閑話(1)

昔、とある病院で、こんな患者さんを見かけました。
70代の両親と50代の娘さん、いつも三人で、父親の診察に来ていました。

裕福なご家庭なのか、皆さん、身なりがちゃんとしています。お父様もジャケットをお召しになり、お洒落な装いでした。

しかし、待ち時間が少しでも長いと、他の患者さんが待っていようがお構いなしに、娘さんがキレはじめます。
「(父親を指し)この人は、癌なんですよ!!いつまで、待たせるんですか!!」

いや、受付の順番で診察してますし、皆さん、其々、病名は違えど、病気だから通院してるんですから。
どう見ても、お父様より、具合悪そうな患者さんすら、大人しく待ってますけど??
「癌」だから、何でも許されたり、優遇されると思うのは、大間違いだー!
「癌」を免罪符にすなー!!

癌を患っていない私には、癌患者やご家族の気持ちは分かりません。
だから、娘さんが騒ぎ出すと、毎回、
「ああー。まーた始まったよ…」
と、冷めた気持ちで傍観してました。

あの病院は、そこまで大きな病院では無かった為、癌患者や重い病の患者さんは、それ程多くなかったのかもしれません。

T大病院のように、癌患者さんが多そうな病院に、もし、あの親子が通っていたとしたらー
あのような態度、とれたでしょうか。

いや、でも、あの親子なら、T大病院でも待たされても、
「この人!癌なんですよ!先に診察しなさいよ!」
と、騒ぎそう 笑

そしたら、周りの患者さん達から
「いや、自分も癌なんで」
と言われたり、冷たい視線を投げられるか、大人しく待つよう諭されるか、相手にされないか…

「自分達も癌なんだから、待ちなさい」
と言われたら、あの娘さんなら、きっと
「それが何よ!この人は、ステージⅣなのよ!余命一年なのよ!」
と叫びだしそう。

そうなったら、次々に、患者さん達が、
「自分、余命半年なんで…」
「自分、三ヶ月なんで」
と言いだしてー…
そこで、切れるカードがなくなって、やっと負け?を認めて、大人しくなるかしら。

待合室で、あれだけ騒ぐご家族は、なかなか遭遇したことはありませんが…
病気が多種多様のように、患者さんも色んな人がいるんだなぁと、思います。



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