中日ドラゴンズのAクラス入り確率が12年ぶりに40%を超えるかもしれない件について


今年のドラゴンズは何が違うのか?

2020年以来となるドラゴンズのAクラスに期待が膨らんでいる。吉見と浅尾の稼働率が怪しくなり、主力が高齢化していた2014年以降はキャンプ前から筆者はドラゴンズをBクラスと予想し続けた。1980年代後半生まれの選手が揃って活躍し、与田監督と阿波野投手コーチが再建した投手陣で2020年は久々に3位に入った。しかしその翌年は5位。監督交代後も6位、6位と低迷は続く

そんなドラゴンズにようやく光が見え始めた。Aクラス確率が2012年以来で久々に高まっている。今後の故障者次第だがAクラス入りの確率は35~45%と予想する。梅津の故障でキャンプ中には最下位確定と思った2022年に比べ大きな進歩だ

昨年と比べて今年に改善すると見込まれるのは下記3点

  • 先発陣の5.6番手の質が向上する

  • 使える中継ぎの駒が増えた

  • 一塁手と三塁手と左翼手が昨季に比べたら打つ

今季も得点力の大幅な改善は見込めない。ただ投手が昨季に比べ改善する。野手は元の水準が低すぎるために、下がる要素が上がる要素よりも少ない。昨季より成績が落ちる可能性がある選手はスイングを変えた岡林ぐらいだ。細川以外に誰も怖い打者が居なかった昨季より中田が来てマークが薄くなるので細川は使えば20本塁打は打つ。今季も三振と四球と打点を稼ぐだろう

投手総括

バンテリン本拠地ながら阪神に大差負け。1位より5位の方が近い現状で投手が良いとは言えなかった。最大の要因は選手層の薄さと小笠原の調整ミス。調子が上がらない時期も涌井や小笠原を起用しないといけなかったり、福谷や仲地にチャンスを与えないと回らないほど層が薄かった。この問題は大野と梅津の復帰、メヒアの獲得、根尾の成長で解消できそうだ。小笠原の調整ミスは2月の日本代表戦でほぼピークというバカげたハイペース調整が原因だろう。今年はWBCもないので2度も同じ間違いはしないと信じたい

投手陣のプラスとマイナス

昨季から抜けた戦力は1軍が約52イニング。2軍は170イニングにキャンプで故障した森(2軍で33イニング)を合計しても250イニングの離脱にすぎない。一方で昨季60イニング強を投げた梅野と新人が加わり、梅津と大野の復帰や春先不在のメヒア、春投げられなかった根尾の成長で量は揃う

厳密に言えば山本の24イニングも抜け、ハム時代の齋藤の22と2/3イニングが増える。2軍で1イニングも投げられなかった岡田なども復帰。キャンプで故障した森も昨季は33イニング投げただけ。昨季の戦力から700イニングが流出したDeNAファンが発狂するなら分かるのだが…ドラゴンズの投手の量は足りている。勿論2軍の質は足りていない

チーム防御率を上回った13人は全員が残留し、昨季1先発しかできなかった大野が故障から復活。防御率が下位4人中3人が戦力外や育成契約となった。阪神に近づき、3位に大差をつける陣容が揃ってきた。投手起用は最悪だが投手の質・量を少しずつ改善している点は立浪監督も評価されるべきだ

先発ローテ

主な先発候補

昨季からのプラスは大野、梅津、メヒア、根尾。毎年150イニング投げてた大野でプラス100イニング、メヒアと根尾がプラス約40イニング超と3人で200イニング弱の増加が見込める。梅津の稼働率は期待できないが、松木平の成長もある。更には梅野も加入したので繰り返すが選手の量は問題ない。後述の中継ぎは飽和しているため福島や野中等も先発に回る可能性がある

1軍での防御率が下から5番目6番目と悪い福谷と仲地で20先発95イニングを投じたが、2024年は彼らの先発機会が減りそうだ。彼等が先発の20試合中でQS率は40%。対戦相手は裏ローテ中心で7勝1分12敗と借金5

先発が炎上した試合にロングリリーフの敗戦処理を出せば打線が取り返し、代打を出すので中継ぎの運用が苦しくなった。そのためか打者2巡まで安定している松葉の先発機会が減少。涌井もファーム含めて昨季は22試合で先発したが、好不調の波が激しかった。今季は涌井を2軍に落とす先発の余裕が出来たので投手コーチの運用が上手くいけば成績は上がるでしょう

