【イスラと家族の食物語】

※「イスラと家族の食物語」メモは、Isla=Faisalというももちの創作キャラクターを「食物語」の主人公に投影した、プレイ記録的二次創作の感想・考察・小噺等々を書き記したものとなっております。

※下記必読

本記事の内容を扱った二次創作の仕方を含む、本記事の内容の扱い方については、【ももちの一次創作物に対する二次/三次創作ガイドライン】 【ももちの記録庫の著作権についてのガイドライン】を参考にしてください。


公開用原稿として、原文から削除された文章・写真・動画のヒント→[発言者,キーワード]or[写真・動画の概要説明]

(余談)

こちらの食物語メモ、のちに私が公開するかもしれない【御報告】というメモが、書かれた後に書き上げられたものとなっております。

【御報告】メモとは何ぞや?
 いつものごとくメモを書き書きしていたももち。ある日メモを書く端末のアップデートをしたところ、メモアプリ内の約200件程あるデータが全てふっとんでいたので御座いました……。でもバックアップさえしていれば安心!ももちは見つけた一週間前のバックアップデータを取り込もうとします。焦った手元で……そう、極めて焦った手元で……誤って何故かメモが消えた端末のバックアップを……上書きしてしまったのでした……。

まあある程度はその後なんとかしたんですけど。べしょべしょに泣いた。そんな事件の顛末を記した【御報告】メモ。

この食物語メモには、メモ爆散事件を振り返るような記述が多く含まれます。それらの補足としてこの余談枠を設けました。それではメモ爆散後に食物語メモを再始動させた当時のももちの悲痛な言葉を下に記し、余談を締めくくらせていただきます。

主人公をイスラ、もとい中国名:伊正宵(イ・チェンシャオ)とし、ハーイスでやってた食物語メモが爆散しました。爆散から約半年、私も自身の心の傷を認識して、きちんと食物語メモに向き合う覚悟を今決めました。まずは前置きもこの辺にして、ハーリドとイスラが空桑に来るまでの物語、当時私が書ききっていたものを、今一度復元いたします。頑張って思い出しながら書きます。

【本編】

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がたん。ごとん。がたん。
お尻が揺れる。肩が揺れる。隣の子と、足が触れる。

………………いつもとおんなじ高さの太陽。いつもとおんなじ空気。いつもとおんなじ友達と、5歳になったハーリドは遊んでいた。今日も、うまれて一年ちょっとしか経たないイスラの姉ちゃんが、彼女を背中に縛ってボールを蹴っていた。近所で生まれた子供は、ここらみんなのきょうだいだ。俺にとってイスラも、家族の一人だった。

———道を聞かれて、みんなで案内をして、気付いたら、知らない車の中にいた。みんなそのときは、知らないところに連れて行かれるなんて想像もしてなくて、ぼんやりとした不安の中、車は砂利道を進んだ。

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がたん、ごとん、がたん。……一昨日は、縛られた手首が痛かった。昨日は、歩き疲れた足が痛かった。今日は…今は、ぼろ馬車に揺られるお尻が痛い。
 イスラの姉ちゃんとは、何日か前に離れ離れになった。姉ちゃんはイスラを俺に抱かせて、男たちに引かれていった。……腕の中の、ちっちゃい赤ん坊。すっかり痩せて、もしかしたらもう死んでいるかもしれなかった。でも、故郷の道端でたまに感じる死の匂いは、このイスラからはしなかった。
 子供たちは皆無言で、そんなの数日前からずうっとそうだ。もう、いつ日が登って落ちているのかも、俺にはわからないけど。
 どかっ、じゃりじゃり、がたん、がたがた。子供たちの間から呻き声がする。馬車は急停止して、大人の足音が馬車の周りを回る。後輪に、手をかけている。馬車が動かなくなったのだろうか。「———[ッくそ、おらサッサと降りろ!]」………数時間ぶりの日の光。あつい光だった。砂の匂いがする。男が後ろの垂れ幕を開け、子供たちに外に出るよう合図する。彼らの言葉は、俺にはわからない。
 …………いまだ。なんとなくそう思った。キンと耳が鳴って、日の光に背中を押された。俺は、走った。イスラを包んだ布を、必死にたくし上げて、馬車から降ろされた途端、必死に、訳もわからず、ただ荒野の向こう、蜃気楼の先にぼんやりと映る、美しい街並みを目指して、走った。おもい、重い、腕の中の命が重い。重いからには運ばなくては、落としてはならない、繋がなくては!!

