ショートフードエッセイ『紅茶に解けて』
子供の頃、朝は紅茶だった。
紅茶とトースト。これ定番。
紅茶とスイスロール。これは特別。
たまに買ってもらっていた名糖の粉末アップルティー(缶入り)は格別。
甘い甘い紅茶を飲みながら、ハムチーズトーストに齧り付く。美味しくて、朝から元気になった。
実家にいた時の夜は、父のウイスキーや、余って忘れられていた製菓用のブランデーの瓶を引っ張り出して、紅茶にちょろっと入れて香りを楽しんだりしていた。
実家を出てからは、ウイスキーもブランデーも買うことはなかったので、朝も夜もアールグレイを飲んでいた。
加えて今はいろいろなフレーバードティーがあって、嬉しい。フルーツ、ナッツ、スパイス、シャンパン、ラム…
もちろん、シンプルな茶葉の香りも大好きだ。
先日、主人のウイスキーを拝借して、久しぶりに紅茶にウイスキーを垂らして飲んでみた。
湯気にとけたウイスキーと紅茶の香りに、ギチギチになった気持ちがするすると解ける音がした。