バルセロナが選手を買うのは圧倒的に正しい-PLだけの現行FFP規制では

バルサの収益は神の退団に伴いグッズや広告で€70mの減収とCL敗退で€500m程度。だが神とグリジの退団などで人件費€200m削減が見込まれ€290m。雑費€70m、固定資産償却が€80mに選手売却益€25mで€90m弱の黒字見込みとなっている。ちなみに収益はスタジアムの観客動員が40%程度だった場合の想定をしているため無観客試合になれば下振れするし、フルに観客が入れば上振れする。40%の入場規制が取り払われた後も40%程度しか観客が戻っていないので収益的には期初の想定通りとなりそうだ

なのに彼らは大赤字だから補強不可って言う人はいつの話をしてるのでしょうか。そもそも昨季の€500mの赤字は資産の減損評価によって恣意的に赤字額を盛り上げたものであり、V字回復に見せるためのよくある手段です。今季以降の損益計算書的に彼らが投資することは何もおかしなことではありません。FFPにはバランスシートに対する規制がなく損益計算書の規制しかないのですから。欧州のFFPとラ・リーガのFFPのどちらがおかしいかと聞かれたら、両方おかしいです。でもよりおかしなルールはラ・リーガの方でしょう。彼らのルールは減収=リーグ降格で放映権料が減収しか考えていない短期的な減収の可能性を考えていない欠陥制度だと思います

バルセロナの問題は€500mまで売上が落ちていて1年で返済すべき短期負債が€812mあって現金€60mしかない事でした。当然金を貸してる金融機関からすれば破産されちゃ困るのでスタジアム建設費用という名目で金利を上げて金を貸して短期のCF問題は解決しました。スタジアムが拡張されて満員になり新しいクラブの象徴が出来てフル動員で観光客がバンバン金を落とし出せば€550m程度の費用で€700mくらい稼ぎ出せるので3,4年で借金は返済できるから金融機関は金を貸すのです。金融機関は価値がない会社に金を貸すことはありません

脊髄反射でああだこうだ言う前に決算書を読んでデータを見る癖をつけましょう。ちなみにバルセロナの決算書は詳細まで細かく書かれていて非常に勉強になります。買掛金がどこに対してどれだけの負債が残っているかまで書いてくれています

また監督や選手に違約金を払わせて補強はCF問題を回避する自転車操業テクゆえに何もおかしくはありません。先に監督や選手が違約金を負担して給与の後払いで受け取るリボ払い方式のクラブ運営なのです。自転車操業のリボ払いなので先に得して総額では無駄に金を払っている頭の悪い金の使い方をしているだけです

支払う分割の移籍金を捻出するため最初の給与を抑えている間に移籍金の頭金を払って、契約の後半に給与が跳ね上がるシステムです。最終的には実力と給与が乖離して販売先が消滅する悪魔の取引だからコウチのように移籍金の負担で年俸が高すぎて売れずにローンになります。憧れ(笑)のクラブに行くため給与から移籍金を負担して加入したのにクラブから追い出される時に減俸を飲んで移籍金だけ負担するお人好しのバカは居ません

どうでも良いことですがコウチーニョの移籍金額は適正でした。スアレスが£140mでコウチが£65mで引き抜かれたと思えば両者は適正価格です。当時のスアレスの価値を考えるともう少し取らないとお得とはとてもいえない取引です。マスチェラーノの怨念を加味せずにインフレを考慮してギリギリで適正価格と言えるレベルでしょう。バルセロナファンはスアレスを安く買いすぎたバチが当たったとでも思うか、コウチは£135−140mで買ったのではなく£65mで買ったのだと思えば良いと思います

ですから最初の£105mの移籍金のうち£20mくらいコウチーニョが給料から捻出してでも入団したコウチーニョの漢気に応えてちゃんと応援してください。おそらく現在の彼の給与はだいたい£22m、€25mくらいで€5mくらいは移籍金の支払いに使われていると思われます。そのためバルサが年俸の半分負担程度のローン以外で彼が売れることはないでしょう。バルセロナとの契約が終了すれば不愉快な思いをしたコウチーニョは彼らに一銭も残すことなく契約満了で次の契約を勝ち取るでしょうが

バルセロナはラ・リーガの厳しすぎるルールに則り主力選手を放出して人件費を下げたことで補強できる金銭的な余裕が生まれました。しかしその分だけ戦力がきっちり落ちたのでCL権を逃しかねません。CLにも出られなくなったら放映権料が低下し契約更新のスポンサー料が減りスタジアムに空席が目立ち施設の収益が減って財政が終わってゲームオーバーです

