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第14回『入れすぎちゃうんですよ』


・五香粉(ウーシャンフェン)…5つのスパイスが混ざっている調味料。麻婆豆腐に入れると、一定確率で「抽象的な麻婆豆腐」(色んな香りが順々にやってくる)になるらしい。

・「〜混ぜるんおもろい」…この欲望を満たすものとしては、ファミリーレストランに併設されているドリンクバーが挙げられる。ここでのオリジナルドリンク製造、というものは好事家たちの間で現在も研究が行われている。
代表的なものとしては「T3」(コーヒー、紅茶、ウーロン茶のホットのミックス)などがある。

・「ごちゃごちゃ言わんと誰が一番強いか決めたらええんや」…87年6月12日、両国国技館にて。新日本プロレスでのIWGP王座決定戦後、リングに上がった長州力がマイクを持ち、”ニューリーダー”と”ナウリーダー”の【世代闘争】をアピールした。その際に前田日明が放った名言(実際にはこの文言を発声はしていない)。99年〜16年までバッファロー吾郎プロデュースにて行われていた大喜利イベント「ダイナマイト関西」のコピーは「ゴチャゴチャ言わんと 誰が一番おもろいんか決めたらええんや」であり、オマージュである。


・中村佑介…1978年生まれ。兵庫県宝塚市出身。大阪芸術大学デザイン学科卒業。ASIAN KUNG-FU GENERATION、さだまさしのCDジャケットをはじめ、『謎解きはディナーのあとで』、『夜は短し歩けよ乙女』、音楽の教科書など数多くの書籍カバーを手掛けるイラストレーター。ほかにもアニメ『四畳半神話大系』や『果汁グミ』TVCMのキャラクターデザイン、セイルズとしてのバンド活動、テレビやラジオ出演、エッセイ執筆など表現は多岐にわたる。初作品集『Blue』は、画集では異例の9.5万部を記録中。(公式ウェブサイトより引用

・シャフト…アニメーション制作会社。本編では具体的に話されていないが、二人が共有している絵作りというのは新房昭之監督による「さよなら絶望先生」の3クール(07〜09)、化物語(09)などであると考えられる。

・【cero『Obscure Ride 』と星野源『YELLOW DANCER』で時代が変わる〜】…2015年に発表された2枚のアルバム。当時シャークくんが年間ベスト記事に該当アルバムを挙げており(一位、二位!)、その際の文章が見つかったのでここに再掲いたします(死ぬほど恥ずかしい)。

1位:星野源『YELLOW DANCER』…ブラックミュージックとJ-POPの融合が見事になされた大傑作。『ブラックミュージック』という言葉が使われる時、その言葉が指すのはファンクネス、黒さ、つまりはビート感覚の事が多い。
実際に、黒人音楽史の本流というのはブルース、ファンク、ヒップホップのような展開を持たないもの、反復音楽であると考えられる。
しかし、このアルバムで星野源が目指した『ブラックミュージック』というのは黒人音楽史からすると傍流であるR&B/ソウル史観(楽曲に構造を持つ。Aメロ、Bメロ、サビといった起承転結がある。)に基づいたものだ。
「ブラックミュージックのメロディ、ハーモニーの素晴らしさ」というのを彼は追求し、D'angeloやThe Weeknd、Tuxedoといった今年アメリカのチャートを騒がせたアーティストたちからの影響を通過させて、更には現代のJ-POPのメロディとまで接続してしまった。
これ一枚でブラックミュージックのトレンドが分かってしまうのだから、知識の密度としてもかなりお得ではないでしょうか。
2015年12月という時期にこのアルバムが出たのも、2015年にこういうことをやったんだ、という彼の音楽史への拘りまで感じる。
上記の3人のアーティストの楽曲からの影響については私が指摘せずとも誰かが詳しく解説してくれるだろうからここでは割愛する。「拝啓、星野源様」的特集を誰かお願いしたい。
直接影響がある訳ではないだろうと思うが、私がこのアルバムを聴いて思い起こしたレコードが一枚あるのでそちらも紹介したい。
Rasa - Everything You See Is Me (1978)

