見出し画像

君たちはどう生きるかについて

【上の世界の現実で見る夢と理想】

少年の三つの願望


〇願望1…もっと清潔な金を自分で稼いで生きていきたい 
外から見れば恵まれて何不自由ないが、           
その恩恵の全ては自分で獲得したものではない。
父から与えられのもので、
それは戦争商売で得られたものである。
大人はなぜ、善き行い善き利益を追求しないのか。

〇願望2…嘘で自分を大きく見せ自分には価値があると周囲に印象付けたい 
実際には無力無価値な自分を隠したい。
又は、どうにかして変えたい。
喧嘩に負けても大したケガもない自分を許せず、
自分は勇敢に戦ったと誇示したいが為に、
自分で自分を傷つける。
または、可哀そうで悩んでいる自分を、
みんなに気付いてほしい。

〇願望3…厳しい環境で自分の力を試したい    
動けない日常から動ける非日常に潜る。
戦う術と生き残る知恵を学んで未知の領域に挑む。
誰でもいいから誰かを助ける事で、
自分の価値を獲得したい。
一方で、
お前さえ居なければと内に秘める身内の存在、
自分の挑戦を否定する周囲の反応がある。

【下の世界の非日常に見る世界の現実】

幻想が提示する願望の答え


願望1の答え

〇高潔な目的をもって組織を作っても、
組織内の統計的な犠牲者は避けられない。
〇恩恵は奪い合うもので、
利益と穢れは切り離せない。
※軽蔑していた父が家族を守る為に
最適行動をとっていた事を理解する。

願望2の答え
〇自分の力で未来を切り開いているつもりでも、
結局他人に助けられている。
〇自分に悪意を持って騙しに来た相手でも、
逆に利用して生き残る術にする。
※悪意と嘘に頼らなければ生きていけない弱い自分を自覚する。

願望3の答え
〇力を獲得し発揮しても、
自分と他人の天秤から逃げられない。
※母は死ぬ運命にあっても少年を出産する。
〇潔癖な理想郷は夥しい屍の上に建てられる。
※現実の雁字搦めの中で理解者を探して、
辛うじて息継ぎしながら生きていく。

全体の感想


上の現実の世界で夢を見て、下の幻想の世界で現実を思い知らされる。
人は自分一人で生きているつもりでいられる子供から、
集団の中で、自分の居場所を探さなければいけない大人に変わる。
その機会を逸した時に、
大人になってから拗らせて作中のインコの様になる。
仮に居場所を見つけても、弱ければワラワラ様に強者の餌になり、
強くとも、ペリカンの様に永遠と餌場を求め彷徨う事になる。

身動きできない現実をどう考えるか?
なぜ善意は悪意に変わるか?
なぜ人は争うか?

その答えがこの作品にはある。
人生と世界の説明書の様な映画だった。
個人の理想と現実と世界の仕組みを端的にまとめた傑作だと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?