ラッキーアイテムに関する記述Ⅲ
2024年9月6日
2024年9月6日
弟がいなくなった。最後に会ったのは、3日前のことだ。
家だけでなく、弟が好きだった行きつけの銭湯を探しても見つからない。
弟とはいつも一緒に行動していて、最後に家に一緒に帰ったことも覚えている。それなのに、突然姿を消した。思い当たるのは、「お風呂に行く」と言って先に出て行った時だ。
何か事件に巻き込まれたのかもしれない。
親も最初は熱心に探してくれたが、今では「そのうち戻ってくるでしょ」と言って、もう探す様子はない。不安なのは俺だけなのか?
こんな家族、なんだかおかしい。
俺たちは双子で、中国の田舎で生まれたらしいが、すぐに日本に来た。
両親は日本人で日本語しか話さないので、ただ生まれた場所が中国だっただけだ。
それなのに、「お前ら中国産だろ」と嘲笑してくるやつがいる。
俺も両親も気にしていなかったが、弟は実はそれに苦しんでいたんじゃないか?いつも一緒にいた俺が、それに気づいてあげられなかったと自分を責めることしかできない。
弟が失踪してから5日が経った。
俺は何もできず、家に引きこもっている。最初は弟の名前がテレビのニュースで報道されないか、不安で見ていたが、今ではただ画面を眺めるだけになった。朝・昼・夕・夜、同じニュースが流れていて、1日1回テレビを見るだけで大きなトピックがわかることに気づいた。誰かが殺されたり、日経平均株価が下がったりと、俺に関係ないニュースばかりだ。
日曜日のワイドショーで、行方不明者について専門家が話していた。
「日本の年間行方不明者は約8万人。そのうち約7割は当日から1週間以内に見つかるが、1万人未満は長期的に行方がわからなくなる」と。今日でちょうど一週間。もう駄目かもしれない。
親は俺と弟の区別すらついていない。「右介だよね?」と確認してくる。うんざりだ。親にとって、俺が右介でも左介でもどっちでもいいんだ。
1ヶ月が経つと、弟とセットでない俺に、親は全く関心を示さなくなった。
失踪前、弟はこんなことを言っていた。「俺たちを下に見ているやつが多いけど、俺たちは本当は上なんだ。馬鹿にするな」と。
弟がいなくなって3ヶ月近く経った頃、親に叩き起こされ、「左介が見つかった」と言われた。
急いで玄関に向かうと、確かに俺にそっくりな男がそこにいた。彼はこう言った。
「はじめまして、右京です。俺も弟がいなくなったんだ。これからよろしくね」
ラッキーアイテム:靴下
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