ラジオ「LL教室の試験に出ないJ-POP講座」(4/25土25:00〜O.A)

▼今週の1曲

M-1 スチャダラパーからのライムスター「Forever Young」

矢野:ライムスターとスチャダラパーが一緒にやるのは初めてですね。意外と言えば意外。

森野:どちらかというと、両組ともコラボを仕掛ける側だもんね。

ハシノ:「スチャダラ大作戦」から30周年記念ということで満を持してって感じで。

森野:いつものスチャダラって感じ、安心感があるな〜。

矢野:チェンビ(「Change The Beat」)など定番の声ネタが使われていて、そこにオールドスクール魂を感じます。

▼今週のテーマ「ドライブ」

M-2 キリンジ「双子座グラフィティ」


森野:これがメジャーデビュー曲だよね。まだすごく渋谷系のムーブメントを引きずってる感じで。

矢野:フリーソウルというか。クラビが効いたサウンドはスティービー・ワンダーのようでもあります。

森野:ホーンとかオリジナルラブ感がまだあるよね。イントロは「天気読み」ぽい、というかやっぱりスティービー・ワンダーなのかな。2000年頃からオフコースっぽくなってくる印象があったね。

ハシノ :わかるわかる!たまに歌い方が小田和正になってるときもあるし。

森野:ポップなんだけどもっと憂いのほうに寄ってく、結果的に逆張りみたいになってたのかな。一歩間違えるとダサイってほうになった時代だと思うんだけど。

矢野:「ドライブ」というテーマですが、キリンジって特定の土地を歌っているんですか。

森野:アルバムが「ペーパードライバーズミュージック」っていうぐらいだし、ドライブの情景が浮かぶというよりはもっと頭でっかちな感じだよね。家の中でもしドライブするなら〜って考えているようなことでしょ?

ハシノ:キリンジぐらいからAORっぽさとかクロスオーバーがアリになってきた気がする。

森野:角松敏生とか杉山清貴的な再評価される流れかな。あと、このあたりから冨田ラボがいろんな人をまとめていった感じがあるよね。

矢野:最近の冨田ラボさんはネオソウルみたいな曲も書いていたりしてまた意欲的ですよね。ハシノさんは、キリンジ聴いていましたか?

ハシノ:90年代って、ローファイとか作りが甘いものをよしとする風潮があったと思うんだけど、キリンジがひっくり返したと思ってる。渋谷系にしてもなんだかんだ言って作りは甘かったもん。

森野:当時、バンドやってるとハイファイなものってダサいような感覚があったんだよね。ライブハウスとかのストリート系の一方で、オーディション系の人たちがハイファイなイメージだったな。

矢野:むしろ空気公団とかヨシンバとかと近いサバービアなイメージで見ていた記憶があります。

森野:当時、一般的には歌謡曲っていうと古臭い懐メロのイメージがあったけど、キリンジが同世代から頭一つ抜けたのは歌謡曲っぽさが武器だったんじゃないかな。

ハシノ:今にして思えば、当時は「シティポップ」って表現がなかったし、そういったものを表現するちょうどいい言葉がなくて、それで「歌謡曲」を肯定的に使ってたような感じがある。

M-3 奥田民生「ヒロシマドライブ driving with 電大」

ハシノ:奥田民生の公開ひとり多重録音企画「ひとりカンタビレ」から生まれた曲で、いろんな土地のバージョンが存在する。これはUNICORNのメンバーが参加した広島バージョン。

森野:これはもうシンプルな3コード。曲作りっていうより勢いで作った感じがするよね。

矢野:チャック・ベリーっぽさは、コードが似てるってことですかね。

森野:王道のパターンだね、数限りなく存在するロックンロールやブルースの基本形とも言える感じで。

ハシノ:奥田民生はとにかく車の曲が多くて、車の曲だけでベストアルバムを出したぐらい。いくらでもあるけど、今回は一番新しいのにしました。


M-4 はちみつぱい「月夜のドライブ」

矢野:鈴木慶一率いるはちみつぱいの代表曲ですね。

森野:これ、夜にラジオから流れてきたらいいよね〜。

矢野:はっぴいえんどなどフォークの流れで聴いていたけど、かなりサイケな感じもあって、本当にユニークな音楽だと思います。はちみつぱいはどういう存在なのでしょうか。

ハシノ:あがた森魚のバックバンドが母体っていうけどね。

森野:セッションぽさがある曲は好きだな。

矢野:ceroのファーストが出たとき、はちみつぱいと重ねられていましたよね。

森野:わかる!

ハシノ:わかる!


