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コロナ禍の「家計補償200万円」案

緊急事態宣言の発令により外出自粛が求められ、テレビではコメンテーターが「何より命が大切だから、今は経済よりも人命です。不便なこともあるけれど今はじっと我慢の時です」と話していたが、この人たちは経済的な不安がないのだろうな、と思ってしまう。大企業に勤めているわけでなくそもそもの蓄えのない人々は、コロナで死ぬより前に仕事がなくなることにより生活費やローン返済がままならなくなって社会的な立場を失い(場合によっては)死んでしまうかもしれないという不安が先立ち、経済より人命が大切というのは百も承知のうえでこの手の優等生的見解を素直に聞くことはできないだろう。
片や、経済活動が滞ってきて経済的な見通しが立たない人に補償を、と政府をはじめとした行政にリクエストをする人たちもいる。でも、不思議なことにどうやって本当に役に立つ補償を行うのかという現実的な対策や財源の話をする識者は(僕の知っている限り)いないように思うので、考えてみた。

政府が掲げたコロナ対策の財政支出のうちいわゆる真水と見られているのは39兆円。そのうち経済的に困っている人への対策としては「企業の資金繰り支援のための納税や社会保険料の支払い猶予」「中小企業向けの無利子・無担保融資」「月収減などの条件を満たした世帯への給付金」あたりになるのだろう。しかし、これらの文字面に緊急事態を救うようなインパクトは全くなく、平時の市役所のロビーに貼ってあるポスターで謳ってそうな施策に見える。この対策を新聞やテレビで見聞きした人が「ああ、これで当分大丈夫だ、コロナ撲滅まで人とは接触せず、じっとしていよう」と思うだろうか?何よりいかにも役人が考えそうなことだと思うのは「支払い猶予」「無利子・無担保融資」などの「なんだ、結局はいつか支払いが要るんじゃないか」ということを問題だと感じない無神経さ。今までに経験のないこの先どうなるかわからない状況で「あとで結構ですよ」が救済策になるはずもなく、ため息も出ない。この財源の多くは国債で賄うというのも、いつもの先送り無責任で、結局のところ当事者意識や責任感や想像力がなく、いかにも自分の生活は未来永劫大丈夫だと自負する国家公務員あたりが考えたノーアイデアな対策だと思う。

たとえば、
「無条件で全世帯に一律200万円を給付します」
というような、わかりやすく心強い対策はとれないのだろうか?

住民基本台帳による平成31年1月1日現在の日本の世帯数は約5700万世帯なので、単純に一世帯当たり200万円を一律給付するためには114兆円の財源が必要になる。これは今年度の国家予算102兆円より多く、昨年度のGDP約560兆円の約2割となり、真水で自前で用意するには巨額である。先に国家公務員に失礼なことを書いたが、政府も国債に頼るほか先立つものはないのだろう。その枠の中で対策を作れと言われる彼らも気の毒な面はあるが、先立つものは政府になくても日本にはある。
それは、大企業の内部留保だ。2018年度の統計では全産業で463兆1308億円が利益余剰金として留保されている。これは金融業と保険業を除く数字なので実際はもっと多い額になるだろう。この30%を使うことが出来れば140兆円程度を国民の窮地を救う財源にできる。全世帯に200万円を給付してもお釣りがくるし、200万円くらいなら不要な富裕層がいればこれを辞退することによる税優遇(控除の増額や固定資産税の減額など)を適用すればいい。

非常事態にあたり内部留保金の30%を対策費に拠出せよ、という命令は残念ながら今の憲法下で政府から出せない。なので仕方ないが要請レベルで「内部留保から30%程度を支援いただいた企業名を公表します」という条件で募ればいい。いつかまた日常を取り戻せたら、生き残った人々が抱くであろうこの拠出を行った企業に対するロイヤリティはどんな広告キャンペーンや広報活動も及ばない強固なものになるはずだから、社会から得た利益の使いみちとして決して悪いものではないように思う。拠出に応じた企業には、無条件で向こう10年間損金を繰り越せる法人税の特例措置を導入し、この危機による減益を取り戻すまでの支援を行うことにすればよい。

自分はこれを提案する場所もなく立場でもないのでここに書くしかないが、機会や権力のあるきちんとした大人に一度検討してもらえればありがたいのだが。


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