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新聞記事からドイツ軍の組織体制を丸裸にした「ヤコブ事件」

今回は元防衛相情報分析官の上田篤盛さんが書いた「戦略的インテリジェンス入門」(並木書房)の紹介をします。

1.オシントの重要性を示すエピソード

オシントはOpen Source Intelligenceの略で、公表資料、地図、新聞、ネット、TV、雑誌、書籍など誰でも閲覧可能な公開情報源からえられた有益な知見(インテリジェンス)のことです。
この書籍では新聞記事から、ナチスドイツの軍の組織体制を推測したヤコブという医師の話が紹介されていました。

オシントだけでドイツ軍の組織の全貌が明らかになった著名な事例としてヤコブ事件が挙げられる。当時、ナチスから追放され、スイスに亡命中のドイツ人医師ヤコブが書いたドイツ軍に関する小説のなかで、ドイツの軍事組織の詳細が明らかになった。
 これに激怒したヒトラーは、ドイツ軍の何者かがヤコブに情報を漏洩したと考えて情報機関に調査を命じた。情報機関はヤコブを誘拐し、スイスからドイツに連れ出し、ドイツ調査委員会においてヤコブに尋問した。しかし彼は「すべての情報はドイツの新聞から得たものだ」とし、スパイ容疑を否認した。実は彼はドイツ軍の結婚式や葬儀の出席者を丹念に調査し、ここからドイツ軍の指揮官名や編成組織を解明したのであった。
出典:『知恵の戦い-諜報、情報活動の解剖』ほか

出典:上田篤盛著「戦略的インテリジェンス入門」並木書房、44頁

2.結婚式や葬式から推測する方法

冠婚葬祭から軍の組織の全貌を明らかにする知恵に脱帽しました。
ここからは完全に推測ですが、どうやって軍の組織を調べたのが想像してみます。

まず結婚式では新郎が部下、出席者が上官というパターンの関係図の情報を沢山得られたのかなと思います。
※もしドイツの結婚式で上官が参列する慣習があればですが
そこでもし新郎の所属が記事で紹介されていれば、参列者はその部門の上官と推測できます。これをいくつかの結婚の記事で繰り返せして、共通の上官がいれば、上官の所属組織の予測も正確になっていきそうです。同じスタンスで葬式の参列者の部門の推測を書き出し、複数の記事で照合すれば軍の組織に関する推測は出来そうです。

3.Googleではヤコブ事件の記事を見つけられず

ヤコブ事件が面白そうと思いドイツ語でググりましたが、関連しそうな文献が出てきませんでした。

出典:『知恵の戦い-諜報、情報活動の解剖』ほかとあったのでこの書籍を国会図書館で見てみないといけなそうです。
試してみます。

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