プレミアリーグとチャンピオンズリーグの選手登録について説明する=なぜゴードン君がCLに出られないのか?
早々に勝ち抜けを決めたCL。主力を休ませるためにリヴァプールは若手を起用するべきだと考えていた人もいただろう。そこでゴードンやムシアロウスキが出場できないことを不思議に思ったファンもいると思われるので説明する
なぜ彼らがCLに出場できないのか。それは選手登録されていないからである。大会に選手登録されていない選手は出場する事が出来ない。彼らが出場できない理由は当たり前の話だった。では話のついでに選手登録のルールについても説明しておこう。この選手登録のルールもPLとCLではルールが異なっている。まずはルールが緩いPLの方からルールを説明しよう
PLに出場出来る選手は下記の3つに該当する人間だけだ
①スカッドリストに登録された最大17名の選手(HG資格はあってもなくても良い)
②スカッドリストに登録されたHG資格を持つ最大8名の選手
③シーズン開始年から21年前の1月1日以降に生まれた選手(今季は2000年1月1日以降の選手)
PLの選手登録枠はHome Grown Player枠とFree Player枠とUnder 21 Playerの3つある。いちいちHome Grown Playerとタイプするのがめんどくさいので私はいつもHGと書いていてHome Grown Playerじゃない選手を非HGと書いている
プレミアリーグのルールについて記載しているPremier League Handbookを読んでいくとUの項目に選手登録についてのルールが記載されている
Requirement for Registration
U.1. A Player shall not be named on the team sheet and/or play for a Club in a League Match unless that Club holds his registration (which shall include, in the circumstances set out in Rules U.3, U.12 and U.13, confirmation that he is eligible to play for it) with effect from at least 75 minutes before kick-off and for League Matches to be played between the close of the Summer Transfer Window and the end of the Season either:
U.1.1. his name is included on the Squad List; or
U.1.2. he is an Under 21 Player.
クラブがU3とU12とU13で規定されたルールを満たしていて保有権を所持してる選手じゃないと試合に出場したりチームシートに書く(要はベンチ入り)ことができない。また夏の移籍期間が終わってからシーズン終了までの間はSquad List(以後スカッドリスト)に入っているか Under 21 Player(以後U21選手)扱いでなければ出場したりベンチ入りすることはできない
ちなみにU3とU12とU13のルールは下記の通り
U.3. If a loan of a Player (whether by Temporary Transfer or otherwise) is cancelled by mutual consent, the Player shall not play for the Club to which he is returning unless the League has confirmed to that Club that the Player is eligible to play for it.
International Transfer Certificate
U.12. A Player who is the subject of a loan to a Club or club affiliated to a national association other than that to which the loaning Club is affiliated may not play for the loaning Club following the termination of the loan until the League has received written confirmation from the Club’s national association that an international transfer certificate has been issued in respect of his return to his Club, and the League has confirmed to the Club in writing receipt thereof and that he is eligible to play for that Club.
Eligibility to Work in the United Kingdom
U.13. An application to register a Player shall be accompanied by such evidence as the League may require to demonstrate that the Player may take up employment in the United Kingdom, and the League shall not confirm that he is eligible to play for the Club applying to register him until the League has received such evidence.
U3はローンが双方の合意によって解除された場合においてもプレミアリーグが選手の出場資格を認めないとローンの出戻り先でプレーする権利がないことを書いていて、U12はU3とほぼ同じだがローン契約が終了した後には諸々の認可がないと選手登録を認めないという話。例えば夏にローン移籍して冬にローン移籍が満了する契約だったとしても諸手続きがまとまらないと、という話なのでU3と内容はほぼ一緒。U13は労働許可の問題の話だ
本題に戻ろう。スカッドリストとはどんなものなのか。A1条194項に次のような記載がある
A.1.194. “Squad List” means the list of up to a maximum of 25 Players eligible to participate in League Matches during a Season of whom a maximum of 17 may not be Home Grown Players;
スカッドリストは最大25名(Home Grown Playerが居なければ17名)のシーズン中にリーグの試合に出場できる資格を持った選手のリストを意味する。つまりここに登録されていない選手は夏の移籍期間が終了した後の試合に出場することはできない
ここで話題になっているHome Grwon Playerの定義はPremier League HandbookのA1.99に記載されている。抜粋すると下記の通りだ
