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Road to Adonko 顛末記


〇はじめに

 映画 アフリカン・カンフー・ナチスがAmazonプライムで公開されてから一か月。
フォロワーの「カルディさん! アドンコ取り扱ってください」のツイートに触発されてアドンコを飲みたいと思うようになってしまった。ここから私のアドンコ輸入への道が始まった。これはアドンコ輸入に関する経緯の顛末記である。


〇メール凸

 まず試みたのは、カルディを始め輸入食品を取り扱う店へのメール凸だった。
が、取り扱ってくれる店はなかった。あたりまえだ。知名度も何もないお酒を扱えと言われても、あちらさんにだって色々手続きがあるだろうし、儲かるかもわからない。
 なら、その手続きや儲けのハードルが低そうな条件とはなにか? 私はガーナで流通しているアドンコ以外のお酒を調べ、そのお酒を取り扱っているお店を探した。そのようなお店ならガーナにすでにパイプを持ち、酒を取り扱う資格なども所有していると考えたからだ。


〇A社へ協力依頼

 検索するとガーナのヤシ酒「ヌクレヌ」とそれを扱うアフリカ雑貨販売店A社が見つかった。HPの会社概要には「ホームページに載っていないものでもお探しのものがございましたらご相談ください。」とまでうたわれていた。
 さっそくA社にメールを出したところ、非常に前向きに動いてもらった。ガーナにグループ会社を持つA社はそのつてを使いAdonko社と交渉してくれた。
 しかし、結果はNG。商業的な輸入に必要な書類を入手できなかったとのこと。どうも、Adonko社がアドンコのレシピを秘密にしていて、原料を明かしたがらないらしい。少量の輸入では原材料、製法を記した書類を出してもらうことができなかった。
 書類がなければ輸入販売はできない。そこでA社は届け出書類が不要な個人輸入を提案してくれた。個人輸入であれば書類の提出は不要である。
 個人輸入をお願いしてしばらく経って連絡がきた。結果は出荷NGだった。理由は「日本政府が規制をかけているから」。もう少し詳しく言うと、アドンコが日本の規制に引っかかる恐れがあるため、輸送会社が引き受けてくれないとのことだった。えええ? そんなのってある?
 どんな規制か問い合わせたが、ガーナのグループ会社でのことなので詳細は不明とのこと。A社は真摯に対応してくれたが、残念ながらここでA社経由での輸入は断念した。


〇個人輸入代行

 A社経由は断念したが、十分に納得できなかった私は、もうひとあがきすることにした。そこで目をつけたのが、アメリカの個人輸入代行業者J社だった。ガーナがダメならアメリカならどうだろう。お酒の個人輸入はよく聞くし、ここなら打つ手があるかもしれない。
 しかし、ここでも結果はNG。見積もりを依頼したところ、原料のわからないものは運べないとのこと。聞けばA社で使った運輸業者とは別の業者さんからNGを出されたらしい。
 二軒の業者からNGが出たのならこれは本格的にダメなのだろう。私はここでアドンコの輸入を断念した。


〇アフカン オンラインイベント

 アドンコの輸入を断念してのほほんと暮らしていた私の元にアフカン公式ツイッターアカウントから連絡が来た
「4月30日に劇場公開前のオンライン決起集会をやるのですが、アドンコの輸入について少しお話をしてもらえませんか」
 何を言ってるんだ。劇場公開する映画のプロモーションイベントに素人をしゃべらせる? 正気か?
 なので私はこう答えた「やります!」

 顔を出すのは恥ずかしかったので、簡単にパワポで資料を作り、それを流して原稿を読み上げることにした。
 本番前にはアドンコの代わりにA社から購入したヌクレヌをキメてガーナ分を補給。緊張はしたが、おかげさまで無事にしゃべりきることができた。
 少しでもイベントのにぎやかしになればと思ったが、結果はなかなかの好評をいただくことができたようだ。ベロベロに酔ったセバ監督から公式Adonko ministerの称号をいただくことができたことには感動すらした。(もっとも、その後登壇する人々みんなにminister認定してたので…まあ)
 イベントの後は、私の発表を受けてニコニコ大百科やPixve百科事典のアドンコの項目に私の名前がアドンコ大臣として記載されてしまった。