俺は必死に走った。

男たちの足音。子供たちが男を止める喚き声。大人が子供を叩く音。やがて掻き消えて、気付くと自分は、繁華街の中、無数の人々の間を縫ってかき分けて、イスラを抱え必死に走っていた。

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———、———、———、———、———、———、———、———、…………………雨。さああっと降る冷たい雨。時折家の屋根に落ちて、カコンと音を立てる雨を楽しんだ。楽しみながら、茫然と、行くあてもなく歩き続けた。……ここはどこだろう。人が住めそうな家がある。豪華な家ばかりだ。俺たちの故郷には、きっと一生戻れないのだろう、そう思わせるほど煌びやかな街。その家々の背中側、薄暗くって水路の張り巡った屋根のない路地を、俺はイスラを抱えて歩いていた。
「——————誰?…!あなた……」「………………。」女の声。やっぱり、知らない言葉だ。歩いていた先を塞ぐようにして、雨天に似ついた淡い色の着物を着た女が立っていた。側には黒髪の男が控え、彼女に傘を差している。「———浮浪児でしょうか。空桑に…? …!赤子を抱いている。」だめだ、だめだまずい、向こうはイスラに気付いている。いやだ、いやだここでイスラを渡しては、ならない。何者にも、この赤子を委ねることはできない。ハーリドは踵を返し、走り出そうとした、そこで———足がもつれて、べちゃりと転んだ。横様に転んだお陰で、イスラを潰すのは避けられた。「———お待ちなさい。」「……!!」女の足音がする。だめだ、イスラは渡さない、死んでも、絶対に、俺にしか彼女は守れないのだから。「———###様、」「鍋包肉、そこで待っていて。」「……はい。」「近づくな!!」「……!」通じない、分かっている、でも何も言わずに渡してたまるか、獣が吠えていると思え、近づくな、咬み殺すぞ、ハーリドは必死に吠えて、雨水を含んだ布をたくし上げてはイスラに巻き付けて、挫いた足を震えて立たせ、女を睨んだ。「……怯えないで。」女は傘を差さずに、その美しい着物を泥水に濡らし、優しく困らせた眉に雨の雫を光らせていた。女が、優しくその手を伸べる。……幼いハーリドにとって不覚だったのは、その女に、故郷の母にも似た温度を、感じてしまったことだった。
 ……ハーリドは動けなかった。女の手に、触れてみたいと思ってしまった。何日も母の温度に触れていない、あたたかくなりたい、イスラを抱えている腕は、もう限界にまで萎びていたから。「……よく頑張ったわね。」女はイスラごとハーリドを抱きしめ、ぎゅうっと体の中にしまうほど、彼の小さな、細くなった背中を撫でた。「(……空桑の地にもやはり、このような“闇”が存在する。)」###は己の無知を嘆き、幼い二人に自分ができる最大をして差し上げたいと、彼らを自身の住まう屋敷———食神たる夫の座す空桑の餐庁へと、案内することにしたのだった。
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 その後、男の子と、彼が抱える赤子を抱いて屋敷に戻った。鍋包肉は男の子を抱えようとしたけれど、私だって母親になる年齢ですからと、二人の子供を抱いて帰ってきたのだ。
 屋敷にたどり着いてまず、私は風呂を焚いて彼らを清めた。男の子はお風呂の中でも、赤子を手放そうとしなかったので、赤ちゃんの目に泡が入らないよう気を付けながら、二人とも一緒に洗ってあげた。お風呂に入っている間も、男の子はくうくうお腹を鳴らしていたし、彼らはひどく痩せていたので、お風呂の後は男の子の足の手当てをして、彼らを餐庁へ連れて行った。食べやすい粥をと桃花粥に頼んで、赤ちゃんでも食べられる食事を私も作った。男の子は、私を信じてくれたのか、食事の間は女の赤ちゃんを私の腕に預けてくれた。ただし、興味を惹かれて集まった食魂たちが彼女に触れようとすると、丸い両目でじっとそちらを見つめるのだけど。男の子は粥が冷めるほど長く警戒した後、おかわりするほど粥を食べてくれた。やはりよっぽどお腹が空いていたのだと思う。一度だけ撫でた彼の頭は、力なくふるふると揺れた。
 ……食事を済ませて、彼らにきちんとした服を見繕おうと、私は二人を自室へ招いた。鍋包肉はここでも付いてきてくれて、しかしやはり男の子たちへの警戒は忘れていないようだった。まったく、そんな目をしては彼らも安心できないのに。「……、」部屋に来て、私が座らせたまま、寝台の上に座っていた男の子が、不意にそこから降りて、女の子を寝台に置いた。……すると彼はたっと走り出し、鍋包肉が声をかけたところで、ぐっと足を止めた。「———行きたいところがあるの?」「……。」言葉は通じないのだろうか、この子の顔つきは、この辺りにいる者たちと異なるようではあるのだけれど。「この女の子を、私に託してくれる……ということ?」私は彼女を抱いて、振り向いた彼の前にしゃがみ込む。「……———、」彼は一言呟いて、女の子を包んだ布を掴むと、私の肩に押し付けた。そういうことなのだと、彼の瞳を見て理解した。「……?なんと言ったの?」「———、…Isla」「———い、」「Isla、Isla。」「い、ら。いずら。いすら…?この子の名前?」赤児を指して彼の瞳を見る。彼は、こくんと頷いたのだった。
