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顔自動販売機

「見て、あそこのカウンターで飲んでる人、整形外科で有名だった医者じゃない?」

ユリが冷やかさを溜めた視線の先には男が1人。

顔自動販売機が認可され、一年と持たず整形外科医師は職を失った。
TVCMで有名なクリニックも相次ぎ閉院した。整形大国のかの国では医師の自殺者まで出たという。昔、ゲームセンターにあったプリクラという機械に代わり全国にあるこの機械、発表当時は社会現象化したが今は街角の清涼飲料水の自販機と同じく風景と化した。

その元医師はコップ酒をちびり飲んでは一枚の写真を眺めていた。俺はさりげなく近づきその写真を見て声を掛けた。

「美人ですね」
彼は俺を一瞥し「そうだろ? 俺の最高傑作だ」と言った。
「女優の〇〇に似てますね」
「本人だよ」

ユリもその写真を覗き「あー、これ去年、顔自販機の人気№1だった顔じゃないの?」
ユリの声に店内の何人かの同じ顔が、同じく眉を顰め振り向いた。

彼は苦笑し「顔に著作権はないんだよな」と吐いた。

完410

Just the way you are   Billy Joel


お久しぶりでございます。
お休みしてたお題を追っかけてUPしてます。
お目に留まれば読んでやってください。
なお、文中では女性の顔が対象になっていますが、男女の差別を助長する意図は一切ありません。


たらはかにさんの毎週ショートショートの企画「顔自動販売機」のお題をお借りしました。

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