サコッシュと外読書〜ノーマン・マクリーン「マクリーンの川」
サコッシュに本を入れて、買い物に出るようになりました。ひと気のないところを見つけては少しだけ読書。おもてで本を読んでいて、風が頬を撫でたりすると、テントサイトで読んでいる気分です。
この時期を無事に抜けきったときに、しるしが残るよう、普段とは違う本を選んで読むようになりました。
「マクリーンの川」はアウトドア・エッセイの中では広く知られている本です。原題の"A river runs through it"の方が知られているかもしれませんね。
釣りをしないわたしには、なかなか手が付けられない、積ん読のひとつ。作者のノーマン・マクリーンが書いた本は多くなく、日本語に訳された本は3冊しかありません。そのうちの2冊はレンジャーのお話。ハイキング好きにはたまりません。さあ、釣りの本…どうでしょう。
"In our family, there was no clear line between religion and fly fishing."
「わたしたちの家族では、宗教とフライ・フィッシングのあいだに、はっきりとした境界線はなかった」−集英社・渡辺利雄訳
素敵な始まりです。
「おやじが話してくれたところによると、キリストの弟子たちはみなフィッシャーマンであり(中略)なかでも、わたしたちがひいきにしていたヨハネは、ドライ・フライによるフィッシャーマンだと、わたしたち、つまり、弟とわたしは、勝手に思い込んでいた。」
なんと面白そうな家族だこと。
釣りの描写こそ多いものの、アウトドアが生活に近い家族の話がひとつの軸として進みます。
この本が出たのは1993年。若い頃よりも家族への思いが強い今読むと、身につまされる思いです。
特に次男であり、ハイキングに明け暮れている身としては、もう、「ごめんなさい、ありがとう」しか出ません。
原作の"A river runs through it"には、表題作とともに、2篇の短篇が入っていて、日本語版は「マクリーンの森」として出ていました。原題"USFS 1919: The ranger, the cook, and hole in the sky"とあるように森林局で働く著者の思い出が語られます。
こちらも外読書にはおすすめです。
Stay homeが基本だからこそ、外に出る一瞬を大切に感じます。ひとが集まる場所や時間をさけながら、本をすこしだけ読み進め、ひとりでする深呼吸が美味しいことったら。