 ……ハーリドはくるんと背中を向けて、また走り出そうとする。「——!待って!」「……。」「……、いすら、この子はいすらと言うのね?あなたの名前は?」###はハーリドに近寄ると、またしゃがんで、イスラを指し、ついで彼のことを手で指した。「……Khalid」「かり、…かり、というの?」……今度は、男の子は頷かなかった。けれど納得したようにまた部屋から出ようとするので、私は女の子を抱いたまま、男の子の手を取って、食魂たちに気付かれないうちに裏口へと向かった。
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「……また会いたいわ。」「……。」「……私、この子をきちんと育てます。あなたに託されたのだもの。…けれどあなたは去ってしまうのね。……だから最後に、この子にお別れをしてあげて。ね?」兄妹なのやもしれなかった。この空桑に彼が居続けられるならば、きっといつかこの女の子と彼を再会させてあげることだって、きっと。……男の子は、もう女の子に触れようとしなかった。背を向けて、屋敷の外へと走っていく彼。まだその足も痛むだろうに。……自分は、彼から女の子を取り上げてしまったのだろうか。そんな想像は必要ないだろう、彼が私に彼女を託した。それだけで、私がこの子を、母親として守り育てる理由があるのだから。
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イスラはその後、長らく子を授からなかった食神とその奥方の子として、伊の姓、正宵の名を与えられ、食魂という家族たちと共に健やかに育っていきました。
一方ハーリドは、空桑のとある拉麺屋の男に拾われて、その家の弟子として厳しく、しかし健康に育っていきました。
「イスラと家族の食物語」、私たちが紡ぐこの物語に、ハーリドという男の子が現れることは少ないやもしれません。主人公は伊正宵、そして彼女を支える食魂たち。ハーリドという青年は、伊正宵のイスラとしての在り方を支える、唯一の楔となってこの物語の背中を支えてくれることでしょう。—————————————————————————
さあ……爆散したメモぶんのお話をここで総括致しましょうか。ごめんね、当時のメモまで細かく復元する気力は残ってない。ただ、ハーイス小噺はちょくちょくやったし、覚えてる範囲でそれだけは修復しようと思う。私の完全オリジナルだしな。
てなわけで、本編2-1まで進めてるイスラと家族の食物語総括のコーナー。
えーっとね、イスラの現在の最推しというか一番仲良いのはたぶん片児川です。あのツンケンしてる奴。イスラもイスラで結構天真爛漫かつ大胆な性格に育ったので、片児川とも言い合いしたり腐れ縁的な仲の良さになってると思う。そしてここで食魂順メモを復元します!これはえふゴウで気を付けてた通り、ほとんどそのまんまの順番で加入順がゲーム内に残っているのでそれをメモに起こそうか。
はい、起こしてきました。一番下に書いてあります。あと今のメインパーティは、片児川鍋包肉かにみそ湯包鵠羹でしたね。そんな感じ……かなあ…。あとは特に特徴もなく。ではハーイス小噺行っていいっすか。
 空桑が最初に襲われて、その後一番初めの旅をして、それから帰ってきた後の話。ハーリドと、彼の親代わりである拉麺屋のおじさんのお店を訪れるイスラの話。
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動きやすい着物に着替えて、ふたりに会いにいく。空桑の街はひどい有り様で、それでもせっかくもらった暇(いとま)だから、目が合ったみんなに声をかけつつ、彼らのお家を目指した。
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「!ハーリド、おじさんも!」「…!」「———嬢ちゃん、いいのかこんなところに来ていて。」「うんっ。お休みをもらったんです。少しだけ。———お店はどうですか?」「見ての通りだよ。まあ、元があのほったて小屋だしな。建て直すとすらぁ。」「……っそう、ですか……。」「アンタが気に病むことじゃない。……コイツに話があるんだろ。時間があれば後でウチにも寄るといい。近所の連中の、昼飯一杯分の麺なら守り切ったからな。」「———ふふっ。うん、また今度来ようかな。」「だとよ。お前も長く拘束するなよ。」「分かってる、うるさいな。」ハーリドにぐっと腕を掴まれる。「あ、うんと、じゃあおじさん、また今度!———がんばりましょう、一緒に!」「———。ああ、ありがとよ。」ハーリドに連れられて道を曲がる前、おじさんがぐっと大きく深呼吸をして腕まくりをしなおす姿が目に入った。
