【祝!プリメーラ残留】CAオサスナ 19-20後半戦振り返り②CMF編

こっちは前置き無しで、さくっと。

CMF セントラル・ミッドフィルダー

6 Oier Sanjurjo オイエル・サンフルホ

(34)

チームを敵の攻撃から守る盾として、時には鋭く敵を突き刺す矛として、時には相手のゴールをお膳立てする秀明として縦横無尽の活躍を見せた我らがキャプテン。おじさんはとにかく元気であった。

なんだかんだ守備的なMFとしてはチームで最も守備範囲が広いのでカウンターの芽を潰すのに一番役立っていたし、ボランチの位置からスルスルっと上がってチャンスに絡んで得点機会を演出する場面はシーズン中に何度も見られたし、ゴールも2つは決めている。シーズン終盤には無理な位置から上げたクロスがアルナイスのリーガ初ゴールに繋がるなど、計算では出せない凄みがあるのもベテランらしい。本当によく働きました。

シーズン中はダブルボランチとかアンカーとかインサイドハーフとか色々やったけど、やっぱり攻守にダイナミックに絡めるダブルボランチの右が1番合っているみたい。Box-to-Boxとはまた渋い響きである。

34歳としては元気すぎるほど元気だが、弱点というか現象として、後ろ向きでボールを受けたままプレッシャーを受けた時に何とかキープしようと一瞬踏ん張ってそのまま分捕られるとかバックパスして奪われて失点、という場面がよく見られるのがやや気になる。そういう時は、もうなんか真横でいいから思いっきり蹴っ飛ばして欲しいのだが。

とはいえ、なんやかんやで20-21も数多くの試合に出場するであろうし、まだまだ後進に道を譲るには早い。もしチームがこのまま上手いこと強くなっていけば、もしかしたら3年後あたりにELに出場しているかもしれない。その時にオイエルがキャプテンマークを巻いて、18-19のようにトロフィーを掲げている姿を見るのが、極東で見守る一ファンの密かな夢である。



27 Jon Moncayola ジョン・モンカジョラ(22)

まさに超新星。昨シーズンはテルセーラ(4部)でプレーしていたこの若者が、まさかプリメーラで主力として即チームに定着するとは誰も思うまい。

対人守備力の高さはもちろんのこと、埋めるべきスペースをきっちり埋める認知力と勤勉さが素晴らしい。またダブルタッチで相手のプレッシャーを躱すようなテクニックもある上に、それなりに強いフィジカルと足の速さを活かして、中盤からドリブルでボールを運んでしまえるのはオイエルには無い武器なので、まさに新世代として大いに期待できる逸材。ミスパスを奪ってそのまま独力で運んで点取ったりも出来るし、右サイドバックで出ても本職と比べて遜色ない働きをしてのける。まあ、右サイドバックで使うにはちょっと勿体ないが。

とはいえ、ボールタッチやボールを受ける動作、何より組み立てのパスに関してはまだまだ改善の余地があるが、それは言い換えれば更なる可能性を秘めている、ということに他ならない。オサスナの輝く未来がここにある。

20 Darco Brasanac ダルコ・ブラサナク(28)

セルビア語に詳しい人が正しい発音を教えてくれなかった。絶対「ブラサナク」ではないのに。

名前の読み方はともかく、シーズン当初は「テクニックはあるけどドリブルで抜けるわけでもゲームメイクが出来るわけでもなく、帯に短し襷に長しとはこのことか」なんて考えていたが、ロングボール主体のスピードサッカーの中ではピッタリハマった。特に攻守の切り替え時に置いて威力を発揮し、サイドに流れて左足でクロスを上げるのも大分上手くなった。この人もしっかりシーズンの中で成長しているんだね。

基本的には4-4-2のダブルボランチの左だったが、FWが怪我とサスペンションで軒並み居なくなったシーズン終盤では4-4-2のトップと4-2-3-1のトップ下を行き来するような位置どりが多くなっていたが、ボールも収まらないと言うほどではなかったし、そうも悪くは無かったんじゃないでしょうか。20-21には見たくないが。

対人守備が凄く強い方でもないが、セットされた守備組織の構築においてもしっかりチームと噛み合う動きを見せており、来シーズンも主力として期待が持てる。あとはショートパスで相手を動かせるようになると尚良しだが、流石に求め過ぎか。何はともあれ、成長する人を見るのはやっぱり楽しいものだ。

