コロナ禍における日本の外国人労働者の状況

2020年2月に始まった,コロナウイルス拡大防止を理由に,中国浙江省に滞在歴がある外国人及び同省で発行された同国旅券を所持する外国人に対する上陸拒否は,瞬く間にその対象範囲を拡大し,外国人労働者の入国にも大きな影響を生じるに至った。就労系の在留資格(外交・公用を除く)は,2019年には30万4707人が入国したが,2020年には12万4384人,2021年には3万3952人と,約10分の1に減少した(令和4年3月29日公表出入国在留管理庁:令和3年在留資格別外国人新規入国者数の推移)。
他方で,既に日本で就労をしていた外国人労働者の多くは,航空機の定期便の一時停止や,各国が自国民の帰国の規制を行った結果,既存の在留資格が期限となっても帰国することができず,日本に留まり,就労を継続した結果と考えられるが,2021年10月末日における外国人労働者数は過去最高を更新し,172万7221人(対前年比増加率は0.2%)となった。2019年の対前年増加率が13.6%であったことに比べると,増加率は大幅に減少しているが,過去最高の外国人労働者数を維持している(厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和3年10月末現在))。
このように,帰国困難となった外国人労働者に対し,日本政府は特例を認め,原則として在留資格の更新が認められない短期滞在の在留資格の更新を認めたり,在留期間の上限が定められている技能実習の在留資格から,特定活動への変更を認める等,引き続きの日本で滞在し,就労を可能とする対応を行ってきた。また,緊急小口資金等の特例貸付等は外国人も受給できるものであり,生活困窮者自立相談支援機関における多言語対応の強化や,東京では,ハローワークによる,外国人相談会を実施するといった取り組みが行われたことは事実である。
しかしながら,失業保険の受給要件を満たさないまま解雇された場合には,永住者,永住者の配偶者等,定住者,日本人の配偶者等,特別永住者,入管法上の認定難民等の在留資格を有しない限り,原則生活保護を受給することができないといった,セーフティーネットが存在しないことや,特に技能実習生については転職先の探し方についての情報の不足,在留資格に関する特例の存在や,支援制度の情報が行き渡っておらず,また,行使方法もわかっていないという外国人は多く,十分に活用されたとはいいがたい。
今回のコロナ禍により,多数の外国人労働者が,解雇や待遇の不利益変更,差別的取り扱いなどを受けるに至り,彼ら,彼女らが日本で就労するにあたって直面する問題点が,一層明らかになったのではないかと思われる。情報アクセスの充実と,問題を抱えた外国人労働者が現実的な解決を図ることができる制度構築を期待したい。

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