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競馬のレースにおける様々なロスについて

本当に久々になりますが、しっかりしたコラムを書いてみようと思います。
かなりの長文になりますが、読んでいただいた際に少しでもお役に立てる、気づきになるような内容があれば幸いです。

では、まずタイトルに書いているロスとは?という話しをする前に、競馬の予想とは一般的にどのような内容で組み立てられているのか、について考えましょう。

■競馬の予想とは?

競馬の予想とは、一般的に以下の3つの要素にて構成されることが多いです。

  1. ポテンシャル

  2. 状態

  3. レースにおいての不利・ロス(コースやトラックバイアスなどの環境条件含む)

1.ポテンシャル

そのままの内容で、「馬が元々持っている力」を示します。ゲームのように数値化はもちろんできないものになりますが、いくつかの例を挙げますと、
「瞬発力」・「持続力」・「ゲートセンス」・「テンのダッシュ力」・「折り合い」などなどが挙げられます。
今回はここにフォーカスをした内容ではないので割愛しますが、馬にはストロングポイントとウィークポイントがあり、予想の段階ではその馬がコースにフィットするのか、バイアスにフィットするのか、騎手が馬とフィットするのか、なども考えながら、その馬の絶対的な脚力の能力値などと掛け合わせて、考えていくことが多いと思います。
予想を行うにあたり、ここの部分をかなり評価して考えている方が多い印象です。

2.状態

主に調教・パドックなどで判断されることが多い内容になっています。
こちらも今回メインで書く内容ではないので細かくは書きませんが、大きくは「筋肉」・「心肺」・「メンタル」で構成されていると思います。
調教を細かくみている方は主に「筋肉」・「心肺」を、パドックを見ている人間は「筋肉」・「メンタル」を見ている印象がありますね。
*映像だと心肺の判断がなかなかつきにくい

基本的には、1と2の内容が合算されて、その馬がレースを行うにあたって走れる状況にあるかを判断されることが多いのかなと。

3.レースにおいての不利・ロス

今回はこの3にフォーカスをした内容でコラムを書いていこうと思います。
もちろん、レースが始まらないとどのような不利、ロスが発生するかはわかりませんが、事前の段階で展開予想をしていく、馬のキャラや騎手のキャラを考える上で、ロスというものを事前にか感知することができますし、レースの回顧を行うにあたって、受けた不利がどれくらい影響があったのかを考えていけるものになります。
また、競馬のレースを行うにあたり、完璧なレース、ということは存在せず、必ずといってよいほどどこかで少なからずロスを受けることになります。
ロスがどこに存在するものなのか、を理解することは競馬の予想を行うにあたり、とても大切なことになりますね。

■ロス・不利を考えていこう

では、具体的にロス・不利とは何かを考えていきましょう。
競馬におけるロス・不利が発生する場面(環境面込み)は、以下のようになります。
1.ゲート・スタートダッシュ
2.1角の入り
3.向正面
4.3角の入り
5.直線

この1つ1つに対してコメントをしていこうと思います。

■ゲート・スタートダッシュ

まず、このセクションとしては、以下の3つがポイントになります。
個別に記載をして行った後に、総合として何を考えるべきかを記載します。

  1. 駐立

  2. ゲート反応

  3. ダッシュ力

1.駐立

これは、ゲートに入って馬がチャカつく、などもそうですし、真っ直ぐに立っていることができない、なども対象になります。
あまり回顧などでも細かく見ている人が少ないのでは?と思いますが、この部分は将来の出遅れを予知できるものとなります。
駐立が悪い=すぐに出遅れる
ということはなく、ゲートが開いた瞬間にタイミングが良い時に開けば良いスタートが切れるものの、多くのタイミングで駐立の悪い馬は出遅れる可能性が増します。
特にこの部分を注視しないといけないのは、「大きなレース(G1など)」になります。
駐立というのは、センスだけではなく、レースを重ねるたびに悪化していくことも多くなります。大きなレースになると、ポジション争いがかなりシビアになるので、少しのゲートの遅れがそのままポジションを落とす原因になることが多いです。また、緊張感が他のレースとは異なるので、普段から駐立が悪い馬は悪い部分が出やすくなりますね。
もちろん、短距離戦などスタートが特に大事なレースでもシビアに判断をする必要があります。
また、スタートのうまい豊さん、福永さんと他の騎手では、この駐立の部分が他の騎手と大きく異なります。馬の落ち着き、スタートしやすい体制でゲートが開くのを迎える、というのがうまいので、注目してみてもらうと面白いと思います。

