銃刀法はいつもイタチごっこ
■はじめに
突然ですが、日本で銃の所持が自由化されたら…どうしますか?
アメリカでは合衆国憲法で「武器の所持」が権利として認められています。そのため全米ライフル協会という強力なロビー団体は「人を殺すのは人であって銃ではない」と言って銃そのものを規制しても犯罪は防げないという主張をしているほど。トランプ前大統領も下記の記事で「銃を持つ悪人を止める唯一の方法は、銃を持った善人だ」と言ったそうです。
本noteではこの度国会で審議されることになった「銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律案」(銃刀法改正案:以下「本法案」)について考えてみたいと思います。対象とするものは2024年第213通常国会で法案が提出される『銃刀法(昭和三十三年法第六号)改正法案』です。
2022年の安倍元首相銃撃事件、2023年長野県の警察官2名を含む4人殺害事件など、従来の法で対応できていない事件が相次いで起きました。この二つの事件を警察庁が重視していることは『警察白書』に記載されていることから良く分かります。
銃の使用による犯罪の多くは暴力団抗争事件にかかわるものでした。それが、平成4年暴力団対策法が成立し、その3年後にはかなりの件数が減ったのです。
暴力団の力が弱体化の道を進む一方で、銃器を使用した犯罪は暴力団だけを監視することでは困難な時代に突入します。一般国民をも含めた法規制の必要性が高まっていくことになります。法務省の『令和5年版犯罪白書』(39ページ)によると「銃刀法」による逮捕関係総数は5,513人、逮捕・身柄送付致数は879件となっています。警察庁の『日本の銃器情勢』(令和4年版)では「令和4年における銃器発砲事件の発生事件数は9件、このうち暴力団等によるとみられるものは6件」だそうです。
わが国が世界的にみても治安が良好な状態に維持され、市民生活が安全かつ平穏に営まれている大きな理由としては銃規制の存在が大きいと思います。わたしは銃を誰でも持てる国が良いのかどうか、判断は難しいと考えます。しかし、銃の所持や発砲等が規制されることと、銃の所持を自由化することでかえって犯罪防止の規制が多くできることを比べた場合、前者の方が規制の総量は少なくなるのではないかと考えます。現時点では最初から持たない部分を規制することが根本的な対策なのかな、と思います。規制を少なくする点から現在の銃刀法を見てみると、法自体が悪法ではなく、改正も許容範囲であると思います。銃所持の自由化の可否を考えない前提で言えば、今回の改正については賛成の立場で記しています。
銃規制に関する話題は減税新聞でも取り上げられています。
■銃刀法をめぐる問題
現在の「銃砲刀剣類所持等取締法」は昭和33年の成立当初は「銃砲刀剣類等所持取締法」として「所持」を中心とした銃規制法です。それが数多くの改正を繰り返し現在の形になっています。
銃刀法は特別刑法であり、銃刀など人を殺傷する武器に対する個別法です。銃刀法で定められている内容は次の通りです。現在では所持から発砲に至る銃の使用状況の各段階ごとに禁止規定が設けられていることが分かります。そして根本である「所持」に対して特に詳細な規定が設けられているのが特徴です。
現在日本では「所持許可」を得ている人が銃器を使用できることになっています。その許可数は約19万2000丁。そして銃器を購入するためには、以下の手順が必要とのことです。
上の記事ではサラッと書いてありますが、12段階をパスというのは相当大変です。その分、警察庁も我が国の銃規制には自信があるようで『警察白書」に次の通り記載しています。しかし、逆の見方もあります。銃規制がしっかりしているからこそ日本でも銃の所持を自由化すれば、犯罪を抑止できるのではないか、ということです。おそらく我が国の現行の銃規制が支持されているのは「感情論」だけなのではないかとも考えます。
■銃刀法改正について
本法案の提出理由です。
改正内容は次の通りです。本法案提出時の『概要』書では改正条文の詳細が分かりにくいため、事前評価による規制の変更点を紹介します。
改正法の主眼としてはインターネットで、銃の製造方法が容易に入手できる現状への対策が必要だとして、銃を製造して所持するようそそのかす内容の投稿を行うことについて、新たに罰則を設けます。そして電磁石銃が銃器の種類に追加されました。
参考に『概要』書を以下にお示しします。
法第二条は銃砲に関する定義の条文です。これが次のように変更となります(定義を項立てしたことによる変更と太字部分追加分)。
第十一条は許可の取り消しに関する条文です。いわゆる眠り銃(使用していない銃)の期間を3年から2年に短縮されました。
ライフル銃に関する規定については旧法では継続して十年以上猟銃の許可を受けている人しか持てませんでした(十年未満特例もあったが)。その一方、ハーフライフルは「散弾銃およびライフル銃以外の猟銃」とされていて狩猟の目的であれば所持が認められています。
しかし、本法案ではライフルと同等の規制に集約。これにより事業(特に公共、農林業など)に対する被害を防止するためライフル銃による獣類の捕獲等を必要とする者という規定を分けて記載し、併せて都道府県及び都道府県警察の通達による運用により、初年度からハーフライフルを所持できるように変更するとのことです(この部分は具体的には本法案では読み取れない)。
■ライフルについて
長野県4人殺害事件において使用されたのが「ハーフライフル銃」であったということです。狩猟経験もあまりなさそうな犯人がなぜライフルを持てたのか、不明な部分もあります。
ライフルとは長距離射撃を可能にするために銃身内部にらせん状の切り込み(ライフリング)を入れている銃とのことです。ハーフライフルは実際は散弾銃のようなものに途中までライフリングをし、特別な弾丸(スラッグ弾と呼ばれる)を装填して発射する仕組みとなっているそうで、散弾銃より遠くの標的に射撃することが可能だそうです。そのため、北海道ではヒグマやエゾシカの狩猟のために用いられるとのこと。ハーフライフルについては下記のリンクを参照しました。
今回の法改正で最も影響を受けたのも、北海道での狩猟だそうです。北海道猟友会や一般社団法人エゾシカ協会、ヒグマの会などが警察庁とのすり合わせを行い、運用による解決を行うこととしたそうです。
(エゾシカ協会 「警察庁の説明を受けて~エゾシカ協会・ヒグマの会からの懸念事項とその回答~」(2024.2.20))
浜田参議院議員に質問してほしい!
減税と規制緩和に賛成で、国会でも政府に鋭い質問をしてくださる参議院議員NHK党の浜田議員に、ぜひとも国会で質問して欲しいな〜と思うことを番外編として掲載しています。(^_^)
【質問1】
今回の法改正のきっかけにもなった長野県で起きた4人殺害事件の犯人は猟銃所持の許可を得ていたそうですが、年1回の定期点検の際、狩猟の実績などに関する聞き取りは行われなかったのでしょうか? 谷公安委員長は「手続き上は問題がなかった」との認識をされているようですが、その後の捜査の状況をお聞かせください。
(質問に際し下記の記事をご参照ください)
【質問2】
今回の法改正でハーフライフルの所持には希望者の申請を受けて都道府県の確認を経て都道府県警察の審査、許可という流れで所持許可が得られるとのことですが、なぜ法文に記載する形を取らなかったのでしょうか? また、国家公安委員会・警察庁による『規制の事前評価』によると「現行より厳格な基準が求められることから、審査等に係る事務的負担が増加するとも考えられる」と記載されており、手続きが複雑すぎる場合、所持許可の運用が形骸化する恐れがあります。かえって不要な銃の所持が横行する恐れはないのでしょうか。
(質問に際し上の記事をご参照ください)
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