脱・余白コワイ

広報1年目の頃、DTP(内製)に切り替える前だったのでテンプレートもなく、毎回レイアウトに悩んでいました。

特に苦心したのが、「余白」です。

少しでも紙面に余白があろうものならば、各課からの校正で
「文章を追加で入れてほしい」「寂しいからイラスト入れてほしい」と、
猛攻撃を受けました。たくさんの意見がありました。

必要な情報は検討し、調整を行いますが、ただ余白をなくすためだけに配置してしまうと、情報の優先度がブレてしまい、かつ読みづらい紙面になってしまいます。

今回は「余白」をテーマに、過去の失敗を紹介します。


過去の広報紙で見る余白の失敗

下記の記事は、業者委託時代、ワードで配置し作成してもらったものです。

広報おうじ「王伸」2016年4月号(業者委託)

改善ポイントは多くありますが、「余白」に限って挙げると

  • 記事枠と文章や素材が近すぎるので、窮屈な印象に

  • 余白を怖がるあまり、アイキャッチ素材を置いてしまう。またイラストの個性が強い

  • 4ページ下段の補足記事では太枠で囲う必要はない

  • 5ページの上下の本文では、下段記事が枠内に収まらないことから、苦肉の策で行間をせばめている


また、下記のお知らせページでは

別冊で発行していたお知らせ記事専用号(内製)
  • 全体を面で考えると、3ページの左側がデコボコ(ツラがあってない)。意味のない余白に

  • 意味のない余白を埋めるため、個性(癖)を持つイラストを配置してしまい、全体的に整っていない印象=ダサい


次に、1年目に作成した特集ページですが、当時は毎号見開き2ページしか4色予算がなく、どちらの記事もカラーで載せたいがために無理をした結果、乱暴な紙面となってしまいました。

広報おうじ「王伸」2016年10月号(内製)
  • インパクトを出したいあまり、断ち切りを多用し窮屈に

  • 白い部分が怖いから、写真を透過して配置してしまった

  • 窮屈な場所にさらに情報を追加しようと、文字サイズを小さくし過ぎてしまう

  • 担当課からの資料をそのまま掲載し、読めない文字と見えない地図に

  • そもそも、性質のまったく違う特集2本立てを同じページ内に配置するな

今振り返ると、なんか読みづらいけどどうしたらいいのかわかんない状態だったことがうかがえます。


あらかじめ余白を設ける

内製移行後、ワードやパワーポイント、Adobe InDesignで紙面を作成する際にあらかじめ周囲に余白を設けるようになりました。

特にパワーポイントは罫線を設定し、その中に情報を収め、メリハリを考えます。上司や首長へのレクでも多用しますが、余白を意識して配置すると、必然的に余計な情報をそぎ落とす(引き算)ことになるので、伝えたい・説明すべき点が整理されました。

研修資料もパワポで作成しています

広報紙を編集するインデザインでも設定し、情報を収めることを意識するようになりました。あらかじめテンプレート化しておくと、余計なことを考えずに集中できます。

インデザイン編集画面

行間(行送り)でも余白をつくる

余白は、「レイアウトの空いている白い部分」ではありません。文字やあしらいが入っていない部分はすべて余白と考え、文章にも活用します。

文章が読みづらいと感じるときは、行と行のスキマの設定を見直してください。行間(行送り)が狭いと窮屈になり、開きすぎていても読み手にストレスを与えてしまいます。

  • 行間(行送り):文字サイズの1.5~1.75倍程度の設定

  • 行長(一行あたりの長さ):15~35字程度


「意味のない余白」はストレスのもと

余白自体は読みやすさや視認性を生むものですが、使いどころを間違うと、読み手にストレスと余計な疑問を与えてしまいます。

広報おうじ「王伸」2016年4月号(業者委託)

この号は前任の広報担当が予算特集を組み、業者がデザインを整えて発行されましたが、ところどころに大きく余白がとられていました。

事業の枠に余白を設け、文字を少なくアイキャッチとなる写真素材を設けているので単体では読みやすいですが、さすがに枠1コ分空いている余白や、いかにも何か文字があっただろう場所が空白のため…

「メモか!!」と読者からお怒りの声をいただいていました。

さらに言うと、本来はあった情報が校正や印刷の過程で消えてしまったのでは?と感じられても仕方ありません。余白は情報の整理整頓に効果的ですが、乱暴に使用すると逆効果です。


まとめ

余白は、記事を配置したらできるものではありません。
余白は「つくるもの」です。

意図的に余白がないデザインやレイアウトもありますが、老若男女へ広く情報を届ける自治体広報では、余白をつくったほうが読み手にやさしい紙面になります。

余白がないと情報量は多くなり、各課は喜びます。しかし、余裕のない紙面はギチギチになり、圧迫感や緊張感を与えるどころか、本当に伝えたい人には読まれないでしょう。

各課からの余白への侵攻を防ぐには、余白の必要性を広報担当者が認識し、あらかじめ編集方針として明記し、共有する必要があります。

箇条書きレベルでもいいので、情報を整理整頓し、注目させる効果や、ゆったりとした読みやすい紙面になることを共有してください。

あなたが読みやすいと感じた紙面の多くは、意図的に余白がつくられています。分析し、マネをすることからはじめてみてくださいね。

タイトル周りに大きく余白をとり、視線誘導
この部分は絶対余白!とエリアを定め、情報量過多にならないよう整える
余白は紙面に洗練さや高級感も生む
文字と写真の比率(図版率)に注意し、ゆったりとした印象に
文字や素材をひと固まりと考え、余白で情報を分ける(近接の法則)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?