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EC物流奮闘記~物流エンジニアのお話 : Episode 8

物流の事を何も知らない人がEC企業に入社し、様々な経験をし、物流エンジニアとして、奮闘するお話です。


#2-1 : 異質な現場

さらなる拡大を目指して、関西に新規拠点をオープンさせることになり、
現地立上メンバーとして、現地に駐在になるのだが。

変則的な出張

無事、またHolidayを乗り切り、新たな年がスタートしたが、既に関西の新規拠点計画は、着々と進んでいました。新たに導入するシステムとそれに合わせた装置の選定、設計を進めるのでした。

まるっきり新規倉庫に大規模な装置を導入するということが、初めての試みだっただけに、様々な部署が手探りでこのプロジェクトを進めるのでした。

そんな中、現地で設備導入リーダーとして、現地常駐するよう業務命令が下るのでした。ローンチ後、現地で施設管理担当となる人と、サポートで入る人、自分の3名で、現地の工事管理等を廻すことになったのだ。

施設管理担当の人は、既に現地へ転居することになっていたのだが、私ともう一人は、業務の時は、関西。休日は、自宅に戻るよう、指示されるのでした。つまり、毎週出張することになるということ。

この頃は、長期出張規定等の規定がなく、通常の出張規定が適用されることになっていた。つまり、休日は、会社から宿泊費が出ないので、自宅に戻ることを強要される訳。まだ、会社の規定等が十分にカバーできていない時期の暫定対応なのだ。

会社でコーポレートホテルを設定していただき、宿泊場所の確保したが、宿泊場所から現地までは、距離があり、毎日、タクシーは、経費の無駄だよねということで、市川FCで業務連絡用車両の1台を関西に送って、業務連絡用車両として出張組の足とすることになった。

まだ完成していない倉庫

ゴールデンウィークが明け、いよいよ工事開始となる訳だが、倉庫は、まだ完成していない。そんな中でテナント工事を行うのだ。普通は、建物引き渡しが済んでから、テナント工事を行うのだが、オーナー承認のもと、オーナー工事の下にテナント工事が入るという変則なのだ。

建物の引き渡し予定が9月、開業予定が9月。ピーク12月。
12月に開業は、様々な点から無理があり、どうしてもピーク3か月前には、ローンチしておかなければ、ピークに間に合わない計算だったと思う。

建物の引き渡しが9月では、その後にテナント工事を、はじめても間に合わない事が事前に判明したため、急遽、交渉してテナント工事を本体工事期間に組み込んだようだ。会社として、初めての出来事であり、事前調整不足だったかと、今になって思う。

当時は、こういうことが、あちらこちらで散見された。どうしたかというと、やってしまったものは、仕方ない。みんなでキャッチアップするよ。
とそれぞれが協力できる範囲で協力していったのである。

そういう自分は、全く新しい事を経験することになるので、どうしたらいいのかという気持ちと、新しい取組をするんだなという気持ち、それに対する責任感を感じていた。そんな中でのスタートだった。

工事期間中は、もちろん事務所なんかない。建築中の内装工事も終わっていない休憩室になる予定の部屋を臨時事務所とした。3GのモバイルWi-Fi 1台とレンタルした机とコピー機を用意した簡素な事務所である。

ベンチャーっぽいと言えば、そうかもしれない。

IT企業と言ったら、笑ってしまうくらいお粗末である。そういう自分は、全く気にしていなかった。PC広げられる机と椅子があれば、十分だった。

そういう環境で、期日までに進め、開業しなければいけなかったのだ。

どうやって現場の状況を知ってもらうか

テナント工事も開始し、日々経過すると、会社の動きがわからなくなる。どんなミーティングがもたれ、どんな決定がされているかだ。実は、打ち合わせがあって、変更があったということを協力会社から聞くこともあった。

そんなある日、上司と電話で話すことに。
現場管理は、山あり谷ありで何とかしていますが、変更連絡がなく困っていると伝えると、上司からも現地で何が進んでいるのか、こっちもよくわかっていないことを伝えられる。

お互いに意思疎通がうまくいっていない事をやんわり伝えられたのだ。

確かに、自分たちが大変な事は、現地でしかわからない。
情報の発信や見せる化をしていないなということに気づく。
毎日は、難しいので、週報という形で発信することを上司に約束する。

現場は、毎日、作業しているエリアを見廻ったりしているので、写真は、豊富にある。ただ、それだけを送っても、順調なのか、大変なのかは、わからないので、工程表から、ガントチャートを使った進捗がわかりやすい工程進捗表に変更して、週報として、技術部門宛に送ることした。

週報は、安全についてと、どの工程に遅れが生じているか、どんな理由なのか、どのようにキャッチアップするのかをレポートし、写真は、各工程の進捗具合をチョイスした。現場も現場でやることがあるので、できるだけ週報に時間をかけずに、今、自分たちが使っているものを活用することにした。

