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ビートルズがやって来る

「そりゃあんた、ビートルズがいいわねぇ♪」

思い返すと間違いなく、担任の先生のこの一言がきっかけなのだと思う。

いじめられっ子で、引っ込み思案で、自信の欠片も無く、いつも教室の端っこでひとり本を読む位しか能のない小学時代の私に、
学校は楽しいところと教えてくれた恩師の先生。
その先生に「先生はどんな音楽が好きなの?」と問いかけた時の答えが、冒頭の言葉。

『ビートルズ』という名前は聞いた事があった。
ただその頃はネットなんて無い時代。今みたいに簡単に検索して音楽を聞くことは出来なかったし、他にも興味のあることが沢山あるお年頃。
「機会があれば聴いてみたい」
くらいの気持ちで、けれどもしっかりとその名前を心に刻んだ小6の冬でした。



そして2年後、私にその機会が訪れます。

とうとうビデオデッキなる物が我が家にもやって来まして。
そしてそれを動かしてみるべく父が知人から借りてきたVHSの中にあった1本、それが
映画「ビートルズがやって来るヤアヤアヤア」。
あの時先生が大好きだと言っていた、ビートルズ主演の映画!

『ビートルズ』ってどんなグループ?

以前から頭の片隅で気にはなっていたのもあり、好奇心でそのビデオをデッキに突っ込んだのが、
そう、全ての始まり。


ジャーーーン!というギターの音と共に押し寄せる女子の波🌊
めちゃくちゃ楽しそうにダッシュして逃げる面々。そのバックで流れるA Hard Day's Night にワクワクが止まりません。

その後も、列車内でトランプしながら無邪気にはしゃぐシーンでの「恋するふたり」

etc...
映像と合いまみれながら流れるその音楽に完全ノックアウト。

中でも大好きだったのが「恋に落ちたら」。


ちょっかい出すスタッフに対して「勝手に楽器触んなよ」的なやり取りでナーバスなリンゴに寄り添う様に始まる演奏シーンも勿論好きなんですが、何よりその曲中での繊細なハーモニーが本当に好きで、
特に一瞬2人の声がユニゾンになったと思ったその途端、これまた絶妙にほんのり不安定な方向へ別れていく箇所。

このお互いの声が出逢いと別れを繰り返していく、どこか切なくて絶妙なメロディラインとハーモ二ーが本当に美しくて、ズキューンとハートを射抜かれました💘
もう、このシーンだけで何百回巻き戻して繰り返し再生したか分からない(笑)

そして言わずもがな、その日から私はビートルズまっしぐら。
…と言っても、当時は中学生。少ないお小遣いですので、簡単にはレコードなんて買えません。
当時の、ネットの無い時代に無料で音楽を楽しむツール、それはラジオ。

地元ラジオ局で杉真理さんがDJされていた「マジカル・ポップ・ツアー」という30分な帯番組に間に合うよう学校から帰るのが日課となり

また『FMステーション』という雑誌を買って、目を皿のようにして番組表でビートルズ関連の特集をチェック✔し、カセットテープに録音。それを繰り返し繰り返し、聴くべし聴くべし聴くべし!

*

そんなこんなで漸く迎えた、待ちに待ったお正月🎍
貰ったお年玉を握りしめ、伊勢佐木町のレコード屋さんへレッツゴー!
その時買ったうちの一枚が

86年発売なモノラル君です。


この「来日20周年記念シリーズ」な、赤い盤のヤアヤアヤア!

店頭には国旗帯の物とコレと両方あったんですが、人間は『限定』という言葉に弱い生き物である事と、何より盤の赤い色が可愛かったので、こっちをチョイス。

その後UKオリジナルなモノラル盤も無事手に入ったんですが、
この赤い子、勿論今も時折聴いています。
音の鮮度は断然オリジナル盤に軍配が上がるんですが、そういう問題じゃあないんです。

初めてこの盤をターンテーブルに乗せた時のトキメキが蘇る、懐かしい音が今もします。

自分に初心を思い出させてくれる、大切なレコード。
買った時も、今も、そしてこの先もずっと、
私の大事な宝物の一つです💎✨

おしまい。

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