対策を立てろと言う無言のお達しですね」
「携帯の持つ時間ってどのぐらいだ?」
「たぶんその前に使っていなければ、5時間ぐらいは持ちます。ただ、その間、飛行機の燃料がもてば良いのですが?」
「それだな。飛行機の燃料も心配だが、それよりも、犯人の思いの方が心配だな。で、犯人の要求は?」
「人質、一人につき100万円らしいです」
「フーン、それだと答え出るのに時間かかるだろう」
「ええ、それを狙ったんだと思いますよ。考える時間を与えない」
「説明する時間を学校側に与えないというわけか」
「ええ」
「身代金はうちで払おう」
廉の言葉を聞き、冬眞は笑う。
「廉夏と同じことを言ってます。ただ、犯人はそれを聞き、人質になっている人からも取るらしいです」
「強欲な」
「やはり、兄妹ですね。同じことをまた言っています。それを犯人に言い、可哀想に殴られていました」
「思い知らせたいな。誰を敵に回したかを」
廉は鋭い目を光らせながら、言った。
「Xに頼むか?」
「えっ、Xですか?」
「ああ、お前は Xに良い印象を持っていないようだな」
「良い印象を持てと言う方が無理です。彼等のせいで、何の関係ない人も亡くなったんですから」
「そうだな」
廉は否定しない。
「それで良いんじゃないか? すべてを受け入れてくれとは、言わないが、彼等もその立場に追い込まれた、被害者だと言うのは、忘れるな」
「分かりました」
冬眞は納得しにくいように返事をする。
「まぁ、今直ぐでなくても良いさ。おいおい思い出してくれればXの本来の有るべき姿は、弱者を救うことにあったんだから」
「はい」
一応、返事だけはする、冬眞。
廉は冬眞を電話を切り、菅野勝人に連絡を取る。
冬眞は取り敢えず、廉からの連絡を待つしか、今はない。
悔しいが今はネットで、情報を探すいがいない。
そう思いネットでハイジャックの予定が無いか見ると、人を募っていた。
特に一度は採用するとしながら、後で採用を切られた人に、金を取ろうと書き込みがあった。
これですね。でも、杜撰だな。
廉夏が無事なら良いが。
その頃の廉夏は、殴られ気を失っていた。
中川も廉夏を庇おうとして、随分殴られていた。
口からは、血を出し、腕と足には、ものすごい擦過傷が出来ていた。
犯人達は、廉夏が気を失ったことで、ようやく冷静に慣れたらしく、血の気が引いていた。
「ヤバイんじゃないか?」
「やべえよ。俺は知らねぇぞ。もともと、こんな計画俺は上手くいかねぇと思ってたんだ」
「何だと。お前が一番やる気だったじゃねぇかよ」
「おい、それより、こいつ親会社って言ってたな。やべえんじゃないか?」
犯人達は、仲間割れを始める。
それを聞き、廉夏は口の端しを上げる。どうやら、意識が戻ったようだ。
「今更、気付いたの? 気付くの遅過ぎ。貴方達、子供じゃないんだから自分たちのした事の責任、きちんと取りなさい。責任がないなんてそんな甘ったれたこと,私が許さない」
その頃、廉は、勝人に連絡を取っていた。
「悪いな。今、大丈夫か?」
「ああ、如何した?」
「妹がハイジャックに、巻き込まれた。なんとか無事に助けたい」
「何で?」
「修学旅行に行く途中に巻き込まれたらしい」
「何便の飛行機だ?」
「確か、伊丹に10時35分着だ」
それを聞き、勝人は自分の後ろにいる本宮に何かを確認し、「ソッカー」と声を上げる。
「ラッキーだったな。Xの人間がたまたま乗っているぞ。その便に」
「それは、運が良かったよ。じゃあ、手を貸してくれ。って、そう言う力の有るやつか?」
「力は保証するよ。あいつは子供だが、今Xでは力の有る奴だ」
「子供なのか?」
「ああ、子供だがやり合ったら、たぶん、本宮にも、負けないよ。本宮がやるのをいやから、やったことはないが」
廉は驚嘆したように言う。
「それは、すごいな。俺も、ぜひやりたいな。その子と」
「そのうち、やらしてやるよ」
と、笑いながら言った。
「それより、本宮をびしばしとけちょんけちょんにしてやってくれ」
「お前、そんなに泣かされたか」
と言って、含み笑いをする。
それに、一瞬勝人は黙ったあと、慌てたように言う。
「ウッセェ。あいつぜってぇ、俺が今のXのボスだと言うこと忘れてやがる」
「そんなに可愛がられたか?」
廉はゲラゲラ笑う。
「でも、まぁ、今まで我慢させてきたんだ。仕方ないよな。気が気じゃなかったと思うぜ。特にお前が千夏と付き合い出したときは」
「分かりにくいんだよ。もっと出せってなもんだ」
その言葉を聞き、本宮は済まなそうに言う。
「申し訳ありません。あなたが『もっと』と言うから、やりすぎましたか?」
わざと受話器越しに聞こえるように言う。
たぶん、電話の向こうでは真っ赤になっていることだろうと容易に想像出来る。
「もう少ししたら、今後のことを話し合おう。今はまず、その子の力を借りたい。ただし、機内では、廉夏の指示に従ってくれるように、連絡とれるか?」
「ああ。直ぐ連絡する。また、本宮に指示を出す」
「互いの関係は変わっても、立場は変わらず、お前がボスのままか?」
「変えられてたまるか?」
その言葉に、廉は笑う。
「そう言うものか? 本宮さんにもそこのところ、聞きたいね」
「そんなこと聞かんで、良い」
「連絡とれました。直ぐにでも動くかと聞いています」
「ああ」
「分かったそうです」
