旧バトルレポート

アキュシー…炎の領域とされるその地は、かつてヴァンダス・ハンマーハンド率いる『ハンマー・オヴ・シグマー』の精鋭達が、コーゴス・クール率いるゴア・タイドと戦った地であり、シグマーの怒りの鉄槌が、文字通りの雷として初めて下された地に他ならない。
そこに今一度、シグマーは新たなる精鋭を送り込むことを決意した。


『ブレイド・オヴ・シグマー』
ヴァンダス率いる『ハンマー・オヴ・シグマー』に肩を並べるべく、シグマーの両翼たるべく編成されたストームホスト。
“雷刃”と称されるロード・セレスタント、アルヴィンに率いられる白き永劫者の軍を、シグマーはアキュシーへと遣わすことを決したのだった。
それは、その地に渾沌の禍々しき策謀の蠢くことを察したからに他ならない。


それを報せて来たのは、アルヴィン・サンダーブレイドの盟友であり、十勇士の一人、ロード・アクィラーたるレオリック・ストームブレイド。彼が放ったヴァンガード・チェンバーの精鋭達が、一人の渾沌の将と、その周囲に蠢く策謀の気配を掴んだのだと言うのだ。


渾沌に気取られてはならぬ。


そう、意を決したアルヴィンは、単騎アキュシーのストームキープから旅立ち、焔羅の荒野へと続く“魔の間道”を歩むことを決意する。
そして、配下のストームホストをストームキープに待機させたまま、ただ一騎“魔の間道”の入り口に立った時…その背後に、一人の騎士が現れたのだ。
「…閣下。単騎駆けとはなりませぬ。御身の盾として、御身は私がお守りいたす」
ギャラハン・ストームソード。かつて、アズィルへと続く最後の境界門の門前にて、かつてありし日のアルヴィンと共に、グレーターディーモン・オヴ・コーン、ラヴァーザリアスへと立ち向かい、その斧に散っていった勇士の一人。
「…やれやれ。そなたに見つかっては逃れることもなるまいよ」
苦笑と共に、アルヴィンはシグマライト・ウォークロークを翻し、腥気淀む間道へとその歩を踏み入れたのだった…。


ルーンブレイドが、ウォーブレイドが宙を断たんばかりの剣風を放つ。一人、また一人とコーンの人喰い蛮族共が血溜まりに沈む。
「…きりがないな」
「然様…。閣下、ご無理は禁物にて」
アルヴィンの振るうルーンブレイドがその鋭さを欠いていた。“魔の間道”に漂う瘴気が、ロード・セレスタントにまつわりつき、その太刀ゆきを阻み、その運足の枷となり、“雷刃”とまで称された太刀捌きを曇らせる。
それでも、ギャラハンの存在がアルヴィンへと蠢き纏わりつく瘴気の量を減らしていてくれていたのだ。
また、濁った角笛の音が鳴り響いた。
骸の神の軍旗を押し立て、チーフテンに率いられた人喰いが群れを成す。
「…是非も無し。ギャラハン、突破するぞ」
「御意」
まさに、阿吽の呼吸。盾を掲げたギャラハンが堅牢なる守りの構えを成し、その不壊なる盾の背後から、アルヴィンのシグマライト・ウォークロークが魔力の輝きを放った。無数のハンマーのかたちを成したアズィルの魔力は、群れ成した人喰いどもですら見る間に薙ぎ払い叩き伏せてゆく…。
ハイ・シグマライトの清冽な輝きは、人喰い共の穢れた返り血すら寄せ付けぬ。
二人の永劫者は、その歩みを保ち“魔の間道”を進みゆく。