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「……。」「………。」水路の方に降りる階段の、上のところ。家々が裏口を向ける路地の、道のへりに、二人で寄り添って座る。ハーリドはいつも、あまり話さない。私もそれでよかった。ハーリドと一緒にいられるだけで嬉しかった。お互い、隣にいるだけで、なんだかんだ無事だということを確認する。「…イスラ、」「うん。」「よく無事だった。」「うん、ハーリドも———、わっ。」よろけたと思ったそれは、彼が肩に触れたからで、私は気付けばすっぽりとハーリドに抱きとめられていた。……あたたかい。彼が、死ななくてよかった。彼も、おじさんも、二人とも無事でよかった。…彼の腕の中で、私はいつかハーリドが語ってくれた、大切なこの二人の出会いまで思い出し、心まで温めていた。
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###にイスラを託し、ハーリドは空桑の街を、人目を忍んで歩いては店先の野菜や果物を盗んで食べて生きていた。何度も人にぶたれたし、何度も冷たい視線を浴びた。それでも、自分はここでイスラが無事に成長するまで見守っていなくてはならないと思ったから、一人でも生きていこうと、そう考えた。あの女にイスラを託したのは、自分の元にいるよりもイスラが無事に育つことができると思ったからだった。……自分には、もうイスラしかいない。同じ故郷の血を引くのは、この世界に彼女しかいないのだ。
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「こンの乞食、また来やがったのか!」「(……!顔を覚えられたか…)———ッ!」「今日こそは逃さねえぞ。」「おお、李老头儿 、とっちめてやってくれ!そいつ一昨日も弟の店のを盗みやがったんだ!」「———? 盗人か?」「大麺兄哥!コイツだよ、この前話した浮浪児ってのは———」「……。」「……!」その男は、他の男と比べ物にならないほど体がでかくて、なんというか、圧が、すごかった。男は俺を掴んでいたおやじから俺を受け渡されて、片手で服をぐっと掴んで離さなかった。もがいてみても、手を掴もうとしてもうまくいかない。不思議な技を使われているみたいに、まともに身動きができなかった。「…………二度とこの商店街に寄り付くな。いいか?」「……………。」「……、」ぐんと服ごと突き飛ばされて、ハーリドはよろけながらも男から離れるよう足早にそこを立ち去った。背中の方で、あの男の声が、李と呼ばれた男の狼狽える声と話すのが聞こえた。
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それから、一週間は経ったと思う。……もう、何も考えられない。あの日以降、また捕まるのが怖くて、何も食べてなくて、雨が降った日は、ほぼ一日中上を向いて口を開けていた。ハーリドは空桑のとある通りに面した、人目に付かない窪んだ地形、風除けとしてゴミ箱に寄り添って、もはや手足も動かず、衰弱する体で、ひとり、死を待っていた。……今日も雨だ。屋根もないから丁度いい、と思っても、もはや上を向く気力もなかったし、そんな気にもなれなかった。…………足音だ。重くて、ゆったりした足音。傘に雨が跳ね返る音。……犬でも死んでいると思って見に来たのだろうか。目を開けるのも億劫だった。「———死ぬのか、ここで。」「………」「——。」男は傘を首に挟んで、以前よりも更に軽くなった子供の体を抱きあげた。
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「———、———。———………、ん……」……音がしない。いや、遠くで少し、水の音がする。あとは、自分が立てる衣擦れの音。……ぼうっと開いた目で当たりを見回した。頭を上げてみる。寝返りを打ってみる。足先に当たる布地。ここは、誰かの家で、誰かの布団の中だ。…………久しぶりにやわらかいものに触ったと、ハーリドはまたもまどろみかける。しかしなんとか目を開かせて、自分の安否を確かめたかった。……ひどくお腹が空いている。なんだ、久しぶりに気持ちよく眠ったからか、腹が空く感覚まで思い出せるようになったなんて。……おなか、すいた。……。誰かの家なら、食べものとか、あるかもしれない。ハーリドは軽いのに重い体を引きずってもぞもぞ起き上がって、ひとまず音のする方を覗いてみることにした。家自体は簡素な作りで、自分が寝ている部屋の足側が外と繋がった玄関らしい。こっそり…覗いてみると……見覚えのある、大男が———「起きたのか。」「っ!」ぴょこんとハーリドの頭が跳ねた。「…………。」ちま、ちま、きょろきょろ。