後日、上司から連絡があり、「めちゃくちゃ、わかりやすいよ!」と。

確かにリモートで作業していると、双方が何をやっているか見えにくくなるので、今、現場は、こうだよという情報発信、見せる化は、こちら側の状況を伝えるのに、重要だと感じたのでした。

管理をどうする

テナント工事も徐々に本格的な工事を開始することになるのだが、管理が面倒だった。本体工事の下にぶら下がるテナント工事なので、全体の工事管理は、本体工事を請け負っているゼネコンであり、その下に我々がいるという形だ。

つまり、ゼネコンの管理下なのだが、テナント工事に関わる部分は、こちらの管理下というややっこしい管理になるのだ。工事エリアの取り合いは、本体工事が当たり前だが優先。これは、建築検査や消防検査を考慮すれば、当然と言えば、当然。建物として使用できなければ、本末転倒だからだ。

そんな訳なので、毎日、工程変更が発生する。変更に対応できれば、ありがたいが、そうでない場合は、何もできないということも発生する。
遅延の可能性があれば、テナント工事業者のクレームは、当然、こちらに来るので、ゼネコンとの協議を担当していた施設管理担当は、調整に苦労していた。

そんな中、とある人物がやってくることになる。

何者?助っ人?

施設管理担当は、上司に調整が難航し、大変な事を相談していたようで、会社が契約しているコンサル会社から現地サポートという名目でコンサルを送り込んできた。

当初は、施設管理担当と一緒に行動していたので、ゼネコンとの調整担当かなと思い、テナント工事を粛々と進めていた。ただ、施設管理担当のやりとりを聞いていると、本当に助けになっているのだろうかと疑問に思うこともあった。

ある日、現場事務所でコンサルを交えて、打ち合わせをしていると、コンサルからこんな言葉が出てきたのだ。

「ゼネコンの言う事は、絶対です。」
「ゼネコンの指示に従うのです。」

その場にいた私を含めたメンバー全員は、呆気にとられてしまったのだ。
そんなこと言ったら、何のための調整で、何のためのサポートなのか、全くわからない。理解が追い付かないのである。

Customers rule, Customer obsessionって何だっけ?

この言葉しか、頭を過らないのであった。

真夏の工事

時は過ぎ、夏の季節がやってきた。この頃になると、ゼネコン側の工事も検査に向けた工事と事務所等の内装工事がメインとなっていたので、倉庫内の工事は、ほぼテナント工事となっていた。

暑いのだが、1階は、シャッターを全開すると、潮風が通り抜けて作業環境は、まあまあ良い方なのだ。一方、風が全く入らず、換気扇だけの上層階は、灼熱といっても過言でない程、作業環境は、劣悪だった。安全第一と言いながらも、工事作業者への熱中症の対策が施されていない。メンバーの中では、これを問題視してした。

本体工事に付随した工事でアマゾンが発注したエアコンが据え付けられていた。これを動かして、熱中症対策をしたいとゼネコン側と設備管理担当の間で交渉を行うも、ゼネコンは、首を縦に振らない。電気代をアマゾンが全額負担すると申し出てもだ。

早急な熱中症対策は、メンバー内共通の早期対策項目であると認識だった。

折も折、派遣されているコンサルがテナント工事業者に、ゼネコンの指示に従えと勝手に指導していることが判明する。

流石に口出ししては、いけない領域に口出しをしてきたので、コンサルに問いただすことにした。これまでの経緯を踏まえたものと、やんわりとこちらのリクエストを混ぜたものだ。内容は、以下のとおりだ。

・ 工事業者の直接指導は、お願いしていない。
・ もし何かあるなら、こちらに話を通してほしいこと
・ 勝手に動かないでいただきたい事
・ 安全第一を考える上で、熱中症対策は、どのように考えているのか
・ どこからの依頼で派遣されているのですか?
・ アマゾンからの依頼であれば、我々の意向をくみ取って欲しい
・ 施設管理担当がエアコン稼動交渉で苦労しているのだから、
  そのサポートが最優先事項ではないのか?

工事監督も困惑していましたし、指示系統が複数あるのは、何より現場が混乱します。混乱を招く要因は、排除しなければなりません。

ゼネコンとは、協議、合意事項については、こちらの意向を尊重してくれましたし、未決事項については、ゼネコンの指示を尊重していました。

要は、コンサルの言っていること、やっていることが現実に即していない、顧客の期待値に応えていない割には、現場に口出しをして、混乱を引き起こそうとしているように見えるのでした。

翌日、上司から「昨日、おもしろい事があったみたいね」と連絡がありました。どうやら、そのコンサル会社から連絡が入ったのだろうと思いました。そういう話が伝わるのは、速いなと。

こんな話が伝わってくれたおかげもあって、会社側も安全に対する危機感を持ったのか、工事関係者向けに水とアイスを供給することを決めてくれました。アイスケースが届いたので、ペットボトルの水をアイスケースに入れ、凍らせ、上層階で作業する人たちに持って上がり、少しでも涼むように、指示したのでした。

結局、空調機が稼動したのは、工事のピークも過ぎた頃からでした。


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