「左派が過激化しただけなのに保守/右派が右傾呼ばわりされてる」言説は本当か?
イーロン・マスクが、このように「左派が過激になっただけなのに中道が右派呼ばわりされている」ということを意味する画像を先日投稿しました。これはアメリカでも日本でもこのような言論の変化が起きているということを感じている人は多いように見受けられます。
これに対して、反論をしたのが、G. Elliott Morris
反論のツイートを紹介していきましょう。
グラフのタイトルは「共和党はさらに右に移動し、民主党は左に移動しました」ですが、見るからに、共和党支持層の右傾化の方が顕著です。これは米国連邦議会のSenate(上院)とHouse(下院)の議員に関するものですね。
政党の民主主義がどの程度か。DEMは民主党。GOPが共和党です。近年共和党だけが激変したのがわかります。
縦軸がマイノリティ(少数民族など)の権利(上ほど反対)、横軸は自由民主主義の原則、規範、慣行(上ほど反対)。左下の赤丸が米民主党。右上の赤丸が米共和党。日本の自民党は米共和党の左下にありますね。元記事を読んで世界の各政党と比べてみるとより深くわかるでしょう。これは変化を示す指標ではありませんが。
共和党支持層と民主党支持層の政治的立ち位置。緑が中道。見事に二党の分断はあります。これは変化を示す指標ではありませんが。
この指標での変化だと、変化の度合いは民主党側の方が大きい結果が出ていますが、共和党側ももちろん変わっています。
このグラフだと、二極分化は両党ともに進んでいるが、民主党の方がより先鋭的になったように見えます。
が、ツイート本文が重要です。
このグラフは、例えば民主党支持者が、あるテーマではリベラルであるテーマでは保守的な見解を持っている、といったように「リベラルで一貫してない」か、どのテーマでもリベラルな見解を持っていて「リベラルで一貫している」か、を見てるもので、民主党共和党ともに「一貫」してる人が増えていることを示します。しかし、何を言っているのかわかりにくいですよね。では、少しでも理解を深めるためにそのグラフの出典を見てみましょう。
政治的分極化と成長するイデオロギーの一貫性_ ピュー研究所2014年6月12日
公式の日本語ページがあって便利ですね。
同じ記事から別のグラフを持ってきてみます。テーマごとの党派別のそれぞれのテーマについての意見の変化です。
厳密には項目によって動きは異なりますが、ここに挙げられた項目だけでいえば、どちらかといえば共和党支持層の方が激しく動いた結果両党の見解の乖離が広まった項目が多いのは見ての通り明らかです。
「アメリカ世論の分極化は、どちらかといえば保守派の変化の方がはげしい」ということを示すデータは私はいくつも見てきたので、思い出して探してくればまだまだあるはずですが。他方、じゃあ同じことがほかの国でも観測できるかというと、そもそもアメリカと同等の世論の分断が起きてる国があまりないので、観測が難しいですが、どちらにしても、私が見たことのある各国のデータからいえば、「リベラルが過激になっていったから見掛け上保守派が右傾化したように見える」という現象を裏付けられるようなデータは見たことがありません。
※「アメリカで起きている世論の分断と同等の分断」が起きている国は、西側各国の中にもほとんどありません。大なり小なり類似点があったりはしますが。これは別途論証がないと信用できない人もいるかもしれませんが、この記事では割愛します。いずれにしろ、アメリカ式の分断がそもそも存在しない他国、例えば日本において、その分断の存在を前提にしたような議論はまず成り立ちません。ですので、その時点で日本にも「リベラルが過激になっていったから見掛け上保守派が右傾化したように見える」現象は、あると考える理由はそもそもないんです。
他にも、もっとわかりやすい例で、こんな意見がありますが、まったくもってその通りだと思いますけど。わからないものでしょうかね。
気が向いたら、後日ほかにも資料を加えるかもしれませんがひとまずここまでで。
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