本宮の電話が切れる。
「と言うことだ」
「そうか。じゃあ、廉夏の指示通り動いてくれ。自分の判断とかはいらない」
廉はきっぱり言う。
「わかった。でも携帯は不味いよな?」
「通話中になっているはずだから、繋がらない」
「じゃあ、どうやって指示を仰ぐか?」
「それは、あいつが人の殺意に敏感だから、殺意を持って近づけば、あいつは気付く。だから、飛行機に乗ってる子に犯人を倒せと伝えてくれ。廉夏はそれを必ず止めるはずだから」
廉の言葉に驚く。
「どう言うことだ?」
「廉夏は幼い子に殺人なんて、取り返しのつかないことはさせない、絶対に」
「そうか? そうかもな。潤を殺した俺が言うのも変だけどさ」
「変じゃないさ。お前だからこそ、逆に言えることも有るだろう?」
「とにかく、殺意を持って近づくよう、言うよ」
そう言って、電話を切る。
たぶん、うまく指示を出してくれることだろう。
冬眞に一応教えておくかと、冬眞に電話すると、忍は直ぐ出た。
それに、廉は笑う。
「どうでしたか?」
「たまたま、Xの人間も乗っているらしく、その者の力を借りれる」
「どう言うことですか?」
「お前にも分からないか? 廉夏の本質を考えれば、見えてこないか? あいつは、犯人に手を下させる前に、絶対に止めるだろう」
「そうか? その人に絶対やらせ無い」
「そうだ、廉夏は止める。でも、犯人にはそれが良いお灸になるだろうし」
「そうですね」
その頃、飛行機の中では、犯人達の罪のなすりつけ合いが、勃発していた。
「醜いわね。罪を冒したことも、人のせいにしなければならないのね。面倒臭い」
「何だと?」
そこに、子供が入ってくる。
「なんだ? 貴様」
殴りかかろうとした犯人は青ざめる。
「なんだ、これ? 動けない」
動け無いらしく固まる。
それに、廉夏は気付く、少年から殺意を感じ、止める。
「駄目」
廉夏の言葉に中川が驚く。
それに、少年も驚く。
「何故? こんな奴ら殺しても誰も泣かないよ」
「そんなもの、関係ない。貴方がこんな奴のせいで傷を負う必要ないわ」
と、犯人ではなく、少年のことを考える。
「こんな奴ら殺しても、傷なんか負わないよ」
「負うわ。絶対」
「なぜ?」
「相手が犯罪者だから負わないの? 負わ無いと決めたのは、誰? 貴方本人じゃないの? それじゃ、この犯人と何も変わらないわ。違う?」
「う〜ん、そうかも」
「でしょ? 貴方がこいつらのために、傷なんか負う必要はないわ」
「貴方は面白いね。本宮さんが貴方の指示従えって、言った理由が分かるよ」
「従ってくれるなら、縛るまでの間拘束しておいて」
「ラジャ」
と、行って捕まえている男達に廉夏は嘲笑う。
「欲を出さずに、私の要求飲んでいれば。金手に入れられたのに、残念ね」
そう言って、縄をかけて行く
縄を掛けられ血の気が引く男達。
「ご、ごめんなさい」
「誤って許されたら、誰も苦労しないよ」
口から血を出しながら言う廉夏の言葉に犯人達は何も言えなくなる。
「さてと、犯人は捕まえたし,君は誰?」
少年は笑って言う。
「内緒って駄目?」
「ダメに決まってるでしょう? でも、言いたく無いなら、何歳か教えなさい」
「10歳だけど、それが何?」
戸惑ったように言う少年に、なぜか岬はショックを受
「負けた」
「えっ?」
それに、中川は笑う。
「お前若さで勝ちたかったなんて、これからどんどん若いのが出て来るぞ」
「う〜、認めたくない」
「認めろ」
「歳で羨ましがられたのは、初めてです」
苦笑いで言う。
「そうよね」
廉夏はしみじみと言う。
「でも、貴方はたぶんXの人間なのよね。力はたぶん、時空を捻じ曲げることかな」
「正解だよ。そこまで、正確に読まれるとは、あなたも同じ力の持ち主?」
「違うわね。私は、人の殺意にただ、敏感なだけ。何も出来ないわ」
「だから、僕に殺意を持って近づけと言う奇妙な指令が出たんですね。あなたが止めることを見こおして」
「止めるか?」
廉夏は驚いたように言う。
「廉兄たら、信頼しすぎだよ」
可笑しそうに廉夏は笑う。
「如何言うことだ? 時空を捻じ曲げるって?」
「う〜ん。如何言えば良いかな? 時空を捻じ曲げるって言うのは、その人の周りの時間を変えてしまう。つまり、止めることも早めることも出来る」
「つまりなんだ? その人が過ごす時間を変えちゃうってことか?」
「そう言うこと。だから、力を持っている者のなかじゃ、強いよ」
「お前の力よりもか?」
「勝負にならないね。私のなんか、殺意を読み解くだけだけど、彼の場合時間を止められるんだもん。彼はある意味無敵だよ」
「そうか? 力にもいろいろあるんだな」
「うん。でも、この子の力は特殊だから、生きにくかったと思うよ」
「そうでもないよ。僕は生まれてすぐにXに引き取られたからね。勝人さんには、感謝してるよ」
「そうなの? 良かったわね。その若さで生涯の主と言える人と出会えて」
「ええ、本当に」
嬉しそうに微笑んだ。
「さぁ、着いたら京都旅行だ」
ルンルン気分の廉夏に待ったを掛けたのは、中川だった。
「お前は空港に着いたら、まず病院に行け」
「えー、良いよ」
「駄目だ。病院行くまで、お前の観光は中止だ」
「ええー、殺生な」

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