マルチパーパスアイテムについて考える~持たない喜び

 何を削れるか考えるのが楽しい。少しでも軽い装備を選ぶことも良いのだけれど、そればかりやっていると、わたしは「軽量ギアを持ち歩く係」になってしまう。道具は主になってはならない。なにより、「持たないひと」になりたい。持っていかないなら、重さを100%カットできる。旅はわたしのものだ。

 ひとつの道具をいくつもの役割で使えると、道具を使いこなしている気がする。例えば、日本手ぬぐいなんて優秀だ。速乾性タオルとしてはもちろん、バンダナにも鍋つかみにも、マフラーにもなる。温泉に寄るのも安心のパートナー。

 VARGOのBOTは、ここ数年ではベストな発明品だと思う。ボトルとポットを合わせてしまったのだ。鍋はいつも連れない。食事のときしか相手にしてくれない。もっと仲良くやっていきたい思うのに、いつも背負われている。

 BOTはポットにねじ切りがしてあり、ふたを締めることができる。常々、「ナルゲンのボトルが金属にならないかなぁ」と思っていたから、ATのトレイル・デイズで発見したときには狂喜乱舞してしまった。VARGOのブライアンに「これぞ探していたものなんだ。町で買ったコーヒーをトレイルに持っていける」と。

興奮のあまり物理の特性を忘れていた。温かいものを入れて、ふたを締めた場合、温度が下がると空気が縮まってふたが開かなくなるのだ。ジャムを瓶詰にするときと同じ。 

 そして、チタンのボトルにお湯を入れたら、もはや表面はお湯。立体的なお湯。把手がないから、熱くて持てない。入れられるのはアイスコーヒー。手がかかる子だ。

 それでもお湯を沸かせるかけがえのない機能がある。なのに、実際にお湯を沸かすときにも少し厄介だ。ボトルと鍋が兼用だと必要な水量を沸かすのが難しい。例えば500ミリリットルを沸かしたいときに、BOTに水が1リットル入っていては、水を捨てるなり、どこかから追加するなりしなくてはならない。結局のところ、もう一つカップやら水筒が必要になる。2つの機能を合わせたのに、さらに手助けがいるなんて…。あいやー。

 二人いるならもう一人のボトルで水を汲めばいい。ソロならどうしたものかと、右往左往した挙句、切なくなる。「………パートナー、ねぇ」

 重さは本体が102グラム、ふたが47グラム。合わせて149グラム。ナルゲンの1リットルボトルが179グラムあることを考えると、まぁ、軽いのかなぁ。いやぁ、重いだろうな。プラティパスとチタンカップを合わせても100グラム未満。それでも、アイテムの点数が減ると心理的負担が減る。たいせつ。こころは軽くなる。そうさ、ひとりでできるもん。何度も、水を汲んで来たらいいさ。

 そういえば、カトラリーを忘れてペグでご飯を食べてことがある。衛生面はもちろんアレだけれど、舌触り?がだめだった。残念。予備のペグが活用できれば革命的な軽量化だったのに!(8グラム/本だけれど)