#35 書評・『サロメ』Oscar Wilde
耽美は時に退廃的に語られる。美しさに溺れ、愛に窒息する、「性」がそのまま「生」のエナジーであることもある。本作『サロメ』に限っては、そういった耽美派の呼吸が息づいているように思える。そしてそのような作品に取り巻く非現実の幻惑は、著者のWilde自身が偶像として抱えていた夢幻と重なり合う。
「魔力」の刃 恋の「魔力」という言葉がある。恋愛における説明できない衝動、エネルギーを超越的な「魔」の力がそこには確かにある。ユダヤの王女サロメは、宴にて王エロドからの視線に耐えかねて禁