 さあ、ここで私は困ってしまった。納得がいかない。アドンコ大臣に任命されて、みんなも100%善意で私をアドンコ大臣として見てくれる。
 だが、私は納得がいかない。このままでは「アドンコ輸入に失敗した大臣」としてネットの海にその名を残すことになってしまう。
 実際にそんなことを思う人間はいないだろう。元々無理目な話だったのだ。しかし、それでは私の腹落ちがしないのだ。
 私は政剣マニフェスティアと言うゲームで総理を名乗っている。総理と大臣を兼任する者として「有能だ」と言われたい。褒められて自惚れたい。少なくともどこかの国の環境大臣よりいいじゃんと言われたかった。
 私はアドンコ輸入を再起することにした。


〇輸送会社攻略

 一度は断念したアドンコ輸入だったが、全く打つ手がない訳ではなかった。オンラインイベントの発表で問題点を整理したため、どこがネックか問題点がよく見えていたからだ。
 個人輸入の問題点は輸送会社が取り扱ってくれないことだった。この「輸送会社が取り扱ってくれない」はA社、J社からの情報だった。
 日本政府が規制していると言うので調べてみたが、いくつかはもしかしてと言う項目はあったがアドンコのような薬用酒がはっきり規制されていると言うソースを見つけることはできなかった。この規制されていると言う情報をはっきり確認する必要がある。

 私は直接輸送会社に問い合わせを行った。相手はYAMATO TRANSPORT U.S.Aである。 クロネコヤマトのアメリカさんだ。

「お宅にお酒は運べないと断られたのだが?」
「運べるぞ。大麻と、アロエやバニラが入ってなければな」
 これでようやくピンときた。アドンコの規制とは「大麻取締法」と「ワシントン条約」だったのだ。ワシントン条約は国際法だからどれだけ日本政府の規制を調べても出てこないはずだ。

 続けてAdonko社にメールを出した。
「アドンコに大麻とかアロエとか入ってる? あと11種のハーブってなに?」
「入ってません。アドンコはガーナの原生林から抽出されえた天然ハーブです」
 かたくなに11種のハーブについて明かさないAdonko社。マジでマンドラゴラとかヤベー植物が入ってるんじゃねえかと疑うも、これで規制に引っかからないことが分かった。

 YAMATOにAdonkoのアドレスを送り、生産メーカーに大麻などが含まれていないことを確認した旨を伝えると、輸送可能との返答が帰ってきた。
 このメールをJ社に転送し、現地のYAMATO営業所に輸送OKの許可を取ってもらった。
これで晴れてアドンコをアメリカのネットショップで購入することができるようになったのだ。


〇トラブルは続く

 以前から目をつけていたネットショップのURLをJ社に送り、見積もりと代行を依頼しした。正直、この時点で私は勝利を確信。喜び勇んでJ社にお金を振り込んだ。
 ところが、1週間経ち、2週間経っても商品がJ社に届いたという報告がこない。元々2週間程度かかることがありますと言われていたので2週間は待っていた。2週間後にJ社に問い合わせたところ「受注メールは届いたけど、発送メールは来ていない。自動返信で営業実態がないのかもしれない」との返答。正直1週間発送メールがなかった時点で確認して欲しかったとの思いもあったが、営業実態がない店を指定してしまったのは私自身の痛恨のミスだった。
 すぐにでも他のネットショップに切り替えたかったのだが、「キャンセルすると慌てて物を送ってくる店もある」とのことなので、キャンセル処理をしてから少し様子を見る必要があった。

 その間に同じ轍を踏まぬように対策を講じる。切り替える予定のネットショップに当たり障りのないメールを出してみた。
「あなたのお店で扱っているアドンコにはどんなハーブが入っているかわかるかい?」
「ガーナの11種類のハーブが含まれていると言われています」
 だからその11種類のハーブが何か知りたいんだよ! アドンコのレシピをばらすと死ぬ呪いでもかけられているの?!
 答えはともかく、今度のお店は返信も早く、文面も丁寧だったので安心して任せることができることが確認できた。

