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スーツを着た大学2年生

 大学の頃いつもスーツを着てる2人組がいた。気になったので「固いバイトしてんの?」と喋りかけるとどうやらそんな感じだ。

片方はジャニーズっぽい雰囲気で片方はネズミ男。経済学部の奴等だったのでおそらく就職の事も考えて固いバイトを選んでいる地味だけど真面目なタイプだと思っていた。

自分はというと結婚式場や宴会のホールスタッフで月20万の収入。もっとたくさん稼ぎたかった。

ある日そいつらに「お前も一緒に同じバイトしようぜ。お金欲しいだろ?」と誘われて「やる」と着いていったのだ。

ファミレスで3人で飯を食べてると、高級バッグを持ったビジネスマンが参加してきた。リーダーだそうだ。唐突に「いくら稼ぎたい?」と聞かれたので、「月40万」と答えた。

リーダーは「俺は月100万以上稼ぐ。そいつら2人は月80万くらい」との事。想像を超えていた。

「内容なんすか?」と聞くが教えてくれない。

「稼げるけど初期費用は10万掛かる。すぐ用意できる?」と言ってくるので「今はないんで10万は自分を誘った2人がとりあえず支払っといてください」と伝えこれで面接終わりかなと思った。よく解らないけど100万稼げる業種なら頑張りがいがある。

すると「近くに消費者金融があるから10万借りてきてすぐ払ってくれ」と言ってくる。利子が無駄だろと的外れな疑問を持っていた。(マルチ商法とここで気づかないアホ)

リーダーと2人はどれだけ儲かるかを永遠と説明してくるので、さっさと2人が10万貸してくれたら1ヶ月後には40万の収入で返済しても30万だと単純計算して浮かれていた。

「1ヶ月後に必ず10万返済するからここはさっさと立て替えてくれ。職場どこ?」と詰めるが何故か長時間黙り込む。こっちは明日からでも働く気なのだ。

「あんた達稼いでるくせにたった10万も貸してくれないの?すぐ稼いで返済するから信頼してよ。職場には明日から行くから」とゴリ押しすると帰されてしまった。

面接落ち?自分を仲間に入れたらもっと儲かるのに。「あいつら稼いだ金で高級品買い過ぎて金無いタイプ?」とイライラしながら帰宅したのを覚えている。

出来事を知人に伝えると「それがマルチ商法だよ」と教えてくれた。気づいていなかった。

スーツの2人組はその後学校に来なくなり、テレビニュースではマルチ商法の被害者や逮捕者が連日世間を騒がせる様になる。危うく自分もマルチ商法の仲間入りだったなぁと今考えても怖い。

コロナ不況でまた流行ってるらしい。

#コロナ不況