それきり無言になってしまったので、ハーリドは身を乗り出そうかどうしようか、ぱたぱた裸足でうろついていると。ごとん、目を向けるたそこに、湯気のたつ器。「食え。」椅子を引かれる。言葉は分からない。食べるよう促されている、のかも。都合のいい考えかもしれない。それでも、もう、オトナのふりをするのも、つかれた。…ハーリドは示された通りに椅子に座って、渡された箸を……持ってみた。これで食べろということだろうか。ハーリドが一本の箸を浸して中を弄っているのを見て、男はガタガタと何かを取り出すと、ハーリドに手渡した。フォークだ。ハーリドはそれで、器の中の熱い麺をすくって、冷まして、したで、くちびるでふれた。……一口食べるより先に、麺よりずっと熱い涙がぼろぼろと頬を伝った。
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男は、俺が自分の夢だと言った。偶然現れた、天使のような悪ガキだ、と。出て行きたければ好きにしろ、ただ、俺がいる空桑で飢え死にだけはさせないと。空桑にいる限り、野垂れ死にそうになった姿を見かけたら必ずふん捕まえて飯を食わせるのだそうだ。……と、いう話を知ったのは、何度も男の家から逃げ出して、その度死にそうになって、何度もこの家に連れて来られたうちに、空桑で使われる言葉を学び、やっと男の話す言葉の意味がわかった頃だった。
(メモが爆散する前には、このハーリドモノローグの間に、何回目かの時にハーリドがついに自分が食った後のお椀を水でチャチャっと洗ってがちゃんて戻してタタッと去っていくシーンとか、おじさんの店の常連がハーリドを見慣れてきて、ようクソガキまた来てんのかって声かけたりしてはハーリドに覚えたての中国語で罵倒を返されてなんだかんだ嬉しそうにしちゃってハーリドに呆れられるシーンとかもありました。)
その頃には俺も10を過ぎる年頃で、…もう生まれた日がいつかも覚えていないから、男の推察であるだけなのだけれど。俺は、この男の店に弟子入りすることにした。イスラの成長を見守るために、この街から離れることはできない。顔なんか覚えちゃいないだろう、でもそんなこと関係なかった。俺が覚えてる。……何にせよ、この町で生きていくなら拠点が必要で、寝食を満たす場所が必要だった。夢だというなら利用させてもらおう、そう思って…いや、当時はそんなことより、人の温かさが欲しかっただけなのかもな。ともかく俺は、あれからこの男の店を手伝って生きている。
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それからイスラと再会したのも、そう遠い話ではなかった。イスラが3歳かそこら、まだようやく一人で歩けるようになったくらいの歳の頃。付き添いとともに、水路まで洗濯をしにきているイスラを俺は見つけた。緑の髪の子供と手を繋ぎ、それよりさらに幼そうな栗色の髪の子供がよちよち後を追いかけている。といっても、俺自身は彼らより年下みたいな見た目をしていたのだが。「!こんにちわぁ。」「…!」「…………。」ハーリドがイスラの隣に立つ。水路に手を浸すイスラのそばでしゃがんでいた青団子は、ふわりと見上げて、イスラのお友達になれるかもしれない男の子に、挨拶をした。…?顔の…形が、この辺りの人とは違う…?「…………。」男の子は黙って、俯いて…いや、イスラを、見ている。「小旦那さま、ごあいさつ。」「ん…!こんにちわ。」「……イスラ、」「?」「どーしたの?———ああ、わか、おともだちができたの?」「う?」「……!」「あう、」ハーリドがイスラの手を掴む、引く。「あッ、まって。やめて。ど、どうしたのかな。ねえ、名前を教えてくれる?」「…………。」「……?」イスラの手を離した。ハーリドはむっと黙ったまま動かない。イスラもまた、不安そうにきょとんとしている。「……イスラ…。」「こ。こんにちわー。」「!……小旦那さま、ごあいさつできてえらい。」見て、いられなかった。ハーリドは踵を返すと、青団子の止める声も聞かず、その場を走り去ったのだった。
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 ……それから、私は食魂たちと街へ散歩に行くたび、時折、ハーリドと会うことができた。記憶があるのは5歳くらいからのことだけど、食魂のみんなもハーリドのことを覚えてくれて、彼は幼い私にとって、幼馴染のようにして共に成長した。
 彼から私の本当の名と故郷の存在を聞いたのは、私が12歳になったくらいの頃だった。ハーリドはそのとき、もうおにいさんで、大人の人と変わらない背丈をしていた。自分の本当の名前は、イスラということ。自分とハーリドが、他の土地から空桑に迷い込んだ存在だということ。ハーリドは、いつか、私と共に祖国を訪ねるつもりでいること———。
