ルイス・ディアスは最高の取引ではない。ただそこまで悪い取引でもなさそうだ

ルイス・ディアスをずっと繰り返し見ていると悪い選手ではない気がしてきました。リヴァプールに加入した成長前のマネのように将来は£50m~£100mになる可能性を秘めた£30~35mの価値ある選手が£37m+£13mでやってくるという印象です

つまり現状は高いという認識で変わりませんが、最初に想定していたほど悪い取引ではないのではないかと思います。少なくとも£15~30mの実力で£70m以上の移籍金が支払われたリール出身の某選手のようなことにはならないでしょう

1ルイス・ディアスの優れている所

彼の良い点はマネに似ています。パスはそれほど優れているとは言えませんが、シュートは上手くアクロバティックなボレーやヘディングも魅力でドリブルも優れており、ディアスはコウチーニョとマネの良い所と悪い所をブレンドしたような選手に思えます

またトップスピードも兼ね備えているようです。私にはルイス・ディアスのトップスピードが34㎞/hくらいに思っていましたが、今季のCLでトップスピードは35.5km/hを記録していたようです。なんという見る目のなさでしょう

正直トップスピードはサッカーにおいてそれほど大事ではありませんが、あって損するものでもありません。少し古いデータになりますが、リヴァプールの選手のトップスピードはこんな感じでした

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サッカーではトップスピードで走りきるケースというのは非常に少なくロングカウンターの場面でしか発揮する事がない能力です。今季のCLは6試合ではサラーやマネは33km/h台しか出せていないようですが、彼らはコンスタントに毎シーズン34.8~9km/h程度のトップスピードをプレミアリーグで記録しています

トップスピードに限定すればチーム最速の選手はオリギですが彼のドリブルはだいたい最初の1歩目で引っかかりますし、あれだけ1vs1のドリブルでサイドを蹂躙できるロバートソンがチームの中では全く速い部類に入らないようにサッカーでは最初の数歩での速度や急激な減速をかけてもバランスを崩さずに動く能力の方が重要です

ゴメスやコナテやチェンボやロバートソンや昔のダイクのように初速から速い選手はマティプ、ロヴレン、オリギといったスピードに乗れば速い選手よりもサッカーにおいては優れています

世界的にはアルフォンソ・デイヴィスが36.51km/hを出したりハキミが36.49km/hを出したり最近の選手のスピードのインフレはなかなかのものがありますが、リヴァプールだとディアスの数字はチーム最高水準です。初速がそこそこ速くて裏抜けが上手い選手だと私は思いましたが、何度も繰り返して映像を見てみると足も速いので裏に抜け出せていたようです

2ルイス・ディアスの課題

ただディアスについて難点を上げるならば3つあります

1つ目は低いカチッとしたパスのトラップが下手なことです。どのくらい下手かと言えばリヴァプールに加入した5年半前のマネくらい下手です。もっともトラップは上手い選手にコツを教わる事でマネのように急激に伸びる選手もいるのでそこまで悲観的になる必要はないかもしれません。リヴァプールにはトラップが上手い選手はたくさん居ます

2つ目はコウチーニョのように密集地帯で謎のドリブルを始める事です。ドリブルはCLで昨季は52%今季は62%の勝率を記録しておりチアゴをぶち抜いたり優れていますが、無駄にスキルを発揮する事もある印象です。ただゴール前では意外と周りの選手も使えており、縦に抜けてシュートを狙い自分が無理なら周りを使えるタイプにも見えます。そうなると起用位置が1列上がるリヴァプールで最後の崩しだけを担当すれば彼の能力は良い方向に発揮できるような気もします

3つ目はストレングスの部分です。前線に孤立した状態で最終ラインからのロングボールをキープする事が求められるリヴァプールのFWはプレミアのDFからボールを守る屈強なフィジカルも必要ですが、この点にも若干の不安があります。ただこの点についてもリヴァプールに加入した選手はフィジカルが強化されていくので問題はないかもしれません

3 ルイス・ディアスの獲得目的は?