鎧が鳴り、ルーンブレイドとウォーブレイドの放つ清冽にして凄烈な光輝が闇を裂いてゆく。
また、角笛が鳴り渡った。より低く、太く、そしておぞましいばかりの響きを以って。
真紅の鎧に身を纏いし、巨躯の兵。
コーンの寵愛を受けた、ブラッドウォリアーの群れが、間道の出口を塞いでいた。
そして…間道の闇に、陰々と響く声が不意に、二人の永劫者に告げたのだ。
『敵ながら見事と、そう言わざるを得まいな、永劫者よ。
 だが、今貴様らに邪魔だてされるわけにはゆかぬ。
 我が“手駒”は、まだまだ神々の御眼の端に止まったに過ぎぬ。
 今、あの“手駒”を失うわけにはゆかぬのでな…貴様らにアキュシーの地を踏ませるわけには、ゆかぬ。ここで消えてもらおうよ…』
その、言葉と共に。二人の永劫者の前、群れ成すブラッドウォリアーのその中心に、禍々しい陽炎は揺らめいた。
そしてその陽炎は、見る間になおも忌まわしく、禍々しい姿を立ち現したのだ。
『…“先触れ”、“始原の魔皇子”と呼ばれた我…ベ=ラコォールが…貴様らを今度こそ、永劫続く闇へと墜としてくれようぞ…』
漆黒の悪魔。初めて、魔道を極めて人から魔へと成った者。二人の永劫者の前へと現れたのは、闇と渾沌の“不死者”たる、始原のディーモンプリンスであったのだ。
「…閣下。露払いはお任せあれ」
盾を掲げ、ウォープレイドを構えてギャラハンが疾る。
そして、再びウォークロークの魔力がブラッドウォリアー共を打ち据える。
その響きこそが、“魔の間道”の最後の闘いの幕開けだった。
「むぅ…」
思わず、ギャラハンの口許から苦しげな呻きが漏れる。
不死者、永劫者である筈のストームキャストの身体に、明らかな違和感を齎す傷。ディーモンプリンス、ベ=ラコォールの振るう剣には、禍々しい力が込められていた。
ひとつ、またひとつと、ギャラハンの纏うハイ・シグマライトの鎧に傷が、癒えぬ傷が刻まれてゆく。
「下がれ、私が相手をしよう」
半ば強引に、アルヴィンは悪魔と忠実なる騎士との間にその身をおいた。
ナイト・クエスターたるギャラハン以上に瘴気に毒され、太刀筋が乱れている主では、この悪魔に太刀打ちなるまいと、それでも踏み止まらんとしたギャラハンの眼に、清冽なる光輝を増すルーンブレイドの刀身が映る。
これぞ、“雷刃”と恐れられる刃に他ならぬ。
「アルヴィン・サンダーブレイド、推して参る!」
ルーンブレイドから解き放たれた清冽にして凄烈な光輝こそが、ロード・セレスタントとディーモンプリンスとの凄絶なる一騎討ちを告げる狼煙となった。


『おのれ…っ!永劫者を消し去る力、まだ我には荷が重いというのか…!
 おのれ、おのれ永劫者、愚かなるシグマーの尖兵、ストームキャスト共よ…!必ずや…我が“手駒”にて永劫の闇に叩き落してくれようぞ…!』
血に濡れた間道に膝を衝き、刃から禍々しい光を失いながら、悪魔が呻く。
一騎討ちを征したのは、ロード・セレスタントの雷の刃。
今にも消えゆかんとする悪魔の周囲には、主の一騎討ちを守るために、騎士ギャラハンが倒したブラッドウォリアーの屍が累々として伏していた。
「終わりましたな…」
ウォーブレイドを鞘に収めるギャラハンに、アルヴィンはゆるりと首を振ってみせた。
「…これは始まりだ。言うなれば、始まりの終わりであるということだな?」
主には珍しい諧謔に、騎士はひとつ苦笑を零す。
間道は、終わりを迎えていた。二騎の永劫者の前に、アキュシーの真紅の大地が広がってゆく…。
ストームキャスト編第一話 『雷刃降臨』 完

ここではっきり名乗らせました。
べ=ラコォール(最近の表記ではベ=ラコールなんですけどね。ここは懐かしい表記で敢えて)です。
後々ブロークン・レルムのベ=ラコールで綴られますが、ストームキャストの再鍛を防ぐ呪法を彼は諸領域に展開します。
それに先立ち本キャンペーンでは、彼の攻撃がクリティカルヒットし、それによってストームキャストのキャラクターが戦死した場合、再鍛できない、というデータを作っていたのです。

作成者自身、かなりドキドキで遊んだ記憶がありました~

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