 私が養子であることは、両親から聞いていた。だから驚きはなかった。しかし私はそのとき自身の本当の名を知って、ハーリドとの関係を知って———胸が、高鳴った。どきどきした。だって、ずっと、私が空桑にいる人たちと、肌の色が違うこと。顔つきが違うこと。ぜんぶ、本当は不安だったから。ハーリドに自分は仲間だと言われて、私はすごく嬉しかった。やっぱりそうだったのだと思った。無器用で、ぶっきらぼうで、でもとっても優しくて、私の大好きなおにいさん。ハーリドが私のたった一人の本当の家族のような気さえした。もちろん、両親や食魂たちへの愛情はこの胸にある。けれど、これはそれとは異なる感情だ。ハーリドが、嬉しかった。ハーリドが隣にいることが、愛おしかった。わからない、初めての気持ちで……「一緒であること」がこんなにも私の胸をわくわくさせた。
 それから、私は街へ出かける機会があると、こうしてハーリドとおじさんのお店に遊びに行って……「おい。」………「イスラ、」「はゎ。な、なに?ハーリド。」い、いけない。久しぶりに会えたのが嬉しくって、ついぼうっと思い出の記憶に耽ってしまっていた。「……疲れているんじゃないのか。ぼうっとしてる。」「!大丈夫。ちゃんと休むようにはしてるんだよ?今日も少し寝坊しちゃって、また鍋包肉に怒られちゃった。」「……。」ハーリドはフンと顔を背けてしまった。話を聞いていなかったのがきっといけなかったんだと思う。……私のせいでつまらない気持ちにさせてしまったのに、こうして並んで座っているだけでも嬉しくなってしまうのだから、ほんとうに私はよくない子だと思う。それでも、ここは静かで、暖かかった。
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書きながら感想。おじさんについて。元軍人で拉麺屋の店主になったおじさん。息子がいたんだっけ?なんにせよ今は一人で暮らしてる。なんでハーリドの信頼勝ち取ったんだっけか……笑 あれだ、死にかけのハーリドを介抱してくれちゃったから、だっけか。俺も一人だしお前も一人だから、みたいな…?そんなに強い絆である必要はない。食えなくて死ぬのは無駄だから、つって助けてくれたとかありそう。従軍中のひもじさと、敵国の民が貧しさの中で死んでいくのを見て、戦争には勝ったけど自分は人間として敗北したから、地元に帰った時に親のやってた食堂を継ぎ、食の聖地と呼ばれる空桑に辿り着いて料理を学び、空桑の中でも存在しないなんてことはない貧富の差のうち貧しい人たちが多い地域で、うまい拉麺を安い値段で提供する仕事して暮らしてるとか。そうなるとハーリドはおじさんの夢になるよね。貧しさからちゃんと救われてほしいっていう感じの。おじさんにとっての夢。夢を体現してくれる天使みたいな悪ガキ。———ハーリドが自分の弱さを認めることってマジで少ないんですよ。あいつ捻くれてるから。だからハーリドに[夢だというなら利用させてもらおう、そう思って…いや、当時はそんなことより、人の温かさが欲しかっただけなのかもな。]とか言わせた拉麺屋のおじさんはすごい。おじさんのコワ面の下にある純粋な心がハーリドを溶かしました。ハーリド、純粋な心に弱い。イスラにもなんだかんだで弱いしな。悟とかが「こまったよぅぴえんびえん」て泣いてたら、泣くなようるさいなって言って手伝ってくれそう。てか悟の泣き方やば。———イスラの口調がね〜〜この食物語では鍵になるんですよ……食物語の本編主人公ってよく喋るんだよな。んでその口調とか、日本語訳から透ける原文主人公のちょっと気の強い性格とかを、イスラの元の口調とか正確に少し反映させてます。だからこの食物語イスラは、大元イスラよりちょっと天真爛漫とか天然が炸裂気味してます。よりちょこまかして小動物的な可愛さのある性格になってる。そのニュアンスをいつも見極めながらイスラに喋らせてます。一方ハーリドは大元の彼とほとんど変わりませんね。おじさんに影響された優しさとかのゲージは増えてると思うけど、口調や性格はほとんど変わってません。———イスラが食魂の話するたびに嫉妬やら何やらで黙るハーリドくんわかりやすすぎて可愛い。イスラはお陰でアタフタしますけどね。かわいそうに。
さあ、さあさあ本編進めようか。何かあったら書きます。ここからは普通にプレイ記として書いていくよ。もう彼らの食物語がどんな物語なのかもわかったでしょう。/[空桑と餐庁の風景]/へー。正宵のお母さんって21世紀の人で、万象陣を使ってこっちに来たって感じなのか。じゃあイスラも普通に現パロの上でここにいるんやな。/お父さんの名前は伊摯さんだよね。/天街ってところでお祭りやってるらしい。天街は空桑の中心部で、三界からの旅人たちが集まる場所だから、往来する人も多いし料理のニーズも高いって。/うおおん召喚で小鶏燉蘑菇と羊肉泡饃 お迎えしました!ガチでこのチャイ語打った瞬間に文字がチャイ語判定かかるのキツすぎ。半角スペース入れるとキャンセルされるけどね。/伊摯パパも子煩悩だよねー。