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声優談義①ー島﨑信長氏ー

内容はタイトル通りである。
なぜ一発目から声優なのか、なぜ島﨑信長なのか。
それは単純に、noteを書くきっかけがノッブに関する記事だったからである。それ以上でもそれ以下でもない。(見出し画像についても特に意味はない)

彼を最初に知ったのは果たしていつだっただろうか。
最も古い記憶は、アニメ「TARI TARI」に出演しておられたということではなかろうか。今思い返せば、かのアニメはレギュラー陣が高垣彩陽氏、瀬戸麻沙美氏、早見沙織氏、島﨑信長氏、花江夏樹氏という今現在からすると錚々たる面子で固められたものであったわけであるが、当時は彼らもまだデビューしたての若手であった。(後で知ったのだが、花江氏に関してはこの作品がなんと初レギュラーだったそうで、今や飛ぶ鳥落とす勢いとなった彼の原点の一つとも言える作品であることに殊更感慨を抱かずにはいられない)

私がなぜにこの作品を視聴していたかというと、P.A.WORKS制作のオリジナルアニメであるというのが理由である。「true tears」にはじまる同社制作アニメの系譜に連なる作品として、やはりその作画、特に背景描写等に期待していた。また、当時の年代的にも高校生たちの群像劇というのは刺さるものがあったのだろう。
率直に言って、「TARI TARI」自体はとても良い作品であった。作画もさることながら、心情描写も1クールかけて丁寧に描かれ、合唱というテーマに基づく挿入歌や演出も非常に目を見張るものがあった。

そんな作品の中で私が最も好きだなと感じたのが島﨑信長氏演じる田中大智くんであった。どこにでもいそうな普通の高校生というのが彼に対する印象だったのだが、だからこそ現実味のあるいいキャラクターであり感情移入しやすい存在だった。そして、彼の声はその現実味をよく表現しているなという印象をもった、それが氏に対する最初の感想であった。

その次に氏に対して一際大きな感想を抱いたのはかなり年が空いた様な気がする。勿論、その間にも氏は数々の作品に出演してキャリアを積み重ねていたわけであるが、あくまで数多の声優の1人としての認識であった。

氏を再認識したのは2016年のことであった。いわゆる「先輩最低です。」事件の時である。事の顛末は調べていただければ詳しく記録されているので割愛するが、私はあの光景を見て、笑うと同時に「コイツヤベェな…」という感想を抱いた。生放送であのような所業をできる人間を私は他に知らなかった。そして何よりあのような発想に至る人間を知らなかった。その時から、氏という「人間」に対して非常に興味関心を持つようになった。(あくまで「人間」としてであって、この時はまだ「声優」としてではないことにご留意いただきたい)

これがきっかけとなり、その年の氏の出演作はだいたい見たような気がする。(今までも氏の出演作を見てはいたのだろうが、氏をキャストとして認識し、視聴したのはその年が初めてであったと思う。)
印象に残っているのは「灰と幻想のグリムガル」のマナト役であろうか。リアタイではなく、後に何かの配信で視聴した記憶がある。設定としてはいわゆる異世界転生系にあたるのだが、昨今跋扈している最強系ではなく、まさに現実として転生したらどうなるかをシビアに描いている。ネタバレになるのであまり詳しくは述べないが、非常に良作なので機会があれば視聴してほしい。この作品において氏は主人公ではないものの、かなりのキーパーソンの役として出演しておられた。氏が演じるマナトは現実的な世界観の中で、一際現実的な人間として存在していたように思う。この作品あたりから、氏を「面白い人間」ではなく「現実の人間っぽい演技をする声優」として認識するようになった。

ところで、個人的に、氏の演技は派手さという点においては、やや欠けるように思う。その所以は、あまり大きな声で叫ぶような役や感情を露わにする役にキャスティングされることが多くなく、むしろ物静かであったり冷静であったり柔らかい印象をもったりする役が多いからではないだろうか。(勿論「斉木楠雄のΨ難」の海藤瞬をはじめとした例外も多数存在するが)
感情を露わにしない役柄はどこか人間離れしており、現実味が感じられないことが多い。叫ばないので見せ場を作るのも難しいだろう。それでも、彼等も一応は人間である。それをいかに表現するかが焦点となるものと考える。

氏の演技はその点において、「人間を人間として表現している」のではないだろうか。現実で我々が、失礼、主語が大きくなったので言い直すが、私が行うような感情表現に近しいものを感じるのだ。勿論とてもいい声で叫び、泣きじゃくる表現も非常に素晴らしいことは言うまでもないのだが、現実問題として少なくとも私は、ドラマやアニメで再現されているほど豊かに感情表現できない。
現実にありそうな演技をする声優として「島﨑信長」を評価し始めたのがこの頃であった。