先発の対戦チーム別のチーム勝敗。リリーフが打たれて逆転負け、リリーフ打って逆転勝ちも含む

対戦相手別に見ると上表の通り。柳と高橋と涌井は貧打線の被害を受けた。メジャー志向の強い小笠原、高齢化する大野と涌井、25歳以降は才能を日本に留めるのが不可能な高橋宏斗の離脱が濃厚。3年後の先発崩壊は迫るが、松葉すら地位が約束されていない今季の先発陣は阪神と1位を争える陣容。先発崩壊が見込まれる3年後までに仲地や草加や森山や福田がどれだけ戦力となるかが未来の鍵となる

中継ぎ・抑え

主な中継ぎ候補

松山と齋藤の台頭で砂田と田島は8月上旬~中旬で1軍の仕事を失ったように中継ぎ陣は選手層が一気に充実した。松山、勝野、齋藤が2年続けて結果を出すとは限らないが、12球団で最下位の野手より投手の伸びは手堅い。更に梅野と岩嵜が加わる。OP戦から連続イニング無失点の記録を伸ばす中継ぎ陣は何も心配が要らない。シーズンに入れば打たれるだろうが12球団トップを争える陣容になってきた

敗戦処理

橋本は凄い球を投げているが、良い時と悪い時の差が激しい。メンタル起因なら最強の敗戦処理になる可能性もある。またBB9が悪い年はダメな砂田もサイドスローがハマれば敗戦処理なら活躍できる選手。言っちゃ悪いがこの辺の選手は2年に1回の活躍で年俸2000万円あたりをウロチョロしてもらう方が経営しやすい。京田を出してまで取った価値があるかと言われたらない。ただ監督に造反してたならチームの空気を守るため放出が必要だった。2年連続の最下位に関わらず、立浪監督は主力選手からの支持を失ってない点を考えるとトレードは正解だったかもしれない

野手総括

昨季はビシエドと大島の不振で捕手、岡林、細川を除けば12球団の平均以下の成績。野手の8ポジション中5ポジションで平均以下の選手が揃うチームで勝てる訳がない。補強ポジションは上記3ポジションを除く全て。二遊間の完成された選手をトレードで取るのは不可能に近いので、一塁手と左翼手に強打者を取り、二遊間で自前の選手を鍛える事が目標になる

12球団で圧倒的な最下位の打撃は内野手と大島など左翼手の成績が改善して12球団の最下層で競争できるだろう。最大の上積みは中田だ。一塁は阿部、マルティネスの退団でビシエド以外に選択肢がなかった。ここに計算できる選手の加入は大きい。中田だけ450打席ほど戦力化しても戦力は足りない。中田の影響で他の野手が伸びれば、貯金10を超え2位になれる可能性が出る

野手陣のプラスとマイナス

内野手に中田、中島、山本、外野手にディカーソンと上林、便利屋に板山を獲得した。新人は内野手3人、捕手と外野手に1名の指名を行った。内野手の集中指名は阿部と京田を放出して選手層がスカスカだったので正しい

OP戦ポジション別の先発数

オープン戦の起用数は上記の通り。絶対的なレギュラーは細川と中田と木下で故障が治れば岡林も優先して起用されるだろう。ディカーソンは積極的に試されている立場で三好と争っており、岡林が戻ればどちらかが外される。二遊間は守備力重視ならばセカンドは田中、ショートはロドリゲスか龍空。ロドリゲスの打撃は期待薄で村松や辻本が抜擢される可能性は十分にある。三塁では立浪政権下で初めて石川の立場が揺らいでいる

石川の2023年成績

この成績なので調子が良ければレギュラーだが、OP戦の起用を見ると調子が悪い時期はカリステや周平や福永にレギュラーを奪われる事になりそうだ。全体を通じて競争が激しくなった

左翼手と三塁手と二塁手と遊撃手にチームを押し上げて完走するレギュラーがいきなり現れるとは思えないが、昨季に比べ選択肢は増えた。選手の状態と相手投手に合わせた起用次第で、上位進出に必要な最低ラインの打撃力は確保できる。ただ守備力や投手力、敵戦力を考えると優勝は不可能に近い

捕手

主な捕手陣

捕手は木下が今オフにFA移籍しなければ問題ない。トヨタ出身で投手からの信頼が厚い木下を中心に起用すれば移籍するとも思えない。宇佐見と石橋がサブに控えており選手層も世代的にも問題がない。捕手陣は12球団で中位~上位の下の方となるだろう

内野手

主な内野陣と新加入選手

昨季の内野陣は問題しかなかった。1軍の成績は壊滅していたが2軍の成績は更に壊滅しており使うべき選手が居なかった。今季の内野陣も12球団で下位を争う事は間違いない。今季最大のプラスは中田の加入。石川と村松の成長にカリステの適応が続く。新人の辻本や津田やロドリゲスや復帰の田中には大きな期待はできず、龍空の成長が最大の鍵だろう

