小川榮太郎本読者メモ

小川榮太郎『徹底検証「森友・加計事件」朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』なる、朝日新聞に裁判を起こされてボロ負けしてる信憑性がとても怪しい書籍の読書メモ。

朝日新聞の見解(地裁と高裁の判決へのリンクあり)

裁判の前に朝日新聞に質問状を出された時の小川榮太郎の回答 ←色々無関係なことをたくさん書いて誤魔化しているが、質問そのものへの回答は、大半は事実の証明を求められていても「修辞的表現」などと無茶な強弁をしてて、これは裁判でも同様だった模様

本題

p.5 一連の報道を「朝日新聞がしかけた」「冤罪と知りつつ」などとしている部分、本書で何度も出てくるが、まったく論証できてない。根拠薄弱な断言。

p.6 2017年の通常国国会(第193回国会)について、北朝鮮のミサイル危機を引き合いに出して「国会ではそれへの対応を議論すべきだったのにそっちのけで野党は森友を取り上げた」という趣旨の記述があるが、同国会では多様なテーマの議論をしており、勿論北朝鮮ミサイル問題も取り上げており、単なる嘘と言ってよい。  参議院審議概要 第193回国会【常会】 〔会期 平成29.1.20 ~ 29.6.18 計150日間〕 同書が指摘する2017年2月14日の北朝鮮ミサイル発射の日の国会では与野党共にその話をしているのは明らか。

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同書は同箇所で、あたかも2017年北朝鮮ミサイル危機が国会全期間の大問題であったかのように書くのだが、ミサイル発射自体は毎年何度もあり、2017年が問題が大きかったのはその後のミサイルの性能が向上してICBM完成の目処が立った見通しが明らかになっていき、7月に発射されたミサイルがとうとう距離がICBMに到達したことであり、国会の開会期間全体や森友が取り上げられて以後がずっと北朝鮮問題の最大限のスクランブル状態であったかのように言うのはそもそもミスリーディングである。

p.15 第193回国会の予算委員会での森友関係の審議時間比率を挙げて批判しているが、国会で開かれる委員会はそれだけではないのでミスリード。安全保障に関する議論は「何一つ行われず」などと言っているがそんな事実はない。デタラメ。

p.20 関西生コンについて、労働運動として会社側に浸透してたヤクザとも争わざるを得なかったとする趣旨の証言(つまり、ヤクザと密着しているのは会社であり、労働者はそれと争わなければいけなかったという趣旨。その証言の事実性はここでは問わない)を引用しながら、なんと関西生コンが暴力団関係者であるかのような事を書いている。引用してる文言が述べている事とまったく逆である。

ここまででのページでも、根拠の怪しい断言が大量に出てきて挙げるのもきりがない。確かに、ルポや概説では、「なぜこのようになったのか、それは何々だからである」のように書いてあってその論証が直接は書かれないこと自体はとてもよくある事。しかし、通常はそれは情報源を秘匿した本人の取材や参考文献における論証に依拠するものだ。本書にそれがあるかとどの程度信じられるかというと、裁判での燦々たる結果を見れば、常識的には信用に値しないと判断されるのが当然であろう。

雑な断言が多すぎて全部を突っ込むのはとてもやってられないので色々飛ばすが、

p.42前後 当時の佐川理財局長の国会答弁を評価している。本書は2017年10月の出版である。小川榮太郎には残念な事だが、2018年に財務省による公文書改竄が明らかになり、森友問題の全体像はどうあれ、佐川答弁には嘘があったことは今では明らかになっている。残念でした。それくらいは本書について訂正や謝罪をする誠意もないんだろうか。

p.100-102 2017年3月23日の籠池証人喚問の日に明らかになった安倍昭恵-籠池諄子メールの中で、2017年3月1日のメールで、辻元議員(当時)が塚本幼稚園の敷地に入った旨籠池が述べたメールについて、事実無根と当時の民進党がアナウンスした案件について、「敷地に立ち入ったのは事実だった」などと同書で述べているが、そんな事実は確認されていない。何の出典も本書には書かれてない。辻元氏「塚本幼稚園に参りました」発言 それでも「侵入していない」理由 2017年03月29日19時07分。何故か本書は立ち入った事実があり本人も認めているとしてそれを封じない朝日新聞がマスコミがどうのこうこと言っているが、根拠を示していない。

p.152から、2017年5月16日にNHKや朝日新聞が「総理の意向」とした加計関連の内部文書の報道を始めた件について、根拠薄弱な推理を繰り広げて陰謀論が花開いていて頭が痛いが、どうもこれらの文書について

1)マスコミはこれを見ても怪文書だと思うはずではないか。何故取り扱った?

2)本物なら国家機密漏洩で国家公務員法違反で罪に問われる可能性があるのにそんなことをやる公務員がいるものか?

などとして、1)、2)より、報道できるわけがないのに騒ぎ始めたのがおかしい、などという珍論を続ける。この文書が本物の流出文書であることは後に確認されたし、また誰も逮捕も起訴もされていない。そもそも、いいことかどうかはともかくとして、内部文書の流出はもりかけだけでも他にも多数あるし(愛媛県の文書も出てきたよね)、他の案件でもしばしばあるのだが。マスコミは信憑性があると判断すれば報道するよね。思い込みの妄想で暴走したことを書いてるけど、まったくもってナンセンスな事しか書かれてない。

p.233から。獣医師需要について。この詭弁は同書以外にもやたら見かけるのだが。「獣医師不足はないというがデータは異なってる」趣旨の主張をしているが、全然論証できていない。散々当時からこのロジックの欠陥は指摘されているが、獣医師不足の地域があるのはそこに行きたがる獣医師がいないからであって待遇が悪いことの方に原因があり、獣医師を増やしても改善しない。まったくの詭弁である。待遇さえ改善すれば偏在、不足は軽減されるのは明らか。

あと、おまけ。


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