正宵のアルバムにいちいち書き込みしてるのパパなんだそうな。/食物語の主人公すごい幼いというか、調子乗りだよな笑 精神年齢幼い。やんちゃ。/このゲーム本当すごくて、タスクがちゃんと多いしちゃんと食神代理がしそうなことなんですよね。餐庁の管理とか食魂との交流とか。その中でやろうと思ったら本編を進められるんよね。すごいリアルに食神代理ができるのよ。/わあああ……笑 復帰プレゼントで一日一回召喚無料がもらえたんだけど、それで一回召喚して来たのが片児川でした。あいつイスラのこと好きな気持ち隠しもしねえな。ハーリドにも負けるつもりないんだろうね。/うわそんな話だったっけ、正宵はというか食神は空桑の上司とも言える九重天に借金してるんだって。借金肩代わりの夢漫画じゃん。/粽と桃花粥いらっしゃーい!桃花粥はイスラとハーリドが空桑に来て最初に口にしたごはんだったよな。ママ…?ママなの…?/片児川とかにみそ湯包が今のところの一軍って感じになってるな。彼らがいれば一通りのクエストはなんとかなる、っていう。/
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「———鵠羹、鵠羹はどこ!?」「! 正宵、おはよう。朝から騒々しいね。」「太極芋泥…!鵠羹を見なかった…?」「彼なら階下ですれ違ったが……その前に、何か一枚羽織った方がいい。君の部屋ならここから近い。一度戻って———」「鵠羹が、いないの。鵠羹がどこかに行っちゃったの。どこにも、いなくて……」「———わかった。ではこちらを着ていなさい。彼を探しに行こう。」「うん……!ありがとう…。」太極芋泥は自分の着ている羽織物を外して、彼女の肩にかける。正宵は必死に眼を開いて、息も上がっていて……これは彼女が稀に起こす、“孤独発作”なのだとすぐに分かった。
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……正宵は幼い頃から、悪夢を見ては、誰之がいない、探さなくてはと飛び起きて、いないいないと叫びながら空桑を彷徨うきらいがあった。それを長年目にしてきた食魂たちは、この正宵の変異を“孤独発作”などと呼び、彼女の目当ての相手が見つかるまで供をして探しに歩くのだった。…この発作の原因として考えられるのは、まず間違いなく彼女が空桑へやってきた所以だ。孤児。酷い雨の中、奥様に連れられてやってきた二人の子供の姿を、食魂たちは皆よく覚えている。当時の正宵はまだ赤子であったが、しかし、家族と離れた孤独、ずっと自分を抱いていたハーリドと別れた孤独、そんな感情だけは痛烈に覚えているのだろう。食魂たちが発作を起こした彼女に付き添って歩くのは、その感情へ寄り添う行為とも言えるのやもしれなかった。
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「おう、正宵!いい朝だな。」朝の散歩から帰ってきた臘味合蒸と月餅が、にこやかに挨拶をするも。「———!二人とも、鵠羹を見なかった…?階下にいるって聞いて…!」「・・・」二人して、きょとんと顔を見合わせる。これは、いつものアレだと察したのちに……「よし、これは復帰して初めての大仕事だな!」「そうだね、鵠羹探し!」「二人とも。茶化していい場面ではないよ。」「おっと怖い怖い。よし正宵、探しに行こうぜ。俺たちは鵠羹見てないんだけど———」「調理場に行ってみよう。朝はみんなあっちに集まるから。」「!…ありがとう、臘味合蒸も、月餅も。」協力してくれる食魂を見つけるたび、ふつふつと正宵が落ち着いていくのも、いつものことだった。
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「!鵠羹!」「? 若、おはようございます。今朝はよく———」「鵠羹……!」「うわ!……おっと…」出会い頭に抱きつかれ、鵠羹はおそるおそる彼女の背を撫でて、一緒に部屋へ入ってきた太極芋泥たちの表情を見て理解する。「……また悪い夢を見たのですか?」「うん……!鵠羹が、一人だけいなくなっちゃって。探しているのに、もう会えなくて…!」「大丈夫。私はここにいますよ。貴方の腕の中に。」「……!鵠羹、ごめんなさい、よかった……」強く衣を握る手を、鵠羹はやさしく摩るのだった。
