予想外の配達物 ノベル作品集            シナリオ&コンテンツ企画専攻3年 出町 基

夏のくそ暑い日に家でだらだらしているとピンポンと、インターホンが鳴った。

「はーい」

そう返事をしてドアを開けた。すると、

「宅急便でーす」

宅急便……はて、何か頼んだだろうか、親からの仕送りは今月はもうないし、うーん、とりあえず、受け取れば何か思い出すだろうと思いそのまま荷物を受け取った。

「重っ……」

そんなに大きな荷物でもないはずなのにズシッと重さが腕にのしかかる。なんとかリビングまで運び、送り主の名前と中身を確認する。

「じい……ちゃん?」

送り先は去年死んだはずの祖父からだった。

「まぁとりあえず開けるか……」

開けて俺は驚愕した。

「すぅ……」

可愛い女の子がダンボールの中で寝ていた。

「こんな漫画とかアニメの世界みたいなことってあるんだな」

そんなことを呟いて待っていると、

「んう……着いた……」

「お……おはよう」

キョドってしまった。この子に女の子耐性がないのがバレてしまう。

「おお! 久しぶりじゃの」

久しぶり……じゃの?この喋り方……この語尾……

「ま、ま、ま、まさか」

「多分考えてる事で当たりじゃよ」

「じ、じいちゃん!?」

そ、そんなことがあるはずがない……

「驚いておるなぁ」

「ふぉっふぉっふぉ驚くだろダンボールの中に人が入っててなおかつ死んだはずのじいちゃんだったなんて」

本当に心臓が止まるかと思った。女の子として生き返ってきたじいちゃんの代わりに俺が死ぬところだった。

「それはそうとその姿どうしたんだよ」

「わしが生きている間ロボットを作っていたのは知っておるじゃろ?」

確かに行く度、色々作ったのを見せられたのを思い出した。それと何の関係があるのかと思った。

「だから、わしは、記憶の一部をロボットに移すことを考えたんじゃ」

「なるほど、生きてる時から頭おかしいとは思ってたけどほんとにやったのか」

このじいちゃん只者じゃないとは思っていたけれど、やる事も、それを成功させるのもぶっとんでるな。

「じゃあ今のじいちゃんはロボットの体で生き続けてるってことでいいのか?」

見た目も声も完全に普通の可愛い女の子である

「そうじゃのぉ」

「ていうかよりによってなんでその姿なんだよ」

「せっかくなら可愛い女の子がいいじゃろ」

改めて言おうこのじいちゃん色んな意味でぶっとんでやがる。そんなことを考えていると

ピンポーンと、またインターホンがなった。そしてその後に、

「先輩~開けてくださーい」

じいちゃんの生還があまりにも衝撃すぎて忘れていたが今日は部活の女の後輩が俺に勉強を教えて欲しいと、家に来る日だったのだ。

「ちょ、じいちゃんどっか隠れて」

「な、なんでじゃ」

「今の状況説明するのがめんどくさいからだよ」

こんなことをしている最中にも後輩はどんどんとドアをたたいている。

「せーんーぱーいーあーけーてーくーだーさーいーよー」

「ちょ、ちょっと待てって」

てか前にあいつに置き鍵の場所教えたような、とか考えていると、その予感は的中した。ドアノブにカギを差し込む音が聞こえたと同時に、俺の全身の毛穴から嫌な汗が噴き出した。

「わあああ」

大きい声をあげ俺は後輩の前に立ちはだかった。

「わぁ!?なんなんすか先輩」

後輩はとても驚いていたがそんなことは気にせず、続けて

「きょ、今日は俺のおごりでいいからファミレスにしないか?」

「嫌ですよーここ来るまで暑かったんですから」

前に立って手を広げていた俺をすり抜けて部屋の中に入っていった。

「あ、ちょっ」

静止も間に合わずじいちゃん(美少女ロボット)が見つかってしまった。

「先輩、この女誰っすか」

後輩の声が今まで聞いたことのないくらい冷たくなった。

「そ、それは」

ごまかしきれない、そう思い白状しようと口を開こうとした瞬間、

「ちょーかわいいじゃないっすか」

後輩がじいちゃんをわしゃわしゃと撫でまわしている。俺からしたら珍妙な絵図だった。

「君どこの子! 先輩とは! どんな関係なんすか!」

などど質問攻めにしていた。それに耐えきれなかったじいちゃんが、

「ええい! やめんか!」

「え?」

突然の大声にと口調に後輩は固まってしまった。

「わしはそこの男の祖父じゃ!」

「またまたぁ、大人をからかうもんじゃないっすよ、ね?先輩」

と、俺の方を見てきたので、

「じいちゃんの言ってることは本当だよ」

そう言って、その後に後輩に事の経緯を説明をした。

「う、うーんにわかには信じ難いけどそんなことあるんすね」

困惑はしていたが信じてくれた。俺が言うのもなんだが、よく信じてくれたなと思った。

「そういえば小娘、貴様は孫の何なのじゃ」

俺が後輩だと答えようとした瞬間、

「彼女っす!」

と、爆弾発言をした。

「そうかそうか」

じいちゃんはとても嬉しそうな顔で、後輩の言ったことを信じていた。

「お前は噓つくな、じいちゃんも信じるなって」

と、頭にチョップを入れた

「あはは、ごめんなさーい」

「嘘だったのか……」

じいちゃんはしょんぼりとしていた。

「孫にいい彼女が出来たと思っておったのにのぉ…」

「いい彼女らしいっすよ」

はぁ……この二人は……

「自分でそれを肯定したら台無しだろ……ってかお前今日俺の家に勉強しに来たんだろうが」

「あっ、そうだったっすね」

忘れてたのかこいつ……まぁおれもじいちゃんの登場でこいつが来ること忘れてたし人のことは言えないが……


その後勉強をし終え暗くなった頃、

「そろそろお前帰らないとやばいぞ」

「え〜先輩泊まってっちゃダメっすかぁ」

こいつ少しは俺に危機感をもったらどうなんだと思いながら

「だめだ、帰れ」

「ちえ〜じゃまた明日っす」

「おう、明日な」

そして俺にはもう一人帰さないといけないのがいる。

「じいちゃんも家帰れよここからならそんな遠くないだろ」

「帰らぬぞ?」

は?何言ってるんだ。

「だってこうやって生き返ったし家には帰れるだろ」

「お前こそ何を言ってるんじゃ?ワシが死んだあとあの家売ったじゃろ遺言書にもそう書いたしの」

そうだった。完全に忘れていた。

「じゃあどこ行くんだよ」

「ここで暮らすんじゃ」

「えええええ」

深夜のアパートに俺の大声が響いた。ちなみに叫んだせいで後日死ぬほど怒られた。

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