21 Iñigo Pérez イニゴ・ペレス(32)

ショートパスで攻撃を組み立てられることの素晴らしさ・有り難さをしみじみ感じさせてくれた、オサスナ唯一のショートパス・プレーメーカー。

この人が味方とパスで連携を取り、左サイドの相手DFを動かして作ったスペースへ駆け抜けるエストゥピニャンへ送るスルーパスが美し過ぎて何度も泣いた。「そんなに見たいとは思わないな」とかふざけた事言ってマジでごめんなさい。

ダブルボランチの左や左インサイドハーフでそこそこの出場機会を得たが、たまに左サイドハーフや左サイドバックに駆り出される事も。どこでプレーしても常に一定以上の質を担保してくれるあたりが非常に頼もしい。鋭く美しいミドルでゴールも奪えるし、ドリブルで相手守備組織の間を駆け抜ける事も出来るし、まあ守備力はメリダ様とどっこいどっこいなのだが、それでも十分お釣りが出るレベル。ほんと、よく怪我するところを抜けばめちゃくちゃ良い選手なんだけどな。

34 Aimar Oroz アイマール・オロス(18)

タホナールが生み出したナバーラの至宝。今シーズン最後のマジョルカ戦で初出場、出場時間は数分のみだが、その短時間の中でアシストを決めかけ、才能を世界中に晒してしまった。まあ自身のファールでノーゴールになったのだが。

来シーズンもプロメサスに帯同するのか、レンタルに出るのか、トップチームに食い込んでくるのかはまだまだわからないが、密かに期待。いつかまた近いうちにトップで見たい選手である。

とはいえ、プレースタイル的にほぼ完全なパサー型トップ下のこの人が4-4-2を基準としたロングボール&カウンターのサッカーにおいてどのような価値を見せてくれるのかは正直全く見当がつかない。今後の動向に要注目。


35 José Hualde  ホセ・ウアルデ(22)

再開後にメンバー足りなくてプロメサスから駆り出されたうちの1人、その中で唯一トップでの出番無し。来シーズンは出られると良いよね。


8 Fran Mérida フラン・メリダ(30)

奇跡のプリメーラ昇格プレーオフ制覇を果たして挑んだ16-17、そのシーズン初めにフラン・メリダはやって来た。その男はバルセロナで育ち、名門アーセナルへの移籍を果たしたが出場機会に恵まれず、イングランド、ポルトガル、スペイン、ブラジルを転々と渡り歩き、そしてそのいずれでもまたチームの主力と言えるほど試合に出られず、やがて再びスペインに戻り、セグンダBのウエスカに所属。そこでは見事セグンダAへの昇格に貢献し、プロ人生で初めて1シーズンのうちに30を超える試合に出場。シーズンの終わりにウエスカを離れ、再びプリメーラの舞台に返り咲いた時、まさにその時がオサスナとフラン・メリダの出会いの時であった。

16-17、身の程を超えた奇跡の代償なのか、屈辱的な成績で降格に甘んじたシーズンの終わり、この男は移籍しなかった。多くの主力選手がオサスナを離れていったが、この男はセグンダでオサスナと共に戦う事を選んだ。そして、チームの中心になった。

2020年の夏、フラン・メリダがクラブを去る。オサスナを降格から救えなかった選手の一人としてではなく、オサスナをプリメーラに昇格させた功労者の一人として、見事に10位で残留を成し遂げた英雄の一人として去っていく。

フラン・メリダは魔法使いだ。魔法を使って、軽やかにボールを扱いプレッシャーをかわす。敵陣サイドの奥深くにピンポイントのフィードを供給する。ファンに歓喜を与えてくれる。ゴールの無かったエンリク・ガジェゴにアシストを付けて自信も与えた。何より、チームに勝利をもたらした。

チームメートに愛され、ファンに愛された。最後の試合でオイエルからキャプテンマークを渡された。交代でピッチを出る時、ロベルト・トーレスの腕にキャプテンマークを巻き、抱擁を交わした。試合が終わり、胴上げされた。クラブの100年目を祝うシャツを最初に受け取った。シャツには背番号8の書かれたゼッケンが縫い込まれていた。

「魔法のような4年間だった」と彼は言う。オサスナに関わる全ての人にかけられた4年分の魔法は未だに解けることはなく、魔法が解かれることもなく、ただナバーラの人と時空に魔法をかけたその人だけが去り、我々は魔法と一緒に置いてけぼりだ。これからきっと、「8」という数字を目にする度に彼と共に過ごした時間に想いを馳せる事になる。

Gracias Fran. またどこかで、必ず。


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