2023年リリース・聴いた曲各10選

連日記事を書く人間になっていますが、本日も音楽の振り返りをやっていきます。

2023年リリース曲10選

1. NEO / じん

プロセカ3周年アニバーサリーソングです。
じんのプロセカ書き下ろし曲としては「ステラ」に次ぐ2曲目ですが、引き続きあまりにもじんすぎて最高でした。1番と2番とで雰囲気や展開もドラスティックに変化して、絶対にリスナーを飽きさせないという意思を感じました。

1番Bメロが最近のポップス感をだいぶ感じて、(ボーカルが切り替わってるというのもありそうですが)、「あぁ 時代がワープして~」と「ないだろう だったら泣き喚こうぜ~」の部分で2段構えになっているのが令和時代のポップスだな~となりました。Bメロ7小節目で次の展開に突入するので、マクロなリズムの取り方としても変化があってかなり嬉しいです。2展開目のメロとコード的な面白ポイントとしては、じん特有の「ソドレドミードドー」というメロでハーフディミニッシュから始まって、IVm7のサブドミナントマイナー上で「ミ♭ーレドー」のメロが続くのが非常に嬉しいです。ステラでもそうですが、436の進行で4をサブドミナントマイナーにするのにハマって
そうな気がしています。

ボカロ曲に特有のメロをかなり詰めまくる感じが集合曲になるとめちゃくちゃ映えるな~というのもかなり感じました(ところでプロセカキャラのソロバージョンもどんどんリリースしてほしすぎ)。

2, 涙の跡 / なつめ千秋

2023年のVocaDuo作品で一番お気に入りの楽曲です。作曲者のなつめ千秋さんのことを恥ずかしながら全然知らなかったのですが、青春テーマの楽曲でかなり技巧的なメロやコードの動きも取り入れながら、めちゃくちゃ自然に聴ける作曲になっていて尊敬しまくりです。はやくなつめ千秋さんみたいに作曲上手くなりたい~!

作曲の好きポイントとしては、まずAメロのI - IVm - IVm/bVII - bIIIの進行で、Iのあとにすぐ短三度上に部分転調するのがあまり見かけないタイプで面白いなと感じました。サビはもうすべてが好きすぎるんですが、入りがまずIVmを経由するタイプの136になっていてだいぶ嬉しかったです。折り返しからIV - IVm - IIIm - bIIIでaikoに代表されるような平成Jpopぽさも感じさせつつ、そのうえでメロディラインも「ドシシ♭ラ」というブルーノートスケールのドからの順次下降になっており、さらに「ラーミミー ララ♭ーミミー」と続いて、この部分もブルーノートスケールを擦ってくれているので、切なさが倍増されていて最高でした。この部分の歌詞が「たった一瞬でもあなたの光になりたかった」となっていて、ボーカルの陽月るるふさんの「あなたの光になる」という活動方針まで含まれているのもめちゃくちゃ素敵だなと思いました。

編曲に関してもいろんな楽器奏者さんが参加しており、どの音も最高すぎでしたし、MVも手書き(?)アニメーションまでついていて、クオリティが高すぎて感動しまくってました。

3. Every Day, Every Night / Arukotonaikoto

星 銀乃丈さん作詞作編曲の楽曲。架空の日常系(?)アニメのEDだそうですが、イントロから作品のセリフで始まることで、アニメ作品のEDとしての納得感がめちゃくちゃ強調されていて最高でした。

星 銀乃丈さんの作るアニソンのストレートに入ってくるメロディラインやコードもさることながら、めちゃくちゃ歌詞が良くて、この曲でいうと「流れた星が天球を回せば」という言葉遣いが綺麗すぎて、かつ主体の置き方や動作の着眼点も面白くて、ただただ尊敬するしかないです。

展開的な面白ポイントとして、Aメロ終わりからBメロ入りにかけて、1小節追加されることでBメロ入りに対する長めのアウフタクトが作られていて、Bメロのエモさが引き立てられているように感じました。サビの入りと折り返しからとでコード進行も変わっていて、2回目でII7sus4を経由することで意外性も出つつ、続く5→6への展開の溜めにもなっていていいなと思いました。

4. クラクラ / Ado

2023年秋クールに放映されていた『SPY×FAMILY SEASON2』のOP曲です。
菅野よう子さん編曲の曲にしてはかなり最近のポップスっぽい仕上がりになっているように感じました。Adoさんも歌うますぎる。

展開的にBメロが2段構えになっていて、「常識・劣勢・裏の裏~」と「狂ったストーリー~」とで大きく色を変えているように感じました。後半部分でボサノバ的なリズムの取り方になって一旦落ち着かせることで、サビがそこまでデカくならなくてもよい設計がなされているように感じました。こういう楽曲だと割とブラスだけでなくてストリングスも入ってきてもおかしくないなという感じがしましたが、Bメロの設計的にはサビでブラスだけでも盛り上がりとして成り立っているように聴こえて、中高域の音数が渋滞しないぶん常に視点がボーカルのAdoさんに向かうようになっているところが凄いなと思いました。