“Home Grown Player” means a Player who, irrespective of his nationality or age, has been registered with any Club (or club) affiliated to The Football Association or the Football Association of Wales for a period, continuous or not, of three Seasons or 36 months prior to his 21st birthday (or the end of the Season during which he turns 21) and, for the purposes of this definition of “Home Grown Player”, a Season will be deemed to commence on the date on which the relevant Summer Transfer Window closes and expire on the date of the final League Match of the Season;
Home Grown Player(以後HG)は国籍や年齢に関係なく21歳の誕生日または21歳になるシーズンが終了するまでに36ヶ月か3シーズンFAとウェールズサッカー協会に所属するクラブに登録された選手のことを指す。※ちなみにここでいうシーズンというのは夏の移籍期間が終了してからシーズンが終了するまでの期間を指す
リヴァプールで言えばセップ・ファンデバーグが母国オランダの1部チームではなく英国2部のクラブにローンされているのはこのHG資格を取得するためである。彼は18歳でリヴァプールへやってきたので21歳になるまでの3シーズンで1年リヴァプールのユースに所属し同じFAに所属する2部のプレストンへ2年間ローンする事でHG資格を取得出来る。年齢も国籍も関係がないので英国出身でなくてもHG扱いになる
最後の枠であるUnder 21 Playerの定義は下記の通り
“Under 21 Player” means a Player under the age of 21 as at 1 January in the year in which the Season concerned commences (i.e. for Season 2021/22 born on or after 1 January 2000);
U21選手は上記の通りシーズンが開始する年の21年前の1月1日以降に生まれた選手が無条件でこの枠に入る事ができる。サッカー選手のピーク年齢は24−30歳くらいなので若手は全盛期を迎えた選手と競争をせず試合に出場出来るようにするためのルールだ。特に上記のスカッドリストに入っている選手に故障者が出た時に若手にチャンスが与えられるようにしているルール。つまり、ゴードンやムシアロウスキはPLのルールにおいては出場する事ができる
(私の勘違いでシティのためにルールが変わったと昔どこかで書いたような気がすることをお詫び申し上げます。17−18シーズンのレギュレーションの時点でこのルールでした)
改めての確認になるがPLに出場出来る選手は下記の3種類に該当する選手だ
①スカッドリストに登録された最大17名の選手(HG資格はあってもなくても良い)
②スカッドリストに登録されたHG資格を持つ最大8名の選手
③シーズン開始年から21年前の1月1日以降に生まれた選手(今季は2000年1月1日以降の選手)
一方でCLの選手登録ルールをまとめると下記の3つになる
①リストAに登録された最大17名の選手(AT資格やCT資格はあってもなくても良い)
②リストAに登録された最大8名のAT資格またはCT資格を持つ選手(ただしこの枠におけるAT資格の登録は最大で4名まで)
③登録枠が無限大でいつでも登録できるリストBに登録された選手
CLに出場する事ができる選手はリストAかリストBに登録された選手だけである。このリストAがPLのスカッドリスト(上記の①と②)にあたり、リストBがPLのUnder 21 Player(上記の③)にあたることになる。だがCLの登録ルールはPLのルールに比べてFree Playersを17人登録できる①までは同じだが②や③に登録できる選手の扱いが若干厳しくなる
まずは②のHG枠がlocally trained playerという呼称になる。呼び名だけじゃなく枠自体が自国のサッカー協会に所属していた選手(Association-trained players、以下AT)と自身のユースクラブに所属していた選手(Club-trained players 以下CTまたはクラブ育成)の2つに別れる。17枠あるFree Playersの枠に登録されているAT選手やCT選手を除いて8人の選手をAT選手とCT選手で登録できるのはPLと変わらない。ただしこの8人の選手の枠で使えるAT選手は最大4枠であり8人の選手を登録できるPLと異なる
記事最後に記したリンクの45条5項に記載されたルールを読めばAT選手はHG選手と扱いが同じだと分かるだろう。15歳から21歳の間にシーズンの開幕戦から所属した状態で同じサッカー協会で3シーズンか36か月を過ごせばそのサッカー協会で育った選手としてAT資格を獲得できる。CLのルールでは15歳と21歳になるタイミングを明確にする補足が1920と2021シーズンの処置などと書かれている
45条4項を読むとCT(クラブ育成選手)もAT(協会育成選手)と同じだが、当該クラブと同じサッカー協会で育てばよかったATに対してCT選手は当該クラブでその期間を過ごさないといけないためルールが厳しい。本来はアカデミーへの投資を促そうとしたはずのルールであるが、アカデミー出身である必要は全くない。リヴァプールでいえばジョー・ゴメスは1997年5月23日生まれで1516シーズンの開幕前にリヴァプールへやってきた。ここから彼はローンに出ることなく1718シーズンまで過ごしたので3シーズンをリヴァプールで過ごしたため、彼はクラブ育成選手の資格を獲得している
PLではシーズン開始年−21年の1月1日以降に生まれた選手は無条件に登録できたがCLではPLのU21資格をもつ選手も同時に下記の3つのルールを守らないとリストBに選手登録をすることができずA登録が必要になる
A15歳の誕生日を迎えた日からUEFAに登録されるまで途切れることなく2年連続で当該クラブでプレー資格を有していた場合
B合計3年以上に渡って当該チームに所属し、かつこの所属期間中にローン回数が1回以内でローン期間が最大1年以内でかつローン先が同じフットボール協会のクラブだった選手
C当該チームに2シーズン以上連続でローンされることなく在籍した16歳になった選手
正式な条文は下記の通りである
A player may be registered on List B if he is born on, or after, 1 January 2000 and has been eligible to play for the club concerned for any uninterrupted period of two years since his 15th birthday by the time he is registered with UEFA –or for a total of three consecutive years with a maximum of one loan period to a club from the same association for a period not longer than one year. Players aged 16 may be submitted if they have been registered with the club for the previous two years without interruption.