ビシエドは確変期が来るとメチャクチャ打つが、それ以外は並みの打者だ。昨季は確変期が来ず、代わりに不調期が続いた。確変期が来れば中田を控えに回して休ませる展開になる。彼の好調期が来なければ、中田はフル稼働が求められて厳しい。宇佐見が好調なら積極的に一塁起用し中田を休ませたい

二遊間はどうなるか見えない。調子の良い選手を使い、打撃を崩せば2軍に送られて今季中に固まる事はないと筆者は予想する。しかし調子が悪くても龍空と村松と福永と石川以外に選択肢がなかった所からは進歩だ。内野陣は12球団で圧倒的な最下位から12球団の最下層(10~12位)を争う確率が高い

外野手

主な外野陣と新加入選手

外野陣も12球団の平均レベルに近づくと予想する。大島のコンディションが回復傾向との自己申告、三好の成長、ブライトと鵜飼が片鱗を見せ始めた。ディカーソンと上林は活躍すればプラスだが、活躍しなくても大きな問題にはならない

代打・代走・控え

昨季は後藤が代打の切り札。対策がバレて成績が急降下するまでのシーズン開始当初は結果も残した。しかし後藤を代打で使う以外になかった選手層は悲惨だった。今季は中島を獲得し、外野スタメンから外れそうな大島が代打の切り札になるだろう。宇佐見に加え故障でシーズンの大半を離脱した川越も復帰するので後藤と加藤は代走と守備に専念する事になる

三好と岡林が1軍なら守備のスペシャリスト枠は2から1に減る。代走枠には尾田も参戦。濱は2軍で出場してレギュラーを狙いつつ1軍経験を積むために何度か昇格するだろう。この点でも普通のチームに近づいている

監督

以下の3点については満足している
1 新人と大差ない中堅・主力野手を見切って次世代の育成を始めた点
2 先発も年2500球で管理して酷使をせず地道に戦力を増やしてる点
3 中継ぎを3日連続起用はしない点

野手の奇策はたまに当たる。戦力を考えれば仕方ないと諦めがついた。四球を出したら交代させる中継ぎの起用方法は強い不満がある。しかし試合中はアホな投手起用を連発する割に、シーズン全体で見ると投手の肩肘を守った賢明な起用を見せている謎の采配。再建期の監督としては良い監督で、勝ちを目指す期間の監督には向かないと思っている。今も選手時代の補正で好きだから色眼鏡で見ている可能性はある

まとめ

先発→リーグ上位。12球団でも上位の下
中継ぎ・抑え→12球団トップ争い
捕手→12球団の平均程度
内野手→12球団で最下層の争い
外野手→12球団の平均~下位の上
監督采配→試合中の継投だけは強い不満

昨季まで投手はパークファクターを考えると12球団トップクラスというより平均と大差ない上位。かつ打線は圧倒的な最下位はそりゃ負けるでしょう。今年の打線は圧倒的最下位から進歩して下層の争いに参入すると予想する。一方で投手は課題の選手層問題が解消して12球団トップクラスになりそう。故に最下位になる確率は低くAクラスは争える。だが打力は下位なので優勝は難しい

あとがき

(昨季もアキーノ見るまで40%程Aクラスに入る可能性を感じてたのは内緒。主力が故障したら最下位の予想で広島に次ぐ最下位確率としたが今季は違う)

アキーノの打てるコースがボール3個分(ストライクゾーンは通常6×8個程度)の面積程度しかない事に驚きながらOPS.800を打ったガイエル系と評してた筆者の脳の方が想定外。というツッコミも妥当ですが、忘れていただこう。やや低めややインコースのストレートと、高めに抜けた変化球以外に打てるポイントがないアキーノはボール球を投げる意味がなく、四球は僅か2個で約2打席に1回三振した事も思い出すべきではない

2022年と2023年は同じ最下位でも中身が違った。梅津と岩嵜を除いて主力の離脱がほぼなかった2022年に比べ、2023年は離脱者が続出した故の最下位。セットアッパーの亡命と大野の故障で投手陣はリーグ平均レベルまで落ち、4人で回す想定だった二遊間の1人の田中が離脱。不調期間に2軍で休ませる二遊間のスペアと8回の心配が不要な素晴らしい中継ぎが開幕前に抜けた。大野がシーズン絶望で抜けた時点で最高5位、Bクラスは確定と予想を変えた昨季に比べると今季は戦力が揃っている

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?