ここで選手補強しないのはバカだし高い選手以外はユースを使えば良いので高い金を出すべきです。責任を取りたくないリーダーが間抜けの総意を取り入れ現有戦力で戦う頭の悪い決定をすりゃ会社はダメになります。金を産むための投資をサボり皆で「頑張る」頭の悪い精神論は優秀な人間の離反を生み生産性が下がり更に苦しくなる。バルサの決断は正しいのです

問題は致命的なことにフェランに€55mの価値がない事だけなんです。これまで同様に選手の価値以上に移籍金を払ってるので再建はどんどん遅れるでしょう。金貸しはキチンと計算をして金を貸しているのですが、金を借りている側は金貸しと違って頭が賢くないようです。選手売却という特別利益を除くと営業黒字は€60mほどの黒字予定がフェランの購入で€40m弱になります。CL放映権料という来季の売上が確保できるかも分かりません。バルセロナがこのまま投資を続けてスタジアムに観客が戻らずグッズも売れなくなればクラブの所有権が金貸しに移るか破綻するかの2択を迫られる可能性はあります

短期的に補強で凌ぎユース選手の活用で地道な借金返済コースではメッシイニエスタシャビ前の時代に戻って収入も減り、欧州トップの舞台で争える事はないでしょう。クラブ以上のクラブ(笑)はFCメッシ&シャビ&イニエスタだった事がバレてしまうのでしょうが、今後も欧州トップで戦い続ける道はクラブ売却などで資本を注入する以外にありません

実は彼らの繰越欠損金はプレミアのチェルシー&シティの半分程度で比較する相手次第では可愛いものです。バルセロナの借金が莫大であると言われますが、彼らの総資産は€1000mで負債は€1450mあり€450mの債務超過に陥っています。資本金が€30m弱しかないので€480mの繰越利益剰余金を賄い切れていないのです

一方でシティは総資産£1100mに対して負債額は£470mで純資産が£630mでありチェルシーは総資産£820mに対して負債額は£420mで純資産は£400mなので健全経営?だがちょっと待ってほしい。彼らはオーナーから返済不要の資本金をそれぞれ£1300m以上も受け取っているのである。これがバルセロナのように£25m程度(€30m弱)しかなかったならばシティは£700m弱、チェルシーに至っては£900m弱の債務超過である。このようなクラブがサッカーの世界の競争を歪めており、メッシマネーに狂ったバルセロナはこの2チームと競争して選手に稼いだ全てのお金を使い果たしてしまったとさ。哀れですね〜

FFPがクラブの収益に応じた身の丈にあった経営をすることが目的であるならば損益計算書に不完全な形で制限をかけるだけでなく、バランスシート側にも規制をかけなければいけません。チェルシーやシティが市場からこれだけの資金を調達するには銀行のローンだけでは賄いきれずより利率が高い社債などを発行しなければならないでしょう。そうすれば彼らはバルセロナ以上の金利負担に苦しみ経営破綻するであろう

ちなみに今後のバルセロナはどうなるのかといえば復権の可能性は0ではないです。今のスポンサー料とユニフォーム売上、バルセロナ記念館での売上がピークに戻れば余裕で立て直せます。また売上がピーク時から多少下がったとしてもスアレス売却前に£180m以上、スアレスとスターリングで£100mを手にしたクロップ就任1年目でも£143m近い累積損失を計上するほど異常な投資を行っていたリヴァプールがクロップの就任後の3シーズンで£40m弱の利益剰余金を生み出したように(つまり3年で最終利益£180m作った)復権する可能性はあります

ただそのためには今の戦力からリヴァプールがコウチーニョを高値で売ったように金になる選手を売り捌き、不良債権をコツコツと処理してロバートソンやサラーのような大ヒット移籍を何発も当てるサイクルを経る必要がありますね。バルセロナからすればスポンサー料が落ちたら毎年得られる利益額も減り、ファンがスタジアムから遠ざかって収益が元に戻らないリスクを抱えています。なので今このタイミングで投資をすることは全く間違っていません。こういったビジネスを成立させるためのリスクある投資を恐れる企業は世界の競争から負けるのです(もちろん東芝やシャープのように投資先を間違えて失敗した企業も負けます)

PLだけの現行FFP規制では不十分で、バルセロナは莫大な富を持つオーナーの裏付けもなく軍拡競争に参加し自爆しました。彼らのような悲劇を生まないためにもB/SやC/F側にも規制をかけ、P/L側の規制も数年単位で本当にユースやスタジアムへの投資が健全経営に繋がっているのか見直す必要があると思います

オーナー資本からの資金注入はスタジアム拡張費用など一時的な用途に制限すること。また一定の償却年数が終わった後で資金をきちんと返済している事をルールにして守れなかったら欧州の舞台から締め出すべきでしょう。今すぐの実現は不可能でしょうが5年、10年先にはリヴァプール(クロップ後)、マドリー、バイエルンといった身の丈にあった健全経営するチームだけでCLは争われて欲しいと私は願っています

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