アルファベット(グーグル)労働組合による、派遣社員等に対する平等な賃金の支払を求める声明

1.アルファベット労働組合とは
2021年1月、グーグル社で労働組合が結成されたというニュースが耳目を集めました。正確にはグーグル社の持株会社であるアルファベット社の社員による組合で、アルファベット労働組合(Alphabet Workers Union, AWU)と言い、全てのアルファベット社員に対して門戸が開かれているものです。
*アルファベット労働組合の設立声明
https://alphabetworkersunion.org/press/releases/2021-01-04-code-cwa-google-union/

巨大IT企業における初めての労働組合(”the first union at a major tech company by and for all tech workers”設立声明より)として注目を集めましたが、その後はどうなっているのでしょうか。
*設立経緯に関する情報労連のインタビュー
米グーグル労組にインタビュー 組合結成の狙いや思いを聞く - 特集 - 情報労連リポート (joho.or.jp)

2.TVCsに対する平等な賃金の支払い要求
2021年9月14日、アルファベット労働組合は、「アルファベット社に対し全ての臨時労働者に平等な賃金を支払うこと”pay parity”を求めるアルファベット労働組合の書簡(AWU Letter Calls On Alphabet to Deliver Pay Parity For All Temporary Workers)」と題した声明を出しました。
https://alphabetworkersunion.org/press/releases/pay-parity/

 この声明は、NY TimesとThe Guardianが9月10日に出した報道を受けたものです。グーグル社がヨーロッパをはじめとする地域でTVCs(Temps, Vendors and Contractors. 派遣社員、請負社員(企業)、契約社員)と呼ばれる者に対し、平等な賃金を支払っていないことに気づいていながらその状態を2年間以上継続しており,その未払総額は1億USドル(約110億円程度)にもなる可能性があると報じられました。
〇NY times Google Could Be Violating Labor Laws With Pay for Temp Workers - The New York Times (nytimes.com) 
〇The Guardian Revealed: Google illegally underpaid thousands of workers across dozens of countries | Google | The Guardian
アルファベット労働組合は、この報道の後「グーグル社が意図的にTVCsを搾取したことは道徳上の大きな欠陥である“Google’s deliberate exploitation of TVCs is a massive moral failing.”」とグーグル社を強く非難しました。アルファベット労働組合は、下記のとおり、設立当初からTVCsの待遇について設立当初から問題意識を明らかにしていました。
「しかしながら、アルファベット傘下の企業で働くGoogle社員の半数は、正社員としての利益を受けられないTVCsとして雇用されている。“Yet half of Google workers at Alphabet companies are hired as TVCs—temps, vendors, or contractors—without the benefits afforded to full-time employees.”」(設立声明より)
 グーグル社はこのような報道を受け,問題の原因等について調査を行い,適切な状態にすると述べています。

3.アルファベット労働組合の今後
グーグルの社員と聞くと高給を得ているエリートという印象が強いですが、実際にはTVCsと呼ばれる社員の待遇についても声明を出しています。GAFAと称される超巨大IT企業における労働組合の活動は、同社にとどまらない大きな影響力を有するものです。他方で,アルファベット労働組合の組合員は同組合によると800名程度(https://alphabetworkersunion.org/people/our-union/)で,アルファベット社の全従業員の中でわずかな人数に過ぎないことも事実です。今後のアルファベット労働組合の動向が注目されます。

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