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祇園さん

仕事が終わって帰路につく、家に帰り着くまでの途中に7月のこの時期はずっと太鼓の練習の音が聞こえる。
小さい子が走りまわって太鼓を叩いていて楽しそうだった。大きな音と大きな声を出しながら、真剣に太鼓に向き合う姿が素敵だ。大人も子どもも目の前のその太鼓に夢中になって一心不乱に打ち込む。打音の一音一音が重たく軽やかだ。日中はあんなに日が照ってすごく暑かったのに日が落ちて沈んでしまえばすこし涼しくなる。夕日が沈んだ後の空の青は澄んだ青だ。気持ちのいい太鼓の低音、涼しい風に吹かれながらゆっくりゆっくり歩いている。この時間は毎年ほんのわずかなだけどいいなーと思う。泣いたり笑ったりするのに疲れてしまった赤ちゃんがお母さんの腕の中で太鼓の音を聞きながらこっくりこっくり寝ていた。急に暑くなったことで体力を奪われた私たちの体に心地よく響く音。家に帰り着いてから自室まで練太鼓のが風に乗ってよく通り、聞こえてくる。からっとしていて乾いたあの丁度いい音色の太鼓をすこしでいいから叩いてみたい。小学校のときにすこし叩かせてもらったような断片的な記憶がある。大人のも子どもも太鼓を精いっぱいに叩いてたのしそうだった。むかし私は戸畑祇園山笠で、お昼間の暑い日に子ども山を子どもみんなで押して引っ張って動かした。汗だくになって弟と一緒にラムネを買ってもらって飲んだ。甘くて冷たくておいしくてラムネのビー玉に光が入ってキラキラして綺麗だった。戸畑祇園山笠で飛幡八幡宮から見える提灯山笠と花火を今も思い出す。屋台の光が眩しくてよく見えなかったけどあのときすでに眼が悪かったんだと思う。視力が良くなかった。眼鏡を作ることになる直前の小学校1年生の夏休みだったような気がする。山笠の絵を筆で描いた団扇が売っていてお祭りの時に買って、持って帰ったのだけれど飲んでいた飲み物の水分が団扇についてしまって提灯の赤色が手について、血みたいになったーと父と母にはしゃいで話し、騒いでいた。暑い暑いと私がいうのでいちごのかき氷を食べて、花火が上がるのを待っていたあの時間を今も思い出す。高揚感に溢れて花火を待っていた。周りにらたくさんの自分より背の高い大人がいて花火がなかなか見えないのでおんぶとか肩車とかを何度もしてもらった。無邪気なあの頃に戻りたい。

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