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#24 俯瞰

初秋の朝、今日はいつもよりかなり早く目が醒める。さっぱりと、気怠い感慨が体を幽かに痺れさせ、夏より冷たくなった水道水が顔を打つ。紅茶のあたたかさが体のあたたかさへと変換されてゆく。一日が、始まる。

 秋の青空は高く、何者をも抑圧しない。全ての人は一日を一日であるように過ごせるだろう。秋晴れの朝の空は、その下の全ての物に希望を与える。と同時に、どこかにある絶望を覆い隠してしまう。それはきっと単に絶望するよりきっと恐ろしいことに違いない。

 私は右足を前に出した。左足がそれについてくるかはわからない。そして私は、秋の途轍もない日差しが焼き付く歩道を、引き摺るようにして前へ進んでゆく一つの物体。