2.ゲート反応

ここはゲートが開いた後の反応速度を示します。ここはレースを重ねるごとに変わってくる部分はあるものの、馬の先天的なセンスに関わる部分が多いと思っています。そのため、この部分が早い馬を知っておくと、ぽん、と出る馬を事前に判断することができるようになります。
突然反応速度が大きく変わらない = 安定して使える事前ファクター
となり、ここを事前に知っているかどうかは大きな違いを生みます。
駐立+ゲート反応=スタート速度
と判断される方が多いと思いますが、変わっていくものと変わりにくいもの、なので、逃げ馬を判断する、という時には、このゲート反応速度を知っておくことが大事になりますね。

3.ダッシュ力

ここはポジションを取るときに必要なダッシュ力を示します。
1+2でゲートの反応が決まり、ここの部分で隊列が決まってきますね。この部分で知っておかないといけない内容は、エンジンのかかりが早い馬なのか、エンジンがかかった後の加速力が早い馬なのか、という部分ですね。
ここはあまりにもケースが多くなるので、ざっくりとした書き方にしますが、逃げ馬としてアドバンテージを得やすいのは、まず、エンジンのかかりが早い馬、になります。
理由としては、逃げ馬においては、周りの馬の動向を見て、自分が行けるかどうかを判断します。そのため、初速が早い(できればゲートが早い)場合には、周りの馬が控えてくれる、といった状況ができやすくなります。
*逃げ馬がいっぱい前にいて、並行の状態で1角を迎える、というのは、初速の遅い馬が多い場合に、騎手が逃げられるチャンスがあるな、と思うことによって起きうることが多いです。また、こういう初速の早いタイプについては、ダートにおいても内枠から出していくことがやりやすくなります。
逆を言えば、初速は早いけど、エンジン加速後のスピードに乗りにくい馬については、騎手が主張をしない場合(特に外枠)、よく見ると思いますが、なぜか逃げないケースが多くなるので、乗り手を選びます。理由は、馬なりで出していくと思ったより伸びずに、インを見ている間に加速の遅い馬がスピードに乗って逃げる形になってしまう、ということになりますね。
今後は、エンジンのかかりの遅い馬についてなのですが、こちらは前述した内容の逆で、内枠だと出して行こうとする前に前に入られてしまうので外枠が理想(仮に逃げられても必要以上にダッシュしてしまうのでばてやすい)になりますし、騎手についてはポジションが遅れた状況からスタートしやすいので、それでも前に行く、という胆力と適切な状況判断が必要になります。

4.全体総括

ここまでの内容を合わせて1Fから2Fの途中までのラップを示します。
短距離戦(ワンターン)と中距離以上(2ターン以上)でこの部分の大切さは変わってきますね。
短距離戦については、自分のポジションを主張して、スピードのロスを起こさない(短距離戦においては、スピードのロスを起こす道中の不利が大きい)地固めをする段階になります。騎手が欲を出して前に出していけそうだ、と思えば隊列争いが厳しくなって、ハイペースになりやすくなりますし、スパッと前にいく馬が出て来れば、後ろの馬は諦めて単騎でいく形になってペースそのものは落ち着いてきます。隊列争いについては、上記の部分を意識して予想をしていくと、精度が上がってくると思います。
中距離以上で2ターンになると、コーナーで一旦息が入るので、短距離ほど意識をする内容にはなりませんが、大事になってくるのは3で記載をしたエンジンのかかりかた、になりますね。2ターンの隊列を決定づけるのは、騎手が行く意識があるかどうかも大事になりますが、エンジンのかかりの早い馬が出ていくと隊列が落ち着きやすくなりますし、主張が弱いとみんなが譲り合うことになって、この後に記載する1角の部分で混乱が起きやすくなります。
また、今回は細かく触れていませんが、もちろん後方の馬に対しても影響する内容になります。エンジンのかかりが遅い馬は特にどうやってもポジションが取れないですので、意識をしておくと良いと思います。
大きなレース(特にG1)になるほど、スタート後のポジション争いは大事になりますので、この辺りの影響力が大きく関わってくることも忘れないようにしないといけませんね。

■1角の入り

こちらは2ターン以上の時にのみ発生する内容になりますね。
中距離戦ではあるので、短距離戦でのスピードロスほどの大きな問題にはならないものの、コーナーでのロス、というのも最後の粘りを考える上では影響を与えます。

