星の砂

すぐに寝付けなかった次の日、右目が二重になる。厳密にいえば二重どころではなく、六、七、それよりもっと重(え)の日もある。ふだん奥二重なのに、と思いながら鏡のまぶたを数える途中で、こんなの砂を数えるのと同じだと気付いて、なぜか止めていた呼吸を再開した。女は星の数ほどいるというが、あれは死んだ人の数も入っていて、これから生まれてくる人の数は入っていない。
奥 二重(おく ふたえ)という名前の女性。
奥 二重(おく ふたえ)という名前の女性は、足を折り曲げて眠る人物だった。
昔、母親によく、丸まって眠るなと叱られた。背が伸びなくなるから。確かに、期待していたよりも10㎝低い場所で身長グラフは傾くことをやめた。母親の忠告はきいておくべき。
エッチな夢を見た日がある。階段の下にエッチなものがあるので、走り出した。走り出したが、なかなかたどり着けない。向かい波と船、腹痛と運転間隔の調整、いつもと逆の腕に時計をつける場合。もどかしく、もどかしいまま夢の放送は終了。いっつも次回予告しないよね。その日の右目は、一重だった。
数年後、足を折り曲げて眠ると、夢の中で体が動かなくなるという情報をテレビで見た。母親の忠告は聞いておくべき。来週はその番組、竹富島の特集だって。

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