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私が、夢で鵠羹がマジで彼一人だけ消えてしまって、空桑のどこにもいなくて、うそ、うそ、なんで?どっか行っちゃった、彼がいないのは本当にまずいのに、ってなって汗かきながら目覚めるっていう経験をしたので、イスラにもそれを体験してもらいました。いやあ、最近食物語ログインしてなかったのにその夢見るのすごいな。そして小噺内で、正宵のこの様子は頻繁に起こることだしその理由は彼女の孤児の生まれからだし名前まで付けられてるみたいな話までやっちゃいました。でもイスラはヒステリー気質ある子だとは思うから。大切な人がいないとなると途端にあわあわする子です。7スタでもそうだったけど。———そして臘味合蒸と月餅はそんなこんなで朝起きた私が復帰特典で一回召喚してすぐに来てくれた臘味合蒸と、ログボで来てくれた月餅なので、出演していただきました。単発で来た臘味合蒸。———やっぱ食物語のテキストの日本語危うい感じをどうにも再現してしまって笑う。/https://twitter.com/shokumono_juku/status/1405405488351649795?s=21と、https://twitter.com/shokumono_juku/status/1407662220150902789?s=21はぇーーーー!!!!片児川!??おまえ部長!??!うそやで。マジか。でもあいつたしかに食文化にはめっぽう詳しいもんな。見識広いよねその界隈に。そりゃ部長だわ。てか鵠羹も鍋包肉も湯円もいてこんなにいい子ちゃんばっかなのに片児川いるのちょっと面白いけど、あいつも実は真面目に頑張り屋なんよなあ。/https://twitter.com/shokumonogatari/status/1413702823934447617?s=21それから、https://twitter.com/shokumonogatari/status/1416200985597317120?s=21やばすぎたので話す。[第19章、掛け軸]いや可愛いか……????おまえ…片児川おまえ可愛いかよ……。[第20章、最後まで面倒を見る]びっくりだよね。片児川あいつ普通に良いやつなのかよ。ていうかなんかあれなんやろな、片児川とイスラって悟とエミヤみたいな感じなんやろな。悔しいわ。傾向が似てるの悔しいです。でもそうなんだろうな。でもってイスラはすでに片児川のこういう優しいところも知ってて、知っててそれで、あーもううざったいなあ、みたいな態度も取るんだろうな。贅沢な反抗。[第20章、桂も、もっと]びっくりだよね!!!!なにそれ!?まっったく知らなかった話出されてびっくりですわ。マジで?いや、そうじゃないかなぁとは思ってたけどマジで劣等感が背後にあるんか片児川。おまえエモいじゃん。なにエモくなっとんねん。いや別に良いんだけどさ。マジか……。[第20章、今日は雨じゃない~ずっと価値がある傘]自信の証…………。片児川おまえほんとに…片児川……。一句読んでしまった……。ていうかそうやってナチュラルにスキンシップしてくるんやろうなこいつ。イスラ、簡単に靡いちゃあきませんよ、あ、もう慣れてるから特になんとも思わない?それはそれでいかがなものかと…笑 ごめんねめんどくさい親戚のおばさんして。ていうかもうこの漫画で分かったんやけどさ、「本性隠す系のキャラクターでもそこまで完璧に隠しきるもんじゃないぞってところまで、アプリ内では自信の無さを隠して、ナショナルアイデンティティの間で揺らぎつつもハーリドとのふれあいを通して徐々に「中立」を確立しつつあるイスラの彼氏面する片児川」ってわけじゃん……。お互いを一等星だと思い合っている片イスやばなのでは…?こいつらやばいやん……。片イスやばかった……。/https://twitter.com/shokumonogatari/status/1621358286460289024?s=46&t=AXLMFFS_nWis2ShEy2NDTQ うそうそうそうそ……。サ終……です……。コンセプトはめっちゃ良かったし、食魂一人一人の性格がしっかりしてるのも良かったけどな……。ハーイスは三浦島悟のようにどこかに回収されるわけでもないので、「こんな可能性がありましたとさ」で終わってしまうわけではあるんだけど……。https://twitter.com/shokumonogatari/status/1644173490277478400?s=46&t=P3YzFeMCkjMW6g0SNP8YjA 終わって…………しまった………ありがとう。新しいハーリドとイスラを生み出せたのもそうだし、ハーリドの世話をしてくれたラーメン屋のおじさんとか、イスラを育ててくれた両親とか、食魂達とか、彼らを取り巻く新しい登場人物達を記録できたのもすごくよかった。感謝してます。ありがとう。たった2年だったそうです。嘘だろ…感覚的に3〜4年くらい続いてたと思ってた。ありがとう。食物語との思い出はこれからのハーイスの歴史に活かして参ります。/

【食魂順】

鵠羹→鍋包肉→かにみそ湯包→煲仔飯→エビチリ→青団子→担仔麺→太極芋泥→龍須酥→双皮ミルク→糖葫芦→カ仔煎→片児川→松鼠桂魚→湯円→春巻→猫耳朶→驢打滾→魚香肉絲→ドウジャオ魚頭→調味料→【粽→桃花粥】→臘味合蒸→月餅→

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