M-5 サザンオールスターズ「希望の轍」


ハシノ:でたー!

森野:やっぱり、はちみつぱいだと間口が狭くなりすぎるかと思うから聴いといたほうがいいと思うんだよ。

ハシノ:イントロのとこで「ヘイ!」って言ってるの原坊なのかずっと気になってたんすけど

森野:調べたところ、桑田佳祐の声でピッチをいじったらしいという説が有力みたい。これこそドライブミュージックでしょう。

矢野:ライブでもよくやってるイメージ。イントロから盛り上がるし。2002年のロック・イン・ジャパン・フェスの桑田のステージも、1曲目が「希望の轍」でした。この曲って何年でしたっけ?

森野:1990年。「稲村ジェーン」のサントラからのシングルカット。小林武史節がふんだんに盛り込まれてるし、これがJ-POPの誕生なんじゃないかな?

ハシノ:わかるわかる。

森野:Bメロで「タン、タタン」ってなるしね。

ハシノ:大サビもあるし。


M-6 吉幾三「I Love Soul Music」

ハシノ:やたらファンキーなイントロで流麗なストリングスが入ってきて、ってなってるけど実は吉幾三っていう。演歌の世界って基本的に作詞と作曲と歌手は完全に分業になってるんだけど、吉幾三だけが例外的にひとりですべてをこなすシンガーソングライター的な立ち位置でやってる。ソウルミュージックと言っても完全にオシャレな方向には行ききらず、スリー・ディグリーズとかアバみたいな感じなんだけど。

【番外編】時間の都合でオンエアできなかった曲

JAZZ DOMMUNISTERS「DRIVE 2 DRIVE」

矢野:菊地成孔さんと大谷能生さんによるヒップホップのユニット、JAZZ DOMMUNISTERSのセカンドアルバムから。SIMI LABのOMSBが参加しています。

森野:すごい、喋ってる!(笑)

ハシノ:2人とも、いわゆるラッパーのラップという感じではないよね。

矢野:JAZZ DOMMUNISTERSを始めたくらいのとき、大谷さんと個人的に話したことがあるのですが、ラップの系譜としてやってるわけではないと言っていたのが印象的でした。だから、ラップの文脈のみで下手とか言われるとむかつく、と。浪花節とか広沢虎造も入ってるからね、と言っていましたね。

森野:難しい感じがする。「こう聴いてくれ」っていう圧がすごいな…(笑)


ダウン・タウン・ブギウギ・バンド「ほんでもってブンブン」


ハシノ:これもシンプルなロックンロールですけど

森野:これどこで聴いたのかな。誰かが歌ってたの聴いたことあるなあ…。

ハシノ:ポンキッキで子供が歌ってたやつがあって、それの原曲です。ポンキッキだと「ルート2DK」とか歌詞を変えてる。

矢野:ダウン・タウン・ブギウギ・バンドって横浜ではないんですよね。

ハシノ:宇崎竜童が集めたメンバーで、地元が一緒ってわけじゃないはず。京都出身。

矢野 :「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」の印象が強いから横浜だと思ってしまう。横浜特集っていうのもいずれやりたいですね。

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矢野:今回も多彩になりましたね

ハシノ:選曲してて思ったのが、最近の曲でドライブのネタって少ないなって。奥田民生が特異な存在ってだけで。

矢野:ゆずが自転車のふたり乗りをしたあたりから、ドライブの世界観が遠ざかって行った。

森野:ペーパードライバーズミュージックが象徴的で、車の存在がちょっとファンタジーになってきてる。ヴィジュアル系でも車は出てこないんじゃないかな?

ハシノ:バブル期までって感じですかね。

森野:東京の大学生は免許持ってないし、車種もよく知らない。ごく一部の学生が趣味として車をやってる感じ、てのはあるよね。

矢野:僕もそういうところがありますが、中央線サブカル文化のノリだと車文化のほうに行かないですね。地域的に必要性を感じないし、そもそも自動車教習所に耐えられる気がしない。途中で登校拒否しましたもん、自動車学校。

森野:我々の世代もすでに車はこだわるとこじゃないって感覚はあったからね。

ハシノ:車がないと恋愛市場のスタートラインに立てないっていう価値観は90年代後半にはもうすでになかったですよね。

森野:それよりも知識があるほうがよしとする文化になってた。インディーズ聴いてるとカッコいいし、ベタなものをバカにしてもいいっていうノリがあったからなあ。今はその揺り戻しがあるのかもね。

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それでは、次回は5月2日(土)深夜1時です。市川うららFMでチャイム着席をお願いします!(以下のリンクからも聴けます。)


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