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人を最善に動かすのは

ショートスティを利用されているHさん。
膵臓癌が見つかったのは一年以上前のことでした。
     Hさんは笑顔でいつも優しくて穏やか。
なかなか完治しない褥瘡のケアをする度に

「こんな場所にできて、やってもらうの申し訳ないです。お世話になります。ありがとう。」

「ごはんは美味しいし、良く眠れました。良くしてもらってありがたいわ。」

愚痴や不満を聞いたことがなくて、いつも口にするのは感謝の言葉ばかり。
そんなHさんは他の入所者さんをはじめ、介護士やナースなど職員にも好かれていました。

     今回の入所では既に悪疫質の状態で動くことがかなり辛そうな様子。
食事が摂れず嘔吐することがありました。
介護士さんには、飲食を数時間中止した後、無理をしないように少しずつ水分補給するようお願いしました。

     仙骨部の褥瘡周りが赤くなってきたので、介護士さん、機能訓練士さんと相談して、使用マットを除圧作用のあるものに変更。体位交換とクッションで良肢位のポジショニングを介助することにしました。
     
   翌朝は血圧がとても低く、口の中が乾いており脱水傾向が伺えました。
 聞くと、夜は水分をわずかしか取れなかったとのこと。
    なので、朝からOS1ゼリーをこまめにとるよう介護士さんにお願いしました。

介護士さんは「1時間に一回補給」と書いた貼り紙をOS1ゼリーにつけて、こまめベッドサイドへ。その甲斐あり、半日後には低かった血圧は徐々に回復。声に張りが出てきて、口の乾きもなくなりました。
  食事も摂れるようになり、少し元気が出てきました。

    そんなHさんは、スタッフに見送られて今日ホスピスに移りました。

     見送りながら、私達にできる一番よいケアを提供できたように思いました。
「なるべく辛くないように、穏やかに過ごしてほしい。」   
   私達にそうさせたのはHさんの人柄なんだろう。   
Hさんはすごいなと思いました。

       
🌱嘔吐時の看護の基本🌱
    直後から2時間は飲食禁止。喉が乾いても飲まない。飲むと胃腸が刺激されて更に嘔吐を誘発することなり、体の電解質バランスが崩れることを招く恐れがある。
      直後は胃腸を休めることが大事。

2時間嘔吐しなかったら、1口だけ飲んでみる。15分後に吐き気がなければ、もう1口飲んでみる。
30分経ってもう1口。それが大丈夫なら次は2口飲んでみる。30分後に今度は3口~
というように少しずつ、量を増やしながらやっていくと、収まりやすい。

これは看護で習ったのではなく、ノロウイルス感染した子供の世話をした時に、医師から教わったことです。
   

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