見出し画像

「ガビチョウ」ってご存知ですか?

部屋で聞こえる外の音

東京の西郊、かつて武蔵野と呼ばれた地域に越してきて、もう10年余り。

うちの最寄り駅では、中央線を挟んで低層の住宅街が広がっていますが、うちは、その住宅街の外れ、雑木林のそばにあります。

まぁ、東京といっても いろいろあって、今、住んでいるところは、同じ都内のベッドタウンでも、前に住んでいた東の方とは全然違って、だいぶ のどかな ところです。

近くには私鉄の単線が走っていて、
電車がときおり通り過ぎていきます。

雑木林の向こうには小さな飛行場があって、
伊豆諸島から戻ってきたプロペラ飛行機が
ゆらりゆらりと飛んできます。

そんな、人の作った割には、いまどき のどかな音の他に、自然を感じさせる音も聞こえてきます。

カラスの鳴き声はもちろんのこと、
ウグイス、ヒヨドリ、カッコーのさえずり、
キツツキのドラミングも聞こえたりもします。

梅雨明けが目前に迫った、これからの時期は、
昼間でもコオロギやキリギリスの声が聞こえ、
夜はかなり賑やかになります。

越してきた晩、虫の音を聞きながら眠り、
翌朝、鳥の鳴き声で目覚めたのに、
家族全員が驚いたのを思い出します。

気になる鳴き声

それから、10年余り、僕は仕事も辞めて、家でのんびり過ごすようになったのですが、

聞こえてくる鳥の声の中で、ひときわ目立つものがありました。

梅の花が咲き出すころ、
「ほーけきょ、ほーけきょ」
という感じで鳴き始めるその声は、最初は てっきりまだ下手なさえずりのウグイスだと思い込んでいました。

ウグイスの鳴き声には、
「ホ~ホケキョ」
というさえずりの他に、
「ケキョ、ケキョ、ケキョ、ケキョ・・・・」
という「谷渡り」と呼ばれる鳴き声、
「ジッジッジッジッ」
という「地鳴き」と呼ばれる鳴き声がありますが、いくらたってもそれらしくならないし、よく聞いていくと、どれにも当てはまらない鳴き声でも鳴いているのに気づきました。

それから、ネットで野鳥の鳴き声を聞き比べるようになりました。

ホトトギス、ヒヨドリ、トラヅグミ、イカル、イソヒヨドリ、、、
住宅地で鳴き声の目立つ鳥について、それらしいキーワードで検索した鳥の鳴き声を聞き比べても、それらしい感じはするもの、明らかに全然別の鳴き方もする。

この謎の鳥の正体を突き止めるべく、近所の雑木林で鳴いているのが聞こえたときには、双眼鏡を持って、探しに行くものの、ウグイスみたいに、声はすれども、姿は見えず。

そのように虚しく月日が過ぎたのですが、先月、とうとうネットで「ガビチョウ」という名前に行きつき、動画で鳴き声を確認したら、ドンピシャ!長年のモヤモヤが晴れて、スッキリしました。

ガビチョウについて

ガビチョウは、漢字で書くと「画眉鳥」で、英語では、Melodious Laughingthrush ( thrush は ツグミ のこと)という別名もあるそう。

美しいさえずりのため、中国ではペットとして一般的だそうで、1970年代に日本に輸入されてきました。ですが、日本のペット市場に合わなかったため捨てられ、それが野生化した結果、近年、関東を中心に広がっているとか。

日本の事情に合わなかった理由の一つとして、鳴き声が大きいため、家で飼うには近所迷惑になったからだそうで。

確かに、遠くにいてもよく聞こえるそのさえずりは、たまに近くによって、さえずりを聞かせてくれるには愉快でも、一日中そばで聞かされていたら、たまらないかもしれない。今くらいの適度な距離のつきあいが僕にもちょうどいいです。

ガビチョウは、九官鳥のように他の鳥の鳴き声を何種類もマネするそうで、七色の鳴き声と呼ばれたりもするそう。どうりで、鳴き声ではなかなか特定できなかったのか、と納得しました。

それから、ガビチョウは、飼い鳥で日本の野鳥ではないことから、「野鳥図鑑」とか「野鳥リスト」というのには載っていないことも多く、これもガビチョウに行き着くまでに時間がかかった原因でした。

鳴き声に聞き浸る

まるで歌いながら、お話するようなガビチョウの鳴き声。

音量も、抑揚も、リズムも豊かで複雑なこの鳴き声を聞いていると、僕は自分の体じゅうで、

スーパーボールが飛び跳ね回るような感覚があったり、

飴細工がビニョーンと伸ばされるような感覚があったり、

その感覚に身を任せていれば、そのうち、意識がぶっ飛んで、きっといつかは悟りの境地(?)に至ってしまうのではないかと思うほどで、僕はとにかく愉快な気分になります。

また、自分の体に何かを語りかけてくるようなガビチョウの鳴き声に身を任せていると、まだ何を言っているのかわからないけど、「聞き耳頭巾」はきっとこの延長線にあるんだろうなって気もしています。

これまでも、文字通り、家から一歩も出ないひきこもりの日々で、ガビチョウの鳴き声を耳にして、気分が明るくなることがよくありました。というわけで、僕の好きな鳥です。

ところで、昨日、ついに鳴いているガビチョウの姿を確認しました。

「鳴き声が やけに近いな」と思って、窓を開けたら、うちの屋根を伝って、お隣さんのところへ鳴きながら飛び跳ねているところを目撃。

それは、動画で確認した通り、緑がかった薄茶色で、これまでの声の主がガビチョウであるのを、とうとうこの目で確認できました。

・・・と、鳴き声から声の主を突き止めるまで、だいぶ骨が折れたので、シェアします。

みなさんも、もし「あんな大きな声で、いろいろな鳴き方をする、あの鳥は一体なんだろう」と思われたときは、試しにガビチョウの鳴き声と比べてみてください。

参考動画

「ガビチョウの豊かな鳴き声」(再生時間3分30秒)

ガビチョウの悲しい事情も説明されています。
ガビチョウの多彩な鳴き声にご注目!

てつろう拝

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?