1.加速ロス

見た目に分かりやすい、外枠の馬が外外を回されて、コーナー負荷がかかる、というのも大きなロスの理由になりますが、その前提として必要になるのは、スタートからどれだけ加速をしてコーナーに到達しているか、ということですね。
当たり前ですが、スピードを減速しっかりした状態でコーナーに到達すれば、外を回した場合のロスも最低限に抑えられますし、抑えきれずに加速をして入った場合には、大きなロスになります。
この辺りは回顧の時のポイントになりやすいですし、TOP騎手になれば、この辺りの意識は高いので、ポジションを多少ロスしてもスピードを抑えてコーナーに入ってきますし、新人騎手などはとにかくポジション!といった動きでコーナーにスピードに乗ったまま入ってきて、大きなロスを食らうことになります。

2.インにいてもロスがある

また、この部分で大事なことは、コーナーで前カットを食らってスピードをロスしているか、というのも大事になります。
特に団子の状態などでコーナーに入った場合に、包まれたポジションで走っている馬は前の馬の動きによって自分のリズムではない、スピードに乗れない状況でコーナーに到達することがあったり、コーナーが下手な騎手が前にいる場合、寄られることでスピードをロスしている場合があったりします。この辺りも減点材料になり得るので、チェックをすると良いかなと思います。

3.予想に組み入れると

これを予想に踏まえると、特に外枠の馬はダートだと砂をかぶらないという+ポイントはあるも、外を回される可能性が大きくなるのも心理です。
外枠の馬を買う場合には、騎手がどのような動きをするか(出し切って前に行ってコーナーで減速できるのか、そもそも出さないでポジションを抑えてもくる流れになるのか)などを考えると良いと思います。
また、1角で決まった隊列がその後の隊列として動かずに決まっていくことも意識をすることが大事です。

■向正面

1.概要

ここも2ターン以上でのみ意識すべき内容になります。
1角でコーナーを曲がっているので、一度減速処理が入り、次のコーナーに向かっていくまでは、捲りなど入るスローペースは別にして、基本的には1角までで決まった隊列を維持して、できる限り力を使わずに、自分のペースで走らせることが大事になります。
*逆を言えば、1角までに隊列が出来上がる、ということは意識をしたほうが良いです。
そのため、この区間については、スピードのロスよりもリズムのロス・ポジションのロスの方が大きくなります。

2.ロスがかかる部分

ポイントとしては、見たままの内容で、頭を上げている、かかっているなど気性面の問題は多くなマイナス要素になり、この辺りはわかりやすいですが、あまり皆様が気にしない部分だと、インで進行していた馬が前の馬がスピードを落とすことで、どんどんと下がっていく、というロスが大きいです。
また、ダートにおいては、この区間が一番砂被りをくらいやすいことも意識しましょう。
この後の直線編でも記載しますが、弱い馬の後ろについてしまうとこのような内容になりやすく、騎手のポジショニングが大切になります。
予想においては、気性をクリアする、ということにおいては、内枠で前に馬をおくことが大事になります。制御能力が高い騎手は外枠でも大丈夫な場合もあるものの、新人騎手だと外枠でかかるケースが増えてきます。
また、馬群に入ることは、前述した自分の意志を介さずにポジションを下げる、ということになるので、インに入るのであれば、強い馬の後ろに入るなど、ロスが少ない動きになるかが大切になります。

3.逃げ馬と番手の動き

この区間にて大事になるのは、逃げ馬と番手の動きになります。
特に、逃げ馬はこの区間でペースを司ることになるので、スローに落としすぎることにより、番手の馬に突かれて、再度の加速を余儀なくされる可能性があります。当たり前ですが、みんなが自分の動きを大事にする区間にて、無理をする動きをすることは大きな負荷になりますので、この動きになった時点で逃げ馬がほぼ勝てる内容(スローで相当余力ある状態は別)ではなくなります。

4.追走負荷

3に関わる内容で、この区間がどれくらいのペースで動くのかによって、追走負荷がかかります。クラスが上がれば上がるほど、この追走負荷、という部分が大きくなってきます。これは、前の馬だけではなく、レース全体によって起きる現象になり、仮に最後方で走っていたとしても、過去走と比べて、自分が負荷のかかるレースを体験している場合、普段はしっかりとした上がりを出せる上でも、最後に足が使えなくなってきます。逃げ馬の作るペースとそこからどれくらい離れている位置を走っているのかの位置関係が大事にもなります。