要は上に書いたABCのどれかを満たしていればB登録ができる。16歳の誕生日の時点で所属していたチームに2年前からユースチームに登録されていればB登録できるし、15歳の誕生日を迎えたタイミングで所属していたチームなら17歳になればリストBに登録できる。だが21歳未満であっても15歳を過ぎて移籍したら3シーズン連続で在籍しないといけないし、その3シーズンの間にローンは1度きり、しかも1年以内で所属するチームと同じサッカー協会に属するチームじゃないといけないのだ
ゴードンやムシアロウスキが使えない理由がこれで明らかになっただろう。ムシアロウスキは16歳だった2020年の夏、ゴードンも16歳だった2021年の冬に移籍してきた2シーズン目の選手なので上の条件ABCを満たしていないので彼らはリストBに登録できないのだ。そしてリストAにも選手登録されていないから出場資格がないのである。彼らがリストBに登録できるようになるのはムシアロウスキは2023年夏以降でゴードンは2024年の冬以降となる
このルールを読めば何故エリオットが今年の夏ローンに出されなかったのか、開幕直後からケガをするまで積極的に起用されたのかも理解できるだろう。リヴァプールはエリオットを1シーズン目は手元に置き2シーズン目に同じFAに所属するブラックバーンローヴァーズにローンし、3年目の今季はホームグロウン枠でA登録したのは来季以降をリストBで選手登録する為である。仮にブラックバーンへのローンが失敗してローンバックして出場機会が貰えるローン先を探し直した場合、ローンが2回になってしまうのでエリオットを来年B登録する事は不可能だったのだ。だからエリオットのローン先のクラブと関係を作って選定を間違えなかったウォードは出世のポイントを稼ぐ事ができたのかもしれない
また今季の開幕直後にやたらと使われていたのは冬にローン移籍を志願されないためにプレー時間を与える必要があったためだと思われる。冬ローンに出してしまうと3年の間に2回のローンとなり来季Bリスト登録が出来なくなってしまう。チアゴやファビーニョといった主力選手に開幕直前まで休みを与えたためコンディションが整うまではエリオットの起用を優先してプレー時間を確保する事で冬の移籍を止める狙いがあったのではないかと私は推察している
以上からCLの選手登録ルールをまとめると下記の3つになる
①リストAに登録された最大17名の選手(AT資格やCT資格はあってもなくても良い)
②リストAに登録された最大8名のAT資格またはCT資格を持つ選手(ただしこの枠におけるAT資格の登録は最大で4名まで)
③登録枠が無限大でいつでも登録できるリストBに登録された選手
しかし改めてマイケル・エドワーズは優秀だったと言わざるを得ない。2015年夏のゴメス獲得が開幕以降に遅れていた場合、1度もローンに出さず手元で育てても36か月の所属はもちろんのこと、3シーズン在籍の条件も満たす事が出来ずクラブ育成選手で登録する事は不可能だった
この辺りの先を見据えた長期的なスカッド運用こそ私がクラブを支持する理由だった。PLはHG枠が8で非HG枠が17だからCL戻れなければクラブ育成選手を作る必要もないのだ。しかしリヴァプールはCLの舞台に戻ることを見越して事前に準備していたのでトレント、ゴメス、ケレハーの3人をクラブ育成選手として登録する事ができている。エドワーズが居なくなってもこのスカッド編成能力だけは衰えないでほしいと願っている
ただ理想を言えばHGもCTも選手が少ないシティを見れば分かるようにスカッドは25枚揃える必要がない。2チーム+保険のGKで23人に厳選した方が良い。なぜなら所属するトップ選手の数を減らした方が1人に払える移籍金と給与の合計額が増えるからである。25枠の登録枠をFFP違反のペナルティが登録枠の削減なのは意味がないから見直すべきだ。むしろ予算の余裕がないクラブは選手を減らして保有している選手の質を高めた方が良い効果を生むので登録枠を23人に制限したところで全く罰になっていない。単純に出場禁止とするべきだろう
今回ルールを調べていて16歳にならないとCLのBリスト登録ができないことを初めて知った。昨季のムココが16歳を迎えてからCLデビューしたのはBリストに追加できるタイミングを迎えたからだったようだ。もちろんAリスト登録されれば15歳でも出場できるが、現実的とはいえない。また15歳になるシーズンを迎えたあとに日本から海を渡った場合もA登録されないとCLに出る事は出来ない。そんな早熟な日本人が出るとは思えないが、こういったルールを知っておけば有利な選手登録ができるようになって試合に出場できる確率が少しだけ上がるかもしれない
ルールが記載されている原典を見たい方は下記2つのリンクをご覧ください
21/22シーズンのPremier League Handbookは下記リンク(重いのでWifi環境推奨)選手登録のルールはU条に記載
21/22シーズンのチャンピオンズリーグのスカッドルールについては下記リンク(重いのでWifi環境推奨) 45条と46条に記載
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