まずは5番手FWとしての獲得です。そこで成長すればマネの後継者というのが獲得目的でしょう。リヴァプールはFWは4人優れた選手を抱えていますが、5人目からはプレミアリーグ下位クラブでレギュラーを争うオリギや南野という惨状です

今まではフロント3が大事な試合のほぼ全てで稼働していたので問題はありませんでしたが、今後の彼らに以前のようなフル稼働を求めるのは厳しいでしょう。年齢を重ねると先ず能力よりも先に耐久性が落ちるのが世の常というものです

全くFW適性がないのに身体能力と技術で試合の殆どを消えながらも得点やアシストをたまにするチェンボだったり、18歳でまだまだ改善点の多いエリオットやジョーンズを使いまわしていましたのでFWは守備的MFの次に補強が必要なポイントでした

現時点での能力では物足りない部分もありますが、下手なトラップが改善するかと守備がどれだけ出来るのかに注目したいと思います。個人的に左のWGにはマルティネッリが欲しかったですが彼が取れないのでディアスで妥協したと納得することにします

4ルイス・ディアスの役割は?

攻撃時の役割としては下の5つがあるわけですが

Aゴールを決める
Bラストパスを出す
Cポストプレーをする
D囮になる
Eドリブルで縦に運ぶ

現状の戦力とディアスを評価するとこんな感じでしょうか。

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ディアスの獲得は左WGの控えとしての獲得でマネの出来が悪ければ彼と交代する要員でしょう。南野やオリギやチェンバレンの出場時間を奪うならば補強にはなりそうです

移籍金が高くても年俸が安ければ維持費は高年俸の選手より安いということは珍しくありません。選手が減俸を受け入れるという非常に稀な性質を持っていない限りは年俸が高いと売れません。能力よりも年俸が低ければ移籍金を少し安くすれば損切りが出来るます。ポルトガルで珍しい健全経営のポルトから来る彼の年俸は安いと言われており、今回の取引は大失敗にはならないでしょう

チームとしての適正ポジションを無理やり1枚のフォーメーションにまとめると下のようになります

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フィルミーノは中央でポストプレーやスペースを空ける動きの偽9番が適性ポジション
サラーは右WGや1トップの下の中央が適性ポジション
ジョタは1トップの下の中央が適性ポジションで両WGともにそこそこ出来ます
マネは両サイドの前側であれば3トップだろうと2トップだろうと1トップだろうと全部が適性ポジション
南野の適性としては1トップか2トップの下の中央からスペースに飛び出して点を取る仕事が唯一の適性ポジションですが、基本的には左のWGに入っていました
オリギは裏に抜けるカウンターサッカーの1トップか2トップでポストプレーヤーと組んで得点を狙うエースの役割が適性です。左WGで起用されるとドリブルでロストして終わりです

ジョーンズは未だに何処が最適な場所なのか分かりません。ドリブルとトラップの上手さを考えると中央でポスト役をやるのが良い気もしますし、コウチーニョのように左で王様をさせるのもアリかもしれません。IHでも偽9番でもWGでも周囲を使う技術の向上が必要です

エリオットもIHのリンクマンが最適だと思われますが何処が最適な場所なのかが分かっていません。右のWGではスピードと決定力不足、IHの前側でリンクマンとして周囲と連動して崩すには技術やターンの技術が未熟ですし、IHの後ろ側でやるには守備力が不足しています
チェンバレンはサイドハーフかウィングバックが彼の適性ポジションです。IHとしては技術不足、WGとしては周囲に使われて決定機を作る能力がありません

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被カウンター時を除く守備では綺麗な4-3-3となる一方で攻撃時はIHが自由にポジションを取ったりファビーニョやチアゴが最終ラインに入ったりカオスでしかない狂ったポジションを選手の能力でゴリゴリに突破していくのがクロップのサッカーです

マネがドリブルで単騎突破する力を失っているので、ディアスの獲得に繋がったのでしょう。ディアスはポルトで3トップや2トップや1トップの左側を担当しており、ここが適性ポジションでしょう。トラップの技術が改善されれば1トップの下の中央でもゴールを量産できるかもしれませんが、ディアスはまず左サイドで崩しの局面を担うことになりそうです

5次の獲得候補は?