その後も氏のことは定期的に追っていた。推しになったかと問われたならばそれは否定する。宗教上の理由から推しは2次元のみとされているからだ。ただし、興味関心の対象であり、贔屓に思っている声優の1人であることは否定しない。「フルーツバスケット」の草摩由希役であると発表された時は、原作ファンだったこともありかなり嬉しかったことを覚えている。

氏がきっかけで始めたゲームもある。「ツイステッド・ワンダーランド」などはまさにそれである。ゲーム性として、あまり私には合わないものかと思っていたが、なんだかんだでもう2年以上プレイしている。勿論推しは、氏がcvを務めるディアソムニア寮所属のシルバーである。氏がcvであるというのが推しになったことになんら寄与していないとは言わないが、好きになった理由は単純に彼が「いいヤツ」だからである。当ゲームは基本的に「わるいヤツ」しか出てこない。別に犯罪者集団というわけでは決してないのだが、とりあえずヴィランがモチーフなので、キャラクターに一癖も二癖もあり、悪口暴力日常茶飯事みたいな雰囲気である。(それでいて、どのキャラも憎めないのが凄いところだが)
そんな中、我が推しはとてもいいヤツである。何より真っ直ぐなキャラである。正しいことを正しい、良いものを良いと言える心の美しさに私は惹かれて沼に落ちた。この沼の住み心地は素晴らしいので、万人にお勧めする。

なぜここまでシルバーのことを語っているかというと、彼を通して島﨑信長氏の演技の素晴らしさを改めて感じさせられたからである。先日ゲーム内にて本編新章が公開されたのだが、我が推しがなんやかんやあって泣いてしまったのだ。(なんやかんやについてはご自身の目で確かめられたい。)その際の泣きのボイスが素晴らしかったわけである。我が推しも、氏のキャスティング傾向の例に漏れず、かなり感情表現が少ないキャラクターである。(個人的にハイスピ時代の七瀬遙並に感情を出さないキャラだと思っている。)声を荒げることもなければ、高笑いするなんて想像もできない、そんなキャラである。感情の出なささがパーソナルストーリーの題材となるレベルで感情表現に乏しい我が推しが泣くというのをどのように表現するのか、非常に難しかったことは想像に難くない。
それを氏は表現してくれた。私はそのボイスを自らも一緒に泣きながら聴いたが、大変良かったと感じさせられた。シルバーという人間が仮に現実にいて泣いてしまうのだとしたらきっとこんなふうに美しい涙を流すのだろう、そう思える芝居であった。そして、私は氏の演技に存在する人間味や現実味のようなものを改めて実感した。

私の独特の思想かもしれないが、私は演技や芝居に対して人間っぽさを求めている。勿論声優であれば「イイ声」「美声」や「表現力」といったものを求めることもあるかもしれない。それはひとつの思想として素晴らしいものである。しかし、私はやはり人間味や現実味を重視したいと常々思っている。
アニメはドラマに比べてファンタジーものが多いせいか、世界観や登場人物までもが現実離れしがちである。現実離れしていることは決して悪いことではないし、むしろファンタジーは現実離れしているからこそ面白いのである。しかし、そこで忘れてはならないのが超人的で現実離れした登場人物も、人外生物やロボットでない限りにおいて「人間」であるということである。現実離れした人間をいかにして現実味を持つものにするか、1人の人間として表現していくか、その点に注目することも大切ではなかろうか。
その点において、私は、氏の演技の中に光るものを感じている。

さて、そろそろ長くなってきたので締めなければならないが、正直真面目すぎる話をしてしまったなと後悔している。ノッブについて語るにあたり、おもしろエピソードや私が氏を気に入っている大きな理由である、氏のオタクとしての在り様を書くことを想定していたのだが、いつの間にかそれとはズレた話になってしまった。
氏のオタクとしての思想や生き様は共感できる部分が非常に多い。勿論某界隈ではガーチャーの異名を轟かせているが、それだけでなくオタクとしての、物事に相対する際の姿勢や考え方についても学ばせてもらっている。
ここまで書き連ねておいてなんだが、私は声優としての氏と同じくらい、オタクとしての氏を肯定的に評価している。そのことについてもまた別の機会に書いてみたい。

今後、氏がどのような演技を見せてくれるのか、その表現を通してどのような世界を構築してくれるのか期待しつつ、氏の益々の活躍を陰ながら応援し、この文章の締めとする。

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