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小さな食堂の店主。ママと呼ばれてママになる。

「ママ、ビールちょうだい」

はじめて、知らん人(お客様です)から「ママ」と呼ばれて、戸惑ったけれど、ちょい、嬉しかったことを覚えています。

多分、夜の世界で遊び慣れている人なんだと思います。

最初にそう声をかけた男性のことはよく覚えています。もちろん、常連さんになられたからでもありましたが。すらりとした男前の若社長。

でもここは、小さな食堂で、「フリフリチキン」と「サラダ」くらいしかありません。それをおいしそうにお酒でちびちび召し上がって、次々にお友達を紹介して連れてきてくださり、いいお客様です。

わたしなど、こんな小さな「食堂」で中年女の「一匹女将(いっぴきオカミ)」。これまでは「ちょっとすいません」と、名前なしで過ごしていましたし、もちろん、「ママ」も名無しには違いなしですが、親近感が全然違います。しかも、一人が「ママ」と呼びかけ始めると、店内の皆が「ママ」と呼ぶようになって、

「ママ、ありがとう」「ママおかわり」「ママご馳走様」
「ママーこっち!」
「ママー?」
「ママ」

あっちこちから。みんながそう呼んでくれて、なんだか、高級クラブのママになったような錯覚が起こるのでした。いい気分。

必ず「ママ~」と入ってくる方は、ご近所さんの70代の男性医師や福岡の個人事業主、山口県の電話会社社長、明石市の女性医師、三宮のバーのママ、ゴッドハンドを持つ整体師さん。男性からも女性からも「ママ」と呼ばれ、だんだん、わたしもママの自覚が生まれて、「ママ」になっていった、ならせてもらった感じがします。

「ママ」の自覚って、何でしょう。私の場合ですが、お店にいるお客さんへの「愛」です。「ママ」と呼ばれた途端、ハッとして、その方へ向けて胸の辺りから「愛」生まれそっちに飛び、わたしはママに「変身」する感じなんです。これは「母性本能」なのかもしれないです。はい、あなたのママになりますよ、あなたを守りますよ、任せなさい、欲しいものを言いなさい、的な気分になります。

昔、30代~40代の頃、「料理教室の主宰」をしていた時は、「先生」と呼ばれた時期があるのですが、その時より「ママ」の方が嬉しい。

みんなそうなんかなぁ。知らんけど💦

つづく




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