ハーマン・メルヴィル「白鯨」

 初めて入った古本屋さんで偶然見つけた「白鯨」。ハードカバー版を見るのははじめて。訳者のお名前が表紙には書いておらず、誰かしらと奥付を見たら、なんと野崎孝さん訳。鼻血が出るかと思った。白鯨は翻訳家によって、かなり文章の雰囲気が異なり、それぞれの訳者によって読む印象は変わってくる。文学の始まり頃の作品であり、内容自体が型にはまっておらず、とりわけ冒険小説的に読んでしまうと苦労する。それは「森の生活」をアウトドア暮らしの本として読むようなもの。

94年に「世界の文学セレクション36」のいち部として出ただけで、文庫化されていなかった。勿体ない、中央公論社。

メルヴィルは1819年生まれ。ソローより2つ若く、ほぼ同時代。白鯨が出版されたのは1851年。人々が「自然」を意識し始める頃あい。

マサチューセッツ州ピッツフィールドに引っ越したメルヴィルは、すでに作家であったホーソーンに出会う。ピッツフィールドはマサチューセッツ州最高地点のグレイロック山の南にあり、メルヴィルは山の大きさに鯨を重ねつつ、「白鯨」を書いたと言われる。
ちなみにピッツフィールドの隣町はATのトレイルタウン、ダルトンがある。ATハイカーもメルヴィルと同じ景色を見ながら歩くのに、わたしは次のリサプライのことばかり考えていて、あっという間に過ぎてしまった。