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モンゴル食紀行/食思考 第5回 食行動の環世界 太田充胤

「モンゴルにはつい最近まで、『美味しい』という概念がなかったんです」

ムギさんがさらりと垣間見せたこの未知の世界観に、天地がひっくり返るような思いがした。美味しい、という概念なしに成り立っている食の世界とは、いったいどのようなものなのか、にわかには想像ができなかった。

「モンゴル人は、お腹いっぱいになることが大事。羊の肉を寸胴に放り込んで、煮込んでスープにして、塩で味付けする、それだけ。スパイスとかも使わない。日本に留学して、はじめのころはご飯が少なくて本当に辛かったです。でもそのあとだんだん、日本人がどういうものを『美味しい』と思うのかがわかってきた」

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