 キャンセル処理をしてから数日後、2件目のお店に発注をかけた。前回は銀行振込だったせいでキャンセルが面倒だったので、今回はカード払いを選択。
 カード情報を登録して、予めとっておいた見積内容でGOをかける。さあ、これで後は運を天に待つだけ…と気を抜いたところJ社からメールが届いた。
「クレジットカード会社が、セキュリティのため海外からの決済を制限しています」
 すんなりいかせてくれねーな! おい!
 慌てて別の決済会社のカードを登録しなおす。こちらは無事に使うことができ一安心。
 全部は書いてないが、アドンコ輸入にトライする間はこのような細かいトラブルがほんと多かった。なんか呪いでもかかってるんじゃないかな。ガーナからアドンコを流出させない呪い。ガーナって呪術師がまだ現役らしいし。


〇アドンコ到着

 そしてついに記念すべき6月21日。我が家にアドンコが届いた。心配していた通関もなんとか何事もなく通してもらい、これで晴れて私は正規のルートでアドンコを手に入れることに成功したのである。思い立ってから実に丸5カ月が過ぎていた。
 封を開けると出てきたのは独特な匂いとベコベコのペットボトルだった。心なしか、なんか白い粉もふいとる。まあ、それもガーナ流なのだろう。私はあまり気にしないようにした。

 家の者が寝静まってからさっそく試飲を行う。日本のアドンコともいえる養命酒のグラスを使い、まずは20mlから試した。
 ガーナを通関した印の封シールをやぶり、開栓をおこなう。強いエタノール臭の中にほんのり独特な香りがする。ストレートで舌を濡らすようになめていくと、今まで味わったことのない風味が口内を満たす。独特な味ではあるが、すっきりとしている。
 甘味でも辛味でも苦みでもない。いわゆる五味にあてはまらないのだ。確かにこれはセバ監督が言うように「美しい味」なのかもしれない。つまり、そうやって抽象的な表現しかできないのだ。まさしくアドンコ味としかいいようがない。だが、秋元さんが言うようにまずいとは私は思わなかった。独特な味だが飲みにくい訳ではない。
 一番初めに浮かんできたのは「土の味」だった。コケが生えたような少し湿ったような土に倒れ伏したような香り。ガーナの密林の香りなのかもしれない。
 その後、私の記憶の中でアドンコに一番近い味を思い出すと、癖が強めの芋焼酎が出てきた。
 土や芋。アドンコの味は大地の味。自分にそう納得をさせた。

 何はともあれ、アドンコを味わいたいと言う私の目的は果たすことができた。金額的には少々大きいが、他の人も同じルートを使えばアドンコを味わうことは可能だろう。
 長い時間がかかったが、その間アフカン界隈に話のタネを提供できたと思う。アフカンが盛り上がる一助になったのなら光栄だ。

 アドンコ輸入をセバ監督に報告したところ、大変喜んでもらい、Reichsministerの称号をいただいた。ようやく胸を張ってアドンコ大臣を名乗ることができた瞬間だった。

アドンコ2


〇最後に 「夢はあきらめなければ必ず叶う」

 1月末にアドンコ輸入を思い立ってから5カ月が経った。一度は断念しかけたアドンコ輸入だったが、フォロワーやガーナアーリア人達の応援もあり、最後までアドンコ輸入のために動き続けることができた。
 今回の件ほど「夢はあきらめなければ必ず叶う」と言う言葉を実感できたことはない。

 「夢はあきらめなければ必ず叶う」
 この「あきらめない」と言うのは「適切な対応を適宜打ち出し続ける」と言うことで、ぶっちゃけめちゃくちゃしんどい。
 おいそれ簡単に他人にかけていい言葉ではないと気付きを得たことが今回の収穫と言える。もうこれからの人生でここまですることはないな。うん。


〇謝辞

 応援してくれた、フォロワー達、ガーナアーリア人達、アフカン公式アカウントの中の人、無茶なお願いを聞いてくれたA社、J社、アドンコ大臣に任命してくださったセバ監督。
 みなさんにありがとうとお礼を述べて筆をおきたいと思います。

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