リヴァプールが次に獲得を目指すのはMFと言われています。これが守備的な位置が出来る選手を獲得するのか、レギュラーとしては物足りないMFの前側を取るのかが注目です。個人的にはヘンドとチアゴは2人で1人分の稼働しかしないため、守備的な位置の選手が欲しいと考えています

ただヘンダーソンが聖域になると考えると守備的MFに最高級のタレントは出場時間的に確保できない不安もあります。チュアメニも魅力的な選手ですが、獲得競争の厳しさを考えると厳しそうです。個人的には適正価格であればチュアメニ、またはセヴィージャなどを破ってCLベスト16に駒を進めた原動力となったザルツブルクのカマラが欲しいですね

しかしながら一応3列目も出来るベリンガムの獲得に全力を注ぐ可能性もあります。MFの前が本職の彼を補強しつつ後ろもこなせるのでローテは上手くいきそうです。ただMFの前側にはジョーンズとエリオットという戦力になるのか分からない選手を抱えていますので、彼らの成長曲線を見てからでも遅くないと思います

ジェイコブ・ラムジーはなんで高い評価を受けるのか分からなかったのですが、昔のアーノルドのように見る度に上手くなっており急激な成長を遂げています。プレー選択の判断力でまだミスが目立つ選手ですが、将来的にはかなりの水準まで成長しそうですし金額が高いベリンガムを今このタイミングで全力投球するのは愚かだと思います

6来季以降の編成はどうなる?

来季の戦力を予想すると下記の通りになります

FW中央
 フィルミーノ90
 オリギ80→売却?
 南野79→売却?
FW中央&サイド
 サラー95
 ジョタ92
FWサイド
 マネ90
 ディアス85
 ゴードン76
MFサイド
 チェンボ85→売却?
 オジョ77→売却?
MF前
 ケイタ86→売却?
 ジョーンズ85
 エリオット83
MF後
 チアゴ93
 ファビーニョ93
 ヘンダーソン86
 モートン77
DFサイド
 ロバートソン93
 アーノルド93
 ツィミカス86
 ネコ77→売却?
 ベック76
 ブラッドリー74
CB
 ダイク92
 マティプ92
 コナテ87
 ゴメス87
 セップ80
 ナット77→売却?
 リース75
 デイヴィス74→売却?
GK
 アリソン93
 ケレハー85
 アドリアン78

今年の夏にミルナーとカリウスは間違いなく契約満了で放出になり、戦力外通告を受けたデイヴィス、フィリップス、ネコあたりはローンたらい回しか売却となるでしょう

また大渋滞を起こしているFWの整理も夏には必須となりました。オリギはPLの出場試合が契約延長の条件を満たさずフリー移籍が濃厚で、FW左の控えだった南野は出番が完全になくなるでしょうから退団が濃厚です

売却されるか未来が読めないのはケイタ、チェンバレンとマネです。ディアスはタイプ的にマネの後継者でしょう。間違いなく契約延長になると思いますが、サラーが離脱する可能性も0ではありません。マネを右に回してルイスが左に入る4-4-2ならチェンバレンに残留の目が出てきます。4-4-2ならばケイタの適正ポジションが消えることになりますので彼の未来は売却に傾くでしょう

またセップは左足がオモチャながら成長を続けており1718シーズン開幕時のゴメスくらいのレベルには達しているように思えます。RBも兼任できる彼はミルナーの退団とエリオットのB登録扱いによって空くHG枠に入ってくるはずです。そうなるとCBは明らかに戦力過多で誰かを売却するかもしれません

マティプとダイク後の世界でゴメスと同レベル以上のCBはミリトンとアラウホとコナテとウパメカノと妥協でクンデくらいしか居ません。彼らを引き抜くのにかかるコストを考えたら£70mくらいじゃないと売るべきじゃありません。マティプを2年後に売る前提がなければゴメスのローンに私は反対です。ただマティプを取るのか、ゴメスを取るのかという未来は近づいています

FW中央
 フィルミーノ90
FW中央&サイド
 サラー95
 ジョタ92
FWサイド
 マネ90
 ディアス85
MF前
 ケイタ86
 ジョーンズ85
 エリオット83
MF後
 チアゴ93
 ファビーニョ93
 ヘンダーソン86
 補強?
DFサイド
 ロバートソン93
 アーノルド93
 ツィミカス86
CB
 ダイク92
 マティプ92
 コナテ87
 セップ80
 リース75
GK
 アリソン93
 ケレハー85
 アドリアン78

ローン
 (ゴメス)87 orマティプ売却
 ゴードン76
 モートン77
 ベック76
 ブラッドリー74

個人的な理想の来季スカッドはこんな感じですかね。ジョーンズが今シーズン中に可能性を感じさせなければ彼のローンも必要かもしれません。いずれにせよFWとMFに優秀な選手が5人揃い、6番手に優秀な若手が揃い、CBも4人揃ってRBの控えもセップで解消できるはずの来季は4冠を狙えるリヴァプール史上最高のスカッドとなりそうです。再来年以降は…どうなるか分かりませんけど…

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