5.まくりが入った場合

まくりが入った場合には、スローからの動きがほとんどですが、レース全体のラップが一気に動き出します。ということは、最後までスタミナを残すために最適な動きとしては、リズムを作る区間になるので、インである程度のポジションを持っている馬がじっとして、動かない馬が有利になりやすいです。
他の馬が途中でダッシュ区間が入りやすくなる、気性がかかりやすくなる、といったマイナス面が目立つのに対し、+ー0で走ることができるので、相対的に有利、ということですね。

■3角の入り

1.短距離と中距離以上の違い

この区間で一番大事なことは、短距離戦と中距離以上で意味合いが変わる、ということです。
短距離戦においては、スピードに乗った状態のまま3角に突入して、以下に減速をしないように曲がってくるか、というのが大事になってくるのに対し、捲りなど大きな動きがない中距離戦以上については、ここからスピードを上げていくといった動きになります。
短距離戦においては、外負荷がスピードに乗っている分、中距離戦に比べて大きくなってきます。そのため、外を回るということに対してシビアになることを考えましょう。
その代わりに、中距離以上については、中京など癖のあるコースを除いて、ここから加速に入っていくので、スムーズに動けるのか、というのが大事な内容になります。直線のところでも記入しますが、エンジンの点火に時間がかかる馬の場合、この区間でじわっと加速をしていないと、直線でエンジンがかからないまま終わってしまう可能性もあるので、内枠にいると動けない、といった内容になりがちです。

2.コーナーを曲がるにあたってのポジショニング

1角と3角の違いについては、大きく違うのが、コーナーから直線に向かって、最後の力を振り絞るタイミングがくる、ということになります。
1角の場合には、次にリラックスさせて走らせないといけない状況になるので、以下に減速してはいるのか、になりますが、ここから加速をするためにどうしたらいいのか、を意識する必要があります。
ここで大事な要素は、1にも書いた加速をして進めていく、と共に、前が空く状況ができるのか、になります。
前述した、強い馬の後ろにいる、もそうですし、騎手がコーナーでどれだけ膨れてしまうか、も大事な要素になりますね。
コーナーで膨れることによって、直線に入る時点での進路を確保することができますし、逆に外にいる馬はロスになります。
新人など制御能力の低い騎手がインに入りたがらないのはこれで、コーナーで曲がりきれずに周りの馬に迷惑をかけてしまうことがあり、レースを壊す可能性があるので、コーナーから加速しない、外で膨れてもOKな位置で仕掛け出す、などを好みがちです。

■直線

ここも3角の入りと同じで、短距離については、最後まで以下に減速をしないように走るか、という内容になりますし、中距離戦については、加速をするためのギアチェンジを行う、という動きになり、全く内容が変わってきます。

1.短距離

みんながある程度疲れている状況で直線に向く、ということを意識する必要があります。そのため、直線はギアチェンジをする、というより、以下にスピードを維持させるか、という部分が必要な内容になります。
自分が疲れている状況だとわかりやすいですが、思いっきりストライドを伸ばして加速するんだ!というより、同じリズムで走りたいんだ、となりがちですよね。バイアスなどを除けば、スタミナを保持しやすい距離ロスを防ぐ進路の方が強い動きになりますし、直線でロス(前カット、なかなかスパートできない)などは、疲れている状態で再度スパートをしないといけなくなるため、中距離以上に比べて大きなロスになります。

2.中距離以上

こちらは逆で、短距離と別に加速をする、ということが大切になります。
そのため、加速をする上でのロスの方が問題になりやすく、距離ロスよりも1頭でしっかりとストライドを伸ばして走れる環境であることが+になりやすい(馬込みの方がスパートしやすい馬もいるので、この辺りは性格もありますが、一般的に)状況になります。
そのため、前カットやスピードロスなどは比較的立て直しがしやすくなりますが、外にずっと馬がいてストライドを伸ばせない、や、前が壁でスパート距離が短くなる、などの方がロスになりやすくなります。

3.直線のロス

直線でのロスはかなり目立つため、大きな不利を受けた場合など、最近の競馬だとかなり人気になりやすい状況となります。
今まで出してきた、3角までのロスを総合して考えていった方が人気妙味は取りやすくなります。
先週のダービーのダノンベルーガの隣にずっとジオグリフがいた、みたいなのは、スピードのロスがないため、そこまでの不利に見た目は見えないですが、ストライドはかなり伸ばしにくくなり、馬にかかるプレッシャーは相当大きいものがあり、あれを力負け、と判断はしてはいけないと自分は考えています。
このように、事象に対して、どれだけの不利があったのか、を自分なりに判断をすることが大事になります。


いつもありがとうございます!