5. While We Walk / 水瀬いのり

今年リリースしたシングル『スクラップアート』の3曲目。
木管系の楽器とアコギやピアノのアンサンブルが特徴的で、ファンタジー系のアニメのEDになっていてもおかしくないなと感じました。

この楽曲はとにかく特殊な小節の区切り方になっていて、音楽って生き物だなというのをめちゃくちゃ意識させられました。ワンコーラスの展開としてA1(12小節)→A2(4小節)→B1(7小節)→B2(6小節)→サビ1→サビ2に聴こえて、小節数の割り方で楽曲を魅力的にできる可能性を感じました。

コードワーク的におもしろいなと感じたのはB2の部分で、短三度上で#IVm7-5 - II7 - IVM7 - IIIとなっており新しいなと感じました。

サビがめちゃくちゃ感動的で、ショートディレイのかかったデカいキックとデカいクラップがなるだけでめちゃくちゃエモさが引き立てられて嬉しいです。水瀬いのりさん自身がかなり音域として低いところまで綺麗に歌えるタイプの歌手で、メロディのレンジ的に大きくサビで動かすことによってもめちゃくちゃ感動的な展開を演出できるのが凄いなと感じました。

6. 呼応 / 蓮沼執太フィル, xiangyu

展開厨もニッコリの多展開楽曲。
今年リリースのこの楽曲は繰り返されるメロディと歌詞がいろんな楽曲アレンジの中で登場することでその意義を変容させながらめちゃくちゃ楽しめる楽曲になっています。
この曲は多く語るよりはまず聴いて体験してほしいタイプの楽曲なので以上です。

7, Light The Light / Midnight Grand Orchestra

Taku Inoueと星街すいせいによる音楽ユニット「Midnight Grand Orchestra」の2枚目のアルバム「Starpeggio」の1曲目。アルバム全体を通してTaku Inoueのアーティストとしてやりたいこと全部やった感が凄くて、明確に時代の数手先の音楽を作れててマジで尊敬しまくりです。

イントロのグリッチとピアノから世界にめちゃくちゃ引き込まれて、6/8のリズムの中で4つ打ちになったり、ドラムンベースになったりと自由自在に展開を変容させながらもめちゃ聴ける曲になっていて、音楽の自由さと自由性を広げるもととなっているアーティストとしての技量にめちゃくちゃ驚かせられました。はやくイノタクになって好き放題な展開をやりつつリスナーを納得させたい~!

星街すいせいさんはもはや当たり前かのようになっていますが歌が上手くて、難しい楽曲でも軽やかに歌いこなすからこそTaku Inoueが大暴れできるんだよな・・・!(後方腕組P面)となっています。

8. Bassika: Act1

Inspectedに所属していた音楽グループであるところのEckleの解散後、ソロ活動を続けていたTutara Peakさんの1曲。

アコースティックなサウンドにUK Bass Music由来のリズム隊とベースが組み合わさることで全く新しい最強のサウンドが成立していて凄すぎです。ポストロックやメタルに由来するようなタッピングフレーズや、シューゲイザー由来のデカい展開などもあって、ポストロック・シューゲイザー愛好家的には大満足です。

Eckle時代の曲が好きすぎて、ソロになってから物足りなさを感じていましたが、この一年間のすべてのリリースが自分に刺さりまくりでした。Footwork/Juke的なリズムが特徴の『Gold In Autumn』もマジでいいので是非聴いてほしい~!

9. sinkholes / defsharp

カントリーロックやブルース的な入りからどんどんデカくなっていって最後は大優勝の展開になるという最高の多展開楽曲。ギターの音は本当に歪ませまくればまくるほどいいし、ギターに関わらず全部歪ませた方がいいなと思ってしまうくらい音を歪ませるのがうますぎる・・・!
最後明るくなって終わりかと思いきやもう1展開待ち構えていて満足度が高いです。是非聴いて確かめてほしい~!
この曲がいいなと思ったら是非「to get older」も聴いていただきたい。

10. 人マニア / 原口沙輔

ニコニコで今年一の話題作。かいりきベアさんを感じさせる楽曲展開に対して奇抜な音割れサウンドデザインをぶつけつつ、声ネタや効果音の入れ方はめちゃくちゃ音MAD界隈の人みたいな、全体がニコニコ動画みたいな曲(誉め言葉)でマジで最高でした。最後メロで終わるのかと思いきやベースドロップみたいな展開が待ち受けていてかっこよすぎでした。

2023年に聴いた曲10選

ここから後半戦です。リリース10選に入れ逃した曲だけどどうしても入れたかった曲や、マジで2023年に聴いてよかった曲を挙げていこうと思います。

1. MORNING GLORY / 豊崎愛生 (2021)

休日の朝に聴いてほしい1曲。作編曲作詞がさかいゆうさんで、さかいゆうさんの書くゆったりとした楽曲がマジで好きなんですよね。

Bメロは「少し先の未来で 占いも変わるかな」の4小節とかなり短めのなかで、かなりマイナーな部分転調の動き方を取り入れつつ、サビにその分たっぷり尺を使っていてかなり嬉しいです。サビの折り返しから4536の途中で736がカットインするのがめちゃくちゃいいです。サビのメロディラインがすごくよくて、「誘いに」「得意で」の部分のメロディが「ソシーソ」となっており、、シ→ドの傾性的にドに行きたくなるところを溜めて、736の部分で「ソラシシーラシドー」と一気に解放されるのがかなり気持ちいいです。

2. 生命体 / 星野源 (2023)

今年リリースの楽曲で、リリース10選の方には入れなかったですがかなり聴き倒したし弾き倒した楽曲なのでこちらで紹介します。
とにかくコードワークが泥臭くかつ奇抜で、最初のIですら装飾音として#11thが入ってきており、理想じゃなくて本当に実在する生命を表現されているように感じました。
泥臭いABメロと対比的にサビはめちゃわかりやすい展開になっていて、サビも2段構えで用意されていて満足度が高いです。
星野源楽曲の構成は「不思議」以降、A1→A2→A1→A2→B→サビ1→サビ2が主流だなと感じています。

3. 蒼の彼方へ / 國土佳音 (2020)

おそらく今年一番聴いたであろう1曲です。
アニソンではないけど、確実にアニソンとかの文脈に入れるよなと思います。イントロのコーラスとギターのコードワークからかなりラスマスフェイバーを感じて、リズム隊はムーンバートンを早回しした感じでこの跳ねる感じが全体のグルーヴとしてめちゃくちゃかっこよく聴こえました。
Bメロのドラムがマジでうますぎだし、めちゃくちゃかっこいいフレーズしかなくて尊敬でしかないです。

4. lumiere / TRINITYAiLE (2021)

kz大先生作詞作編曲の楽曲です。サビ部分の三連符のアルペジオが本当に好きすぎて、この曲も今年一番聴いた曲タイです。
サビのコード進行でIVmM7/Iがsus4コード的に使われるのがめちゃ気持ちよすぎでした。

5. Happy♪Lucky♪Sharing!! / GEMS COMPANY(小瀬戸らむ) (2022)

MONACAの瀬尾祥太郎さんが作詞作編曲の楽曲。
この曲も今年一聴きました。
アイマスとかの文脈にありそうなディスコっぽい曲で、メロディラインもコード進行も歌詞もすべてが良すぎでした。4536の文脈で3をIIIm9にしてちょいリディアンっぽくするのをうまく使いつつ、bIIIに進行していてあまりにもオタクすぎる・・・!となっていました。
サビの「ねぇ 話をしようよ」の後にbVIIaugをシンセリードがなぞるフレーズが入ってくるのもめちゃくちゃオタクすぎて最高でした(メロディラインもシ→bシとかなり変態的な動き方になってて良すぎる・・・!)。

6. 眠る魚 / ミシェルメルモ (2022)

今年入ってから見つけたアーティストですが、本当に技巧的な作曲でビビり散らかしています。bIIM7→IM7→#IVm7-5の動きを基調にAメロとBメロが展開されていて、サビもかなり難しい部分転調が繰り返されつつもメロディラインとしての聴きやすさが担保されており尊敬でしかないです。
ミシェルメルモいいな~と思ったら「1ユーロ返して」や「おとなしいパレード」あたりを聴いてみてほしいです。

7. Rush / Psylla (2023)

iPhone15のCMで一度は聴いたことがあると思います。2015年くらいのFuture Bassのノリをグラニュラー的なサウンドで再解釈されていてかなり嬉しかったです。

8. きゅうくらりん / いよわ (2021)

本当に逆張りしていて聴いてなくて後悔した曲です。
パッヘルベルのカノンをなぞるようなサビだけど、ところどころにギミックが用意されていてめちゃ感動しました。サビが2段構えになっているのもよくて、明確に令和の曲だなと感じました。
Bメロで短三度下に転調するのもめちゃくちゃオシャレで、サビにもスムーズに戻れてかなりいい転調だなと思いました。

9. JUMP IN / めぐみん(CV. 高橋李依)、ゆんゆん (CV. 豊崎愛生) (2023)

2023年ベストオタクソウルミュージックその1。楽曲クレジットを見たときに、ソングライターがYeYeでめちゃ納得しました。かなりスモールな編成の中でもちゃんと盛り上がる部分がわかるように編曲するの難しいのでめちゃ尊敬です。

10. 太陽ポカポカで草 / なみぐる feat.星界 ずんだもん (2023)

2023年ベストオタクソウルミュージックその2。「太陽ポカポカで草」はかなり口に出して読みたい日本語でタイトルから最高だなと思いました。
歌詞もかなりふざけていてよく、「せんせいイライラで草」でそのままサビに行くのもかなり面白かったです。

終わりに

以上、2023年リリース・聴いた曲各10選でした。
ポップスはABサビの形を崩したものが結構見つかって、めちゃくちゃ参考になりました。

Tutara PeakやTaku Inoue、defsharpのような、電子音とアコースティックなサウンドの融合的な分野が自分としては今後ホットになる気がしており、ここらへんの流れに遅れることなくついていけるといいかなと思ってます。

来年もいい曲をたくさん見つけられるようdigを推進しまくります。
それではよいお年を。


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