スティービー・ワンダーらも傾倒した「ハレ・クリシュナ」という宗教団体の宣伝用のレコード、というちょっと変わったもので、長らくCD化はされてこなかったのだけれど、昨年、まさかのプロダクション・デシネからCD化。権利関係どうなってるんでしょう。『YELLOW DANCER』で言うなら「Snow Men」のメロディが近いものが。もしかするとCD化で星野源も聴いたかな、とか妄想がすぎますか。
先日、TBSラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』に彼が出演した時には今回のアルバムの音楽についてこう語っていた。

どれだけニュアンスを真似しても、「いやいや、D'angelo聞くから。D'angelo聞くよ」ってなってしまうんじゃないかな?って自分で思ってしまって。やっぱり俺、日本人なんだなと。自分は本当にJ-popが大好きで、あの展開も大好きなので。とにかく、その両方の手綱を絶対に離さないまま最後まで俺は行くんだ!っていう。

(ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル 2015年12月12日放送分より)

この一言を聞いた時にとても感動してしまった。この両方の手綱が『YELLOW DANCER』というタイトルに繋がっているという。ううん、唸るしかないでしょう。

彼の音楽のこれからをずっと追いかけていたいと思う。

2位:cero『Obscure Ride』
星野源『YELLOW DANCER』がR&B/ソウル史観を重視したものなら、このcero『Obscure Ride』は黒人音楽史の本流、ファンク/ヒップホップの反復音楽のビート感覚を消化した作品だ。
今までブラックミュージックのビート感覚を日本のバンドが取り込む時には様々な態度があった。そして多くの場合が『渋谷系』に代表されるような引用と編集を用いた「借り物のビート感覚」を楽しむ、という態度に落ち着いていたと筆者は考える。
特にD'angelo「Voodoo」に代表されるような極限までレイドバックしたビートや、Jディラが生み出したヨレた(ジャズで言う所のスウィングしているという感覚に近い)ビートというのは、日本のオーヴァーグラウンドでは全く聞こえてこない音であった。(同時代の00年代にはもちろん、椎名純平の1stアルバムなど、日本の優れた様々なミュージシャンの試みがあったことは間違いないのだが)
何故こういった音が聴こえてこなかったかというと、そういったブラックミュージックのビートを今までは「黒人のノリ」といった言葉で片付けていた所があったからではないであろうか。(そしてこれは非常にレイシスティックな態度である)
今作でのceroはそういった00年代以降の「黒人のノリ」を見事に獲得している。その土台の上に彼らなりのニューソウルだったり、アフリカンであったり、南米音楽であったり、が乗っかって見事な「折衷」が表現されている。この「作りたい音楽への誠実さ」というのを私は評価したい。ロックが持つ個人主義というか、自然体が1番とか、人の内なる所にこそ凄いものがある、とかいうような考えに最近疑問があって、内を掘っていくよりも先に、肉体的に、外にアクセスしていく人たちの方が良いもの作るじゃないか、ということも同時に考えるのであった。間違いなく歴史に残るアルバム。もちろん世界の音楽史の。

・The Zombies『Odessey and Oracle』…イギリスのロックバンド、ゾンビーズが68年に発表した2ndアルバム。内容としては、前年のThe Beatles『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』に端を発する、イギリスのロックバンドのサイケデリック・アルバムの傑作の一つであると考えられる。PinkFloyd『The Piper at the Gates of Dawn』、Traffic『Mr Fantasy』、Pretty Things『Sf Sorrow』、Small Faces『Ogden's Nut Gone Flake』など枚挙にいとまがない。
名曲『Time of the Season』(邦題:ふたりのシーズン)収録。

・「ダイナソーのJマスキスが〜」…轟音が特徴とされるアメリカのロックバンドDinosaur Jr.のJマスキスは、『Martin & Me』という弾き語りのライブアルバムをリリースしている。

・【山本精一さんのうたもの